中国の台湾侵攻は2027年か 米国、旧戦時基地を再稼働も備戦は遅れ気味―エコノミストが警告

2025-08-21 18:03
第二次世界大戦中のマリアナ諸島。日本軍の支配下にあったが、激戦を経て1944年夏に米軍が制圧。7月にサイパン島、8月にテニアン島とグアムが相次いで攻略された。(写真/米海軍公式サイト)
第二次世界大戦中のマリアナ諸島。日本軍の支配下にあったが、激戦を経て1944年夏に米軍が制圧。7月にサイパン島、8月にテニアン島とグアムが相次いで攻略された。(写真/米海軍公式サイト)
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中国が大量のミサイル戦力と地理的優位を背景に台湾侵攻を視野に入れる中、米国は第二次世界大戦期の旧基地を再稼働し、冷戦以降最大規模の空軍演習に踏み切った。

しかし、英誌『エコノミスト』(8月14日付)は分析で、「米軍の準備は依然として『平時の歩調』のまま遅れている」と指摘している。習近平国家主席が人民解放軍に「2027年までに台湾攻撃に備えよ」と命じているとされる一方、米国の備えは依然として追いついていないというのだ。

テニアン島、原爆投下拠点を再び拠点化

米軍が再び動かし始めたのは、太平洋の天寧島(テニアン島)である。第二次大戦末期、広島と長崎に原爆を投下したB29が飛び立った場所であり、当時「ノースフィールド(North Field)」は世界最大の空軍基地だった。

戦後は密林に覆われ放置されていたが、近年再整備が始まり、4本の滑走路や原爆を搭載したコンクリート施設跡が再び姿を現した。米軍はここを拡張し、中国の軍拡に備える新たな前線基地として蘇らせている。現地を訪れた『エコノミスト』記者によれば、F22戦闘機が轟音を響かせて離陸し、輸送機が物資を運び込み、整備員は仮設テントで作業に追われていたという。

剛抵達太平洋天寧島的「小男孩」原子彈。(維基百科公有領域)
太平洋・テニアン島に到着した原子爆弾「リトルボーイ」。(写真/ウィキペディア・パブリックドメイン)

米軍が実施したのは、冷戦以来最大規模となる「リゾルート・フォース・パシフィック(REFORPAC)」演習だ。400機以上の航空機を動員し、50拠点に分散して数千キロにわたる範囲で展開した。焦点は「敏捷作戦(ACE)」の実証である。戦闘機を小規模基地に分散させミサイル攻撃を回避し、空中で再編成して反撃、その後再び散開する。まるでムクドリの群れが一斉に集まり、瞬時に散っていくように、敵に狙いを定めさせない。

中国の弾道ミサイルは西太平洋の広範囲を射程に収めており、大規模基地に航空戦力を集中させることはもはや不可能だ。米軍は第二次大戦の「島伝い作戦」やウクライナ戦争の経験を踏まえ、分散・機動・隠蔽を重視する新戦術に切り替えざるを得ない。米空軍参謀総長デービッド・オルビン氏はこう語る。「対等な強敵との戦いでは、パイロットは常に危険に晒される。我々は致命的であると同時に柔軟でなければならない。集結すれば火力を集中し、散開すれば生存を確保するのだ。」

中国の火力圧迫、米軍には重い困難

米軍がテニアン島で滑走路整備に追われる一方、中国はすでに西太平洋全域に火力を張り巡らせている。米シンクタンク「ハドソン研究所」の試算によれば、開戦すれば中国は1日あたり最大2,000発の爆弾やミサイルを射程500海里圏内に撃ち込むことが可能だ。沖縄・嘉手納基地だけでも数百発の攻撃を受けかねず、遠く離れたグアムも1日450発規模の打撃が予想される。さらに後方のアラスカや、米インド太平洋軍司令部が置かれるハワイですら、射程に収まっている。 (関連記事: 陸文浩の見解:ロシア「キロ級」潜水艦が東シナ海へ 中露が近・遠海で日本を包囲 関連記事をもっと読む

中國飛彈射程圖。
中国ミサイルの射程範囲を示す図。

米軍はその脅威を正面から認めざるを得ない。太平洋で空中給油機や爆撃機を運用できる大型滑走路はわずか21カ所に過ぎず、百を超える小規模飛行場も多くは作戦半径外にある。空中給油を活用しても長距離飛行のリスクは大きい。かつて米軍の切り札だった空母も、いまや「航母キラー」と呼ばれる中国のDF-26Bミサイル(射程2,000海里超)の標的になりつつある。発射されれば、空母は出撃前に海の藻屑と化しかねない。

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