WSJトーク》台海戦争なら世界大恐慌? 元米駐露大使が警告「アメリカが本当に恐れるべきは習近平ではなくプーチンだ」

2024年11月21日、ロシア・サンクトペテルブルクの土産物店に、習近平国家主席、トランプ氏、プーチン大統領の顔をあしらった伝統的なマトリョーシカ人形が並ぶ。(AP)
2024年11月21日、ロシア・サンクトペテルブルクの土産物店に、習近平国家主席、トランプ氏、プーチン大統領の顔をあしらった伝統的なマトリョーシカ人形が並ぶ。(AP)
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《ウォール・ストリートのトーク》コラム

『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』のポッドキャストから印象的な回を一本ずつ選び、濃密な対談を「読めるストーリー」に翻訳するコラム。毎週更新で、シリコンバレーからウォール・ストリートまで、世界の政治・経済・人物・テクノロジーの動きを、約5分で押さえられるガイドとして位置づけている。

今回取り上げるポッドキャストとゲスト

今回の内容は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』のロングインタビュー番組「Free Expression」が11月12日に配信したエピソード「America, Russia, China and the Struggle for Global Supremacy」がベースになっている。司会は、WSJのベテラン記者ジェリー・ベイカー氏。

ゲストは、元米駐ロシア大使でスタンフォード大学政治学教授のマイケル・マクフォール氏。プーチン氏を30年以上にわたって研究し、「ロシアをもっともよく知るアメリカ人の一人」と評されてきた研究者だ。最新刊『独裁 vs. 民主国家――中国・ロシア・アメリカと揺らぐ世界秩序』(Autocrats vs. Democrats: China, Russia, America and the Struggle for Global Order)で、いま世界が向き合う核心の問いを突きつける。

――民主陣営は、中国とロシアの挟み撃ちの中で、なお世界秩序を守り抜けるのか。

米中は貿易戦争でようやく「小休止」に入ったばかりだが、その直後、ロシアはウクライナ戦線で攻勢を強めた。他方、中国は経済力と制度的浸透を通じて国際秩序の再編を試み、プーチンは既存の体制そのものを壊して作り直そうとしている。世界は静かに、民主国家と権威主義国家が対峙する「新冷戦」の様相へ向かいつつある。

番組のゲストで、元米国駐ロシア大使のマイケル・マクフォール(Michael McFaul)氏は、衝撃的な警告を発した。「アメリカを本当に戦争に引き込む可能性が高いのは、習近平ではなくプーチンだ。」

そして、この米中露の綱引きのなかで最も敏感な導火線こそが、台湾である。

司会のジェリー・ベイカー(Gerry Baker)氏が率直に問う。「そもそも、なぜアメリカは中国が台湾を掌握するかどうかにこだわる必要があるのか。台湾のために戦争をする価値があるのか。」

マクフォール氏の答えは単刀直入だった。「台湾は民主主義の要であるだけでなく、世界経済の神経中枢だ。『中国が素早く台湾を奪っても世界は平穏なまま』などという発想は完全に非現実的だ。台海で戦争が起きれば、世界は即座に大恐慌へ落ち込む。」

彼は、アメリカが「抑止力を強化すべきだが、戦略的曖昧さは維持すべきだ」と主張する。台湾問題は「解決される」ものではなく、「管理する」しかない。現状維持こそ最善である、という立場だ。

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