日本経済、直近6四半期で初のマイナス成長、高市早苗首相「台湾有事」発言による波紋広がる

日本首相・高市早苗氏(写真/AP通信提供)
日本首相・高市早苗氏(写真/AP通信提供)

高市早苗首相が国会で述べた「台湾有事」発言をめぐり、北京が「中国の内政干渉」や「軍国主義の復活」だと非難した一件で、中国政府は官製メディアや報道官による連日の批判に加え、日本を訪れる旅行者や留学生に向けた警告まで発出し、日中関係は一気に冷え込んだ。こうした中国側の「交流妨害」とも言える対応について、木原稔官房長官は17日、「受け入れられない」と述べた。

日本の経済学者による最新試算では、中国の渡航警告によって日本が約2.2兆円の損失を被る可能性があるという。さらに悪いことに、日本政府の最新報告によれば、9月までの四半期で国内総生産(GDP)は1.8%縮小し、これは直近6四半期で初めてのマイナス成長となった。

日本経済
日本経済GDP成長グラフ(風傳媒作成)

高市早苗首相は衆議院予算委員会での質疑において、「台湾有事」は安全保障法制における「存立危機事態」に該当する可能性があり、集団的自衛権を行使し得る余地があると明言した。現職首相が「台湾有事」で武力行使に踏み込む可能性を具体的に示したのは初めてで、中国政府は台湾問題を絶対的な“レッドライン”と位置づけているため、これに強く反発。中国は連日の批判に加え、海警局の船舶を尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺海域へ送り込み「権益保護」を名目とした巡航を実施するなど、外交・軍事両面で圧力を強めている。北京の国際関係学者・高志凱氏は、日本へのレアアース輸出停止、ビザ免除の撤廃、日本産農水産物の輸入禁止などの措置を取るべきだとまで主張した。

こうした動きについて、木原稔官房長官は17日、「両国首脳が戦略的互恵関係にふさわしい建設的で安定した関係の構築を確認している中で、交流を阻害するような発言はその方向性に反する。受け入れられない」と述べた。尖閣周辺での中国海警の巡航に関しても、「中国海警は国際法に違反しており、極めて遺憾で、到底受け入れられない」と強い不満を示した。

2025年10月31日、出席APEC峰会的中国国家主席习近平与日本首相高市早苗会晤。(美联社)
2025年10月31日、APEC首脳会議に出席した中国の習近平国家主席と日本の高市早苗首相が会談した。(写真/AP通信提供)

外務省の金井正彰アジア大洋州局長は17日、緊張の高まる日中関係の沈静化を図るため北京へ派遣された。木原稔官房長官は訪中の詳細には踏み込まず、「双方はあらゆるレベルで意思疎通を行っており、必要に応じて対応する」と述べるにとどめた。

高市早苗首相は「台湾有事は日本有事」に相当するとのこれまでの発言を撤回する意向を示さず、日本政府の立場は従来と変わらないと強調している。一方、中国共産党機関紙の『人民日報』や中国中央テレビ(CCTV)は相次いで論評を掲載し、周辺国に対し「日本軍国主義の復活」を警告。高市氏が態度を改めない場合、「日本は破滅的な結末を迎える」と強い言葉で牽制した。

英紙『ガーディアン』は、両国が事実上激しく対立する中、日中間の緊張は今後さらに高まる可能性があると指摘。その影響はまず、双方の経済や民間交流に及ぶ恐れがあると分析した。

2025年4月9日、貨物船が東京の貨物ターミナルに停船。(美联社)

2025年4月9日、東京の貨物ターミナルに貨物船が停泊している。(写真/AP通信提供)

野村総合研究所の首席エコノミスト木内隆秀氏は、中国の旅行警告が日本に約2.2兆円(約142億ドル)の損失をもたらし、日本のGDPを0.36ポイント押し下げると試算している。『ブルームバーグニュース』は、北京からの警告が日本の小売業と旅行業の株価を暴落させたと報じた。資生堂の株価は11%急落した。今年(9月まで)約750万人の中国人観光客が日本を訪れたが、この四半期の1人当たりの平均消費は約24万円である。

「台湾有事」発言が北京を激怒させた状況で、高市早苗氏はより複雑な経済的課題に直面することとなっている。中国は、日本との対抗措置を段階的に強化し、官媒は報復措置を示唆、具体的には経済、外交、軍事関係の一時停止や貿易制限であり、深刻な反制措置の採択を強調している。『解放軍報』は、中国現代国際関係研究院の副研究員徐永智氏による論評を掲載し、日本が台湾海峡で武力介入した場合、「日本政府は国民を自滅する戦車に縛り付け、国全体が戦場になるリスクにさらされる」と警告している。

世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp

最新ニュース
死刑制度廃止をめぐり専門家が会見 袴田事件後の再検討を訴える
台湾・呉釗燮氏が中国外務省を痛烈皮肉 米大使も加勢し「日米関係を深めてくれて感謝」
侍ジャパン、WBC新ルールへ本格調整 韓国との連戦前に公式練習と会見を実施
台湾大学名誉教授・明居正氏「中国共産党は高市首相を政局から退陣させようとしている」日米が台湾問題で合意した可能性
中国共産党の元老が習近平に逆らえない理由 反腐敗で人脈も影響力も断たれた構造
ラグザス 侍ジャパンシリーズ2025、第2戦は7―7の引き分け 韓国が終盤2本塁打で追いつき、対日本の10連敗に終止符
舞台裏》台湾民進党が高雄・桃園・台南で予備選を本格化 「神龍の戦い」へ 林佳龍氏は頼清徳氏に命がけで挑むのか
舞台裏》台湾民衆党・黄国昌主席が手綱握れず 柯文哲前台北市長の出所後も、党は「剣を抜いて行き場見えず」
自衛隊が中国空母の「撃沈検討」と言い出したのは誰か 高市早苗氏の「台湾有事」発言と関係はあるのか
日本、韓国に11―4で圧勝 岸田行倫の代打3ランが決勝弾 WBCへ向け台湾代表監督も現地視察
大谷翔平選手が「最優秀おむすびパーソン(MVOP)」に選出 ファミリーマートが「おいしさ、新次元へ。」キャンペーン発表会を開催
台湾REITs「樂富一號」、史上最大65億元を9日で調達 台茂ショッピングセンターを単独保有へ
台湾に今秋最強の寒気 北部で最低12度の予報 気象専門家「19〜20日が最も冷え込む」
高市政権、「非核三原則」見直しを検討か 米軍の核持ち込み容認に現実味
「台湾有事は存立危機」高市首相発言で日中緊迫 産経「必要なら福建艦を撃沈」報道めぐり議論拡大
高市早苗首相「台湾有事」発言で日中関係が急冷 中国官媒『日本は80年ぶりに中国を武力威嚇』と非難
黄錦鐘の視点:高市早苗の「台湾有事」宣言 「斬首」騒動は日中悪化の序章にすぎない
高市首相「台湾有事」発言が波紋 日中関係が急冷、外務省が特命訪中で火消し図る
中国、民進党立法委員・沈伯洋氏を“分裂国家罪”で指名手配――八炯氏と閩南狼氏に懸賞金設定
ADKマーケティング・ソリューションズ、「IBM Consulting Marketing Workbench」を国内最速導入
ADKマーケティング・ソリューションズとOgury Japan、AIを活用した新ペルソナ配信メニューを共同開発
三井ガーデンホテル、名古屋と豊洲でクリスマス限定メニュー発表
第63回ギャラクシー賞上期、テレビ7本が入賞決定 ラジオ・CM・報道活動は入賞候補を発表
歴史小説を通じて台湾と日本を読み解く──『南光』作者・朱和之氏が東京で講演
米国の対外援助停止が国際秩序と日米協力に陰――ピースウィンズ米代表と米日財団代表理事が日本に主導的役割を提言
台湾の男性カップル、メキシコで代理出産し一度に4人誕生 「無計画アピール動画」に批判殺到「なぜ子どものために備えないのか」
中国の水素エネルギー攻勢が加速、「二つの手段」で世界覇権を狙う? 専門家が警鐘:米国は二本柱戦略で対抗すべき
小泡芙だけではない 義美が無人機・ロボット産業に本格参入 株主には雲豹エネルギーの名も
谷關・福寿山を抑え「台中の最強スポット」が頂点に 2026年台湾観光100ハイライト発表、今まさに絶景の季節
独身急増の世界潮流 若者が恋愛離れする理由とは
高市早苗氏の首相就任と公明党との連立解消 佐藤千矢子氏・上久保誠人氏が分析 FCCJ会見
年末年始を彩る極上の旅と滞在——キュナードとリッツ・カールトンが贈るフェスティブシーズンの特別体験
中国外交官が「首を斬る」発言、日本で批判が噴出 SNSではビザ取消・資産没収の未確認情報が拡散 事実確認報告が経緯を再現
エプスタイン私信に「トランプ氏と被害少女が数時間同席」 性犯罪事件めぐる新証言にトランプ氏が反発
謝長廷氏に旭日大綬章 中国が「歴史責任を反省せよ」と日本を非難 台湾外交部は「問題の張本人は中国側」と反論
現代の野球の神様を行く!史上二人目、現役一位 大谷翔平が4度の「満票」MVPを制しメジャーリーグを席巻
中国外交官が高市早苗氏を「首を斬る」と威嚇 英シンクタンク研究者「国際社会は台湾か中国かの選択を迫られている」
トルコのC-130輸送機墜落 F-16整備部門所属の20名の兵士が犠牲に、空軍が機隊の全面停飛を命令
台湾議員来日で注目 「茶会外交」で産業のレベルアップと新たなプラットフォームを共に構築
高市首相の「台湾有事」発言に米国は慎重姿勢か トランプ氏・国務省とも支持示さず
安倍晋三氏暗殺事件の容疑者母親が法廷に立つ 統一教会信仰を擁護し、自らの寄付が子供の進学より重要と語る
高砂部屋の朝稽古を至近距離で アスコットが「相撲文化体感ツアー」を販売開始
全米で年5万人動員「Got Sole」11月に日本初上陸 希少スニーカーと限定ストリートウェアが東京に集まる、著名人登場も
東京2025デフリンピックで「YYSystem」全会場導入へ アイシンが新アプリ「YYMaps」公開「世界に字幕を添える展 in 東京」開催
トランプ政権の「相互関税」構想はどこへ向かうのか 上智大・川瀬教授「米国は世界貿易の15%にすぎない。各国は連携して米国と交渉すべきだ」