トランプ大統領の再就任後、米国が対外援助の全面停止とUSAIDの解体を進めたことで、開発協力の現場が深刻な混乱に直面し、日米の協力関係にも大きな影響が生じている――。10月10日に日本記者クラブで開かれた「トランプ2.0」シリーズ第12回会見で、ピースウィンズ・アメリカ代表のジェームス・ギャノン氏と、米日財団(USJF)代表理事ジェイコブ・スレシンジャー氏が警鐘を鳴らし、日本が「開発という第三の柱」で主導的役割を果たす必要性を説いた。
報告書によると、米国は就任初日に大統領令で90日間の対外援助を停止し、その後、現場の支出も全面凍結。2月にはUSAIDを解体し、約300億ドルに上る開発協力が打ち切られた。これは日本のODA年間総額の約2倍に相当する規模で、USAIDの職員1万3000人が解雇され、協働していたNGOも延べ25万人の雇用を失ったという。データツールや分析システムも破壊され、「援助が再開されたとしても完全復旧には少なくとも2年以上を要する」としている。
ギャノン氏は、米国が過去20年にわたり世界のODAの20~25%を担い、特に食料支援(46%)、HIV/AIDS対策(96%)などグローバルヘルス分野で圧倒的な存在感を示してきたと説明。この空白を突くように、中国がWHOへの5億ドル拠出や、米国撤退後のカンボジアでの援助強化などを進め、影響力拡大を図っていると指摘した。
一方、現場では国連世界食糧計画(WFP)が予算の40%削減を迫られ、国連人道航空サービス(UNHAS)も航空機運用を22%削減。ウガンダの難民キャンプでは食料配給が最低基準まで落ち込み、「1人当たり月680円相当で暮らす過酷な状況に置かれ、栄養失調や自殺の増加、若年女性のサバイバルセックスなど人道危機が顕在化している」と述べた。
この混乱は日本にも及んでいる。日本のNGOと連携していた現地政府職員の多くがUSAID資金で雇用されていたため、ネットワークが崩壊し、共同プロジェクトの遂行が難しくなっているという。一方で、「現場では日本が“最後まで残るパートナー”として信頼を集めている」との声もあると説明した。
報告書は日本への提言として、①ODA削減を避け一定の増額を図る、②米国が主導してきたグローバルファンドやパンデミック基金で主導的地位を確保する、③援助の戦略性と効果を高める、④日米開発パートナーシップを防衛・通商に並ぶ「第三の柱」として再構築する――の四点を挙げた。
スレシンジャー氏は「冷戦後の日米関係は防衛・通商と並び開発が三本柱だったが、近年その要素が後退した。しかし今こそ日米が協調し、その空白を埋める意義が高まっている」と述べ、日本が国際秩序形成で主導的役割を発揮し得る局面にあると強調した。
質疑では、援助停止が3年以上続いた場合の影響や米国内政治の見通しが問われ、ギャノン氏は「完全停止が長期化する可能性は低い。議会や世論ではすでに援助再建を求める声が広がっている」と回答。米国民の約8割が人道援助を支持するという調査を紹介し、「長期的には政策再建が進むだろう」と述べた。
また、日本が防衛費増額とODAの両立に悩む点については、「ODAは人間の安全保障と国家安全保障の双方を補完する投資であり、防衛費と対立する概念ではない」と主張。スレシンジャー氏も「0.5~1%の増額でも日本の国際的影響力は飛躍的に高まる」と強調した。
会見は、日米協力の行方と日本の援助外交の今後に注目が集まる中で終了した。
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