アメリカのトランプ大統領は最近、台湾製品に20%の関税を課すと発表した。これは日本や韓国の15%より高い水準であり、台湾の産業界では強い懸念が広がっている。
元立法委員の蔡正元氏は、テレビ番組「中天辣晚報」で、この「対等関税」は一見すると米国の税収増や投資呼び込みにつながり、「大関税大成功」とも言えるが、実際には重大な結果を引き起こし、米国にとって必ずしも良いことばかりではないと指摘。「世界はすでに変化に向かっており、準備が必要だ」と警告した。
蔡氏はまず、米国が4月に開始した「232条項調査」に言及。これは大統領が国家安全保障を理由に輸入制限を課すことを可能にする仕組みであり、間もなく調査報告が発表される見通しだという。特にトランプ氏はこれを利用して半導体を含む製品の輸入を調査対象にし、台米間の関税交渉の主戦場となっていると指摘した。
蔡氏によれば、米国が各国に異なる割合で関税を課すやり方は、税収を増やし、工場誘致の交渉材料にもなるため、表面的には「大関税大成功」と見える。しかし、すべてが良い結果につながるわけではない。各国は米国との取引量を減らす方向に舵を切り、いわゆる「デカップリング(切り離し)」が進む可能性が高いという。
彼は「デカップリングとは取引を完全にやめることではなく、できるだけ縮小することを意味する」と説明。米国が高関税を梃子に「米国国内に工場を建てよ」と迫っても、もし利益が薄くコストが高ければ企業は動かないと強調した。「もし条件が本当に適していたなら、企業は過去にすでに米国に工場を建てていたはずであり、今になって急に動く理由はない」と断じた。
蔡氏はさらに、各国が米国への輸出量を減らすと、米国人の消費量が減少し、各国企業は生産ラインを移転せざるを得なくなると分析。これまでは世界的に生産ラインが比較的均等に分散されていたが、高関税導入後は市場調整に時間がかかり、その後は自然に米国向け輸出枠が縮小し、結果的に米国とのデカップリングが生じると述べた。
具体例として、超高関税を課されているブラジルを挙げ、「米国向けのコーヒー輸出を減らす可能性が高く、貿易量は15〜30%程度落ち込むだろう」と予測した。
蔡氏は最後に、こうした流れが進めば「世界は、米国を中心とした高関税圏と、その他のゼロ関税圏という二つの市場に分かれていく」と警告。その結果、トランプ氏が誇る「大関税大成功」は、逆に米国自身の貿易量縮小と、国際経済からの切り離しを招く可能性があると述べた。
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