台湾では8月23日に「核三廠(第三原子力発電所)延長稼働」に関する公投(住民投票)が行われる予定だ。元米海軍情報将校のストゥードマン氏は、台湾には少なくとも1基の原発が必要だと提言している。理由は、中国軍によるエネルギー供給遮断を防ぐためであり、国際条約が戦時の原発攻撃を禁じているからだ。
この点について、賛成派代表の葉宗洸・清華大学教授は風傳媒のネット番組『下班瀚你聊』で「台湾のエネルギー安全を守るには、最低限1基の原発を維持し、米軍が救援準備を整える時間を確保する必要がある」と主張した。
葉氏は「交戦国が相手の原発を直接攻撃することはない」と述べ、ロシアとウクライナの戦争を例に挙げた。ザポリージャ原発に対する攻撃とされる行為も、実際には周辺施設への攻撃であり、原子炉そのものを狙ったものではないと指摘。もし原子炉が損傷すれば放射能は全世界に及ぶため、攻撃対象にはなり得ないと強調した。
また、中国軍の演習計画には火力発電所やガスタンクの破壊が含まれるが、原発は攻撃されず、送配電網を活用すれば速やかな電力復旧が可能だと説明した。
葉氏は「仮に天然ガスが使えず石炭も尽きても、原発があれば少量ながら安定供給は可能」と語る。そして、戦争が本当に起きた場合でも「台湾が3日で降伏したら米軍が駆けつけても間に合わない」と強調し、米軍救援を前提にした時間稼ぎのためにも、少なくとも1基の原発が必要だと訴えた。
核三廠の断層安全性めぐり議論 地質学的リスクを専門家が説明
台湾で議論が続く核三廠(第三原子力発電所)の安全性について、反対派は「断層帯上に建設され危険だ」と指摘している。これに対し、葉宗洸氏は地質調査報告を引用し「核三廠は不安定な場所には建設されていない」と反論した。発電所周辺には恆春断層が存在するが、距離は約1.1キロメートルであり、地質学者によれば「原発が安定した岩盤上に建てられている場合、近隣の断層が動いても岩盤全体が揺れるだけで、設備への直接的影響はない」と説明している。
剪裂帯は「小さな亀裂」 本当の断層とは異なる
葉氏は、報告書に記された「1号機建屋直下の断層剪裂帯」についても言及。反対派は「直下に断層がある」と解釈しているが、実際には剪裂帯は主断層に付随する小規模な亀裂であり、本格的な断層ではないと強調した。中央地質調査所も恆春断層を活動度の低い「第2類断層」と分類しており、長期間大きな変動が確認されていないことから「過度に懸念する必要はない」としている。
主断層と剪裂帯の違い エネルギー放出量が鍵
さらに葉氏は、台大地質学系の陳文山教授の見解を紹介。もし剪裂帯が異常に大きなエネルギーを放出すれば岩盤や建屋に損傷が及ぶ可能性があるとしつつも、「通常は主断層の方が圧倒的に多くのエネルギーを放出するため、剪裂帯や破砕帯の影響は相対的に小さい」と説明した。つまり、核三廠直下の剪裂帯そのものが重大リスクとなる可能性は限定的だと結論づけている。
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