7月初めの台風4号ダナスは南台湾を直撃し、太陽光パネルに甚大な被害を与えた。これを機に、政府のエネルギー政策への不信感が一層高まり、官商癒着への疑念も浮上した。これに対し、元立法委員の郭正亮氏はネット番組《大新聞大爆卦》で、「民進党の深刻な汚職は、蔡英文前総統が推進したグリーンエネルギー政策から始まった」と指摘。グリーンエネルギー事業者が土地を確保・統合するには、地方議員や議会議長の介入が不可欠だったと強調した。
アメリカのトランプ大統領はSNSで再生可能エネルギー(再エネ)を「世紀の詐欺」と批判。風力や太陽光発電計画を全面的に否定し、「アメリカの愚かな時代は終わった」と発言した。郭氏はこれを「電気代高騰や農地破壊が理由で、共和党支持層の多くが農民であるため」と解説。再エネ推進派は民主党寄りで、土地利用をめぐる資本の衝突が背景にあると説明した。
郭氏は「台湾はアメリカ以上に深刻だ」と指摘。狭い国土で大規模な太陽光発電は不向きで、適地はすでに開発済み。蔡英文前総統は「2025年までに再エネ比率20%」と掲げたが、現状は11%にとどまっている。残るのは養殖池や不良地、塩害地ばかりで、利便性に乏しい。インドネシアでは10ヘクタール規模の案件が進む一方、台湾では1ヘクタールを確保するのも難しく、地主調整や送電網の接続を巡り議員の関与が不可避となっている。南部の立法委員がこぞって「選挙民サービス」に走るのは、この利権が背景にある。
頼清徳政権は次期立法院で9千億元(約44兆円)規模のエネルギー転換予算を提出予定だが、郭氏は「絶対に通らない」と断言。「エネルギー政策自体の見直しをしないまま予算を積み増しても、支持は得られない」と強調した。
さらに郭氏は、再エネ事業者は20年契約を結び、初年度収入を分配金に回すことで巨額の利益を政治家や地方有力者に配分していると指摘。その額は数千万元規模に及ぶ。こうした長期契約が台電(台湾電力)の負債を増やし続け、すでに累積2兆4千億元(約117兆円)に達しているにもかかわらず、契約は続々と追加されている。公務員が契約不履行することは不可能で、赤字は最終的に政府補助で穴埋めされるしかない。
郭氏は「蔡英文の時代ほど巨額の案件は過去になかった」と語る。前瞻計画(蔡政権が2017年に打ち出した総額8,800億元=約4.3兆円の大型インフラ投資計画)は各自治体に分散され、中小規模の事業が多かったため利権も分散していた。だが再エネ案件は南部に集中し、20年スパンで継続するため、議員や議長への巨額の利益供与が横行しているという。
台南市では、農地などを太陽光発電用地に転用するには本来議会の承認が必要だが、実際には議長の裁量で決まる仕組みが横行していた。光電業者は議長に巨額の賄賂を渡し、議長がそれを下へ配分する構図が常態化。票が1,000万元(約4,900万円)で取引される「議長買収」も公然と行われていた。
郭正亮氏は「文化古都の台南は、いまや光電利権にまみれた『黒金の街』と化した」と痛烈に批判した。
頼清徳総統も当初は利権構造に強い不満を示し、台塩の元会長・陳啟昱氏を逮捕させたが、それ以上の摘発には踏み込まなかった。その背景について郭氏は「徹底的に調べれば、南部の立法委員の半数が逮捕されかねず、民進党の基盤そのものが揺らぐ」と指摘する。
郭氏はさらに「民進党は自ら墓穴を掘った。蔡英文の黙認と怠慢が事態をここまで深刻化させた」と述べ、もし政府が主体的に土地整備や送電線の問題を処理していれば、議員の介入や利権化はここまで進まなかったはずだと強調した。
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