台湾で7月26日に行われた大規模なリコール投票で、与党・民進党とその支援団体は成果を挙げられなかった。8月23日には第2波のリコール投票に加え、「核三」原発の再稼働をめぐる住民投票が予定されており、民進党関係者は「当時の選挙情勢や政治的雰囲気の変化が引き続き注視され、政局や社会の安定に影響を与える」と述べ、執政チームに慎重な対応が求められるとの見方を示した。
726リコールの敗北を受け、党主席の頼清德総統は中央常務委員会で「全ての批判は自分が受ける」と述べ、現地で動いた市民団体や支持者に深い謝意を表した。さらに「823リコールに向けて最後まで市民と共に歩み、中央党部と各地の党公職者が全力で支援するように」と呼びかけた。しかし頼総統の言葉とは裏腹に、党内には敗北主義的な空気が広がり、上層部への不満も募っている。

議論と戦略の欠如 活力を失う民進党
党内のあるベテラン幕僚は、民進党の「大物」幹部たちは726リコールの結果をまるで他人事のように受け止め、具体的な対策も打たず、変化への姿勢も見られないと指摘する。加えて南部での災害対応の不手際もあり、まるでリコール敗北の穴埋めをするような対応しかできず、国民に訴える力を欠いたという。
さらに、普発1万元(全国民への一律給付)や富裕層排除の有無など「お金の使い方」をめぐる政策でも、行政部門が全面的に後退。立法院で1年近く戦ってきた立法委員やその幕僚にとっては「徒労に終わった」との思いが強く、まるで党全体に平手打ちを浴びせられたような感覚だったと語られている。
別の民進党幕僚は「党内には行政院の立法院対応に不満が多い」とし、行政院はこの1年以上「立法院を尊重し、立法権を維持する」と強調してきたものの、実際には国民党・民衆党との協力は得られず、姿勢を貫けていないと批判する。場合によっては行政部門が法案にすら態度を示さず、実効性や政策主導力を欠いているという。
また、この幕僚は、近年は党内で政策討論や議論の場自体が減っていると指摘。かつて青年部が1~2週ごとに立法院幕僚との交流・討論会を開催していたが、それも中止され、党全体が活力と方向性を失ったと嘆く。「具体的な提案や攻防戦略がなく、幕僚層も一体感を失っており、党の戦闘力と団結力は明らかに低下している」と危機感を語っている。 (関連記事: 抗日戦勝80周年講演 「リコールは神経病的」郭岱君氏が台湾政権を批判「台湾は米国の対中封じ込めの餌になるべきでない」 | 関連記事をもっと読む )

大規模リコールの失敗で士気低迷 支持者に広がる困惑
行政院は2025年8月14日の院会で、114年度中央政府追加予算案を可決し、立法院での審議を求めることとなった。予算には、議論を呼んできた地方政府への一般補助金636億元(約3,053億円)、国軍の給与増額59億元(約283億円)、禁伐補償23億元(約110億円)が盛り込まれている。これらは党内からも不満を招き、新北市議の林秉宥氏は自身のFacebookで「過去1年間、新北市議会で多くの議題を研究してきたが、行政院の対応には失望した」と記した。