台湾では、2026年の県市長選に向け、民進党が候補者選びを加速させている。しかし、中央と総統府に近い頼清徳総統と、党内最大派閥「正国会」との間では、桃園や高雄といった地方選で主導権を巡る軋轢が続いている。最近、正国会を率いる林佳龍氏は、高雄市長選に意欲を見せるだけでなく、立法院の助理費不正受給疑惑で起訴された林岱樺氏を強く擁護したことで波紋を広げた。
党内では賛否が割れる中、林佳龍氏は11月13日のインタビューで再び林岱樺氏を弁護。関連する法令を挙げながら「これは7期目の立法委員の政治生命に関わる重大案件だ。双方の主張を丁寧に聞き、裁判官が公正に判断すべきだ」と強調した。
さらに林佳龍氏は「もし私が批判を恐れる人間だったなら、学生時代に国民党の戒厳体制に挑む少数派にはなれなかった」と語り、この問題を「陰謀論」で片付けるべきではないと主張。「人を理由に言を棄てず、言を理由に人を棄てないべきだ」と述べ、起訴されている以上、当事者の説明を聞く必要があるとし、「裁判官も同じ姿勢で臨むべきだ」と述べた。

高雄の主導権争い 林佳龍は林岱樺を推し、頼清徳側は頼瑞隆を支援
もともと「党内の一匹狼」と呼ばれた林岱樺氏が正国会入りした際、多くの派閥が懐疑的だったが、その後は大きな摩擦はなく、正国会は今も彼女を強く後押ししている。
問題は、2026年1月に決まる民進党の高雄市長候補の座を巡り、頼清徳総統の側近であり、中評会主委を務める頼瑞隆氏が有力候補に挙がっている点だ。高雄に関する林佳龍氏の意向は、頼清徳総統の思惑と異なり、両者のズレが顕在化している。
高雄に加え、桃園市長選の行方も党内の注目を集める。中壢で法律相談センターを運営する正国会所属の立法委員、王義川氏は、かなり以前から桃園での予備選に向けた準備を進めてきた。今年前半には民進党市議とチームを組み、リコール運動でも桃園で積極的に活動。7月には複数の選挙イベントを実施し、2024年の総統・立委選で見せた「川流不息(途切れぬ支持)」の勢いを再現しようとしたが、リコール失敗後は勢いが落ち込み、最近ようやくサービスセンターを公開した。
桃園の民進党関係者によれば、桃園の地方事情は複雑で、王義川氏はまず議員との連携を進め、前市長・鄭文燦氏の影響力が弱まるなかで、正国会が桃園で徐々に存在感を強めてきたという。

桃園の攻防 王義川は林佳龍ライン、何志偉は頼清徳サイド
もっとも、王義川氏が各地の議員と連絡を保ち続けているとはいえ、桃園の地元側には依然として「本当に動員できるのか」という疑念が残る。議員グループこそ形成しているものの、実際の組織戦は思うようには進んでいない。
その一方で、総統府副秘書長の何志偉氏が裏で精力的に動いている。すでに百以上の宮廟を回り、里長と連携して地元住民を総統府見学へ案内するなど、地道ながら確実に足場を固めている。頼清徳氏に近い何志偉氏は、台北市で英派との関係が悪化した後、活動拠点を桃園へ移し、一部の桃園市議と人脈を築いており、民進党の市長候補として名乗りを上げる可能性も取り沙汰されている。



















































