死刑制度廃止をめぐり専門家が会見 袴田事件後の再検討を訴える

袴田事件を受け、専門家3氏が日本の死刑制度の問題点と廃止の必要性を訴えた。(写真/FCCJ提供)
袴田事件を受け、専門家3氏が日本の死刑制度の問題点と廃止の必要性を訴えた。(写真/FCCJ提供)

11月4日、日本外国特派員協会で死刑制度廃止をテーマとした記者会見が開かれ、NPO法人監獄人権センター代表の海渡雄一氏、日本弁護士連合会の小川原優之氏、ECPM(ともに死刑廃止)事務局長のラファエル・シュヌイル-アザン氏が登壇し、日本の死刑制度が抱える問題と国際的な課題について議論した。

袴田事件を受け、専門家3氏が日本の死刑制度の問題点と廃止の必要性を訴えた。FCCJ
袴田事件を受け、専門家3氏が日本の死刑制度の問題点と廃止の必要性を訴えた。(写真/FCCJ提供)

会見では冒頭、1968年に死刑判決を受け、半世紀近く死刑囚として過ごした後、昨年無罪が確定した袴田巌氏の事件が取り上げられた。裁判で証拠捏造が認定され、日本が無実の人の命を奪う危険に直面していたことが指摘された。この事件を契機に、死刑制度そのものの再検討が求められていると説明された。

海渡氏は、東アジア地域では韓国やモンゴルを除き死刑制度が存置され、実際に執行が続く国が多い現状を示した。日本でも過去3年間死刑が執行されなかった時期があったが、政府が再度執行を行ったことで状況が変わったと述べた。死刑制度の実態を知ることが市民の意識を変える可能性があるとし、死刑執行の継続は日本の品位と名誉を損なうと訴えた。

続いて小川原氏は、日本には105人の死刑囚が存在し、そのうち49人が再審請求中であると説明した。日本では2年11カ月死刑が執行されなかったが、今年6月に1名の執行が再開され、12月にも追加の執行が行われる可能性があると述べた。また昨年、日本の死刑制度を検討する有識者会議が、国会と内閣の下に公的な会議体を設置すべきだと提言したことを紹介し、制度の根本的な見直しが必要だと指摘した。

さらに小川原氏は、1980年代以降に5件の再審無罪が発生していることに触れ、証明されないまま死刑が執行された事案が存在する可能性にも言及した。冤罪による死刑執行を避けるには、死刑制度そのものの廃止以外に方法がないと述べた。また国際社会が日本の死刑制度をどのように見ているかを政治家や国民が理解することが重要だとし、外国メディアによる問いかけが政治家に強い影響を与える可能性があると語った。

死刑執行の再開については、政治状況が影響しているとの見解が示された。重要な国際会議の開催や法務大臣の不適切発言、袴田事件の判決などが執行停止の背景にあったが、今年夏の政治的混乱の中で、法務省が象徴的に死刑執行を行った可能性があると指摘した。誰をいつ執行するかは極めて政治的な問題であり、死刑制度が政治に左右されやすい構造にあると述べた。

海外の状況について、シュヌイル-アザン氏は、死刑制度が政治の道具として利用される事例を示し、米国のトランプ政権末期に連続して執行された事例や、トルコやフィリピンで死刑復活の動きが民主主義の後退と連動していることを挙げた。死刑制度を世論操作の手段として用いることは民主主義にとって悪い兆候であると警告した。

会見では、日本政府が5年ごとに行う世論調査の分析にも議論が及んだ。昨年10月の調査では「死刑もやむを得ない」が83.1%、「死刑は廃止すべきだ」が16.5%であったが、調査方式の変更により「わからない」という回答項目がなくなったことが影響しているとの指摘があった。また将来終身刑を導入した場合の賛否を含む分析では、死刑制度を将来も維持すべきだとする回答が53.4%、今後の廃止に賛成する回答が45.1%となり、政治家の判断次第で世論が変わり得るとする見解が述べられた。

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