パグウォッシュ会議、広島で第63回世界大会 核兵器の危険性と新技術リスクを強調

パグウォッシュ会議のシャハリスタニ会長とホールバーグ事務総長は、広島で核兵器の脅威とAIや宇宙・バイオ技術の危険性を警告し、核実験再開は世界を不安定化させると懸念を示した。(写真:日本記者クラブ)
パグウォッシュ会議のシャハリスタニ会長とホールバーグ事務総長は、広島で核兵器の脅威とAIや宇宙・バイオ技術の危険性を警告し、核実験再開は世界を不安定化させると懸念を示した。(写真:日本記者クラブ)

パグウォッシュ会議の第63回世界大会が広島市で11月1日に開幕し、5日に閉会した。7日には会長のフセイン・アル・シャハリスタニ氏と事務総長のカレン・ホールバーグ氏が日本記者クラブで会見し、核兵器の危険性と新しい科学技術がもたらすリスクについて語った。司会は日本記者クラブ企画委員の滝隆一氏が務め、通訳は池田薫氏(サイマル・インターナショナル)が担当した。

司会は冒頭、1955年のラッセル・アインシュタイン宣言を契機に1957年に発足したパグウォッシュ会議の沿革、核兵器廃絶と科学技術の平和利用を掲げてきた活動、1995年のノーベル平和賞受賞などを紹介した。今年が広島・長崎への原爆投下から80年に当たること、第63回世界大会が「平和、対話、核軍縮」をテーマに開催されたことにも触れた。

最初に発言したシャハリスタニ会長は、原爆投下で犠牲になった人々が「戦闘員ではない罪のない人々」であったと述べ、科学者の知識が誤用され、危険な兵器が生み出されたことに言及した。科学は「地球の人々の生命を良くするため」「健康を与え、食べ物を与え、技術を与えるため」にあるとし、追求には倫理と道徳が不可欠だと語った。被爆80年の広島で世界大会を開いた理由については、犠牲者を忘れず、核兵器が再び使われるリスクに直面する世界へメッセージを発するためだと説明した。

会長はさらに、核超大国が核兵器の近代化を進めている現状を挙げ、AIによる指令・監視システム、アルゴリズムによる生死の判断、宇宙空間の兵器化、衛星攻撃の危険、新たな生物を作り出すバイオエンジニアリングなど、核兵器と同じレベルにまで危険性を高める技術開発が進んでいると述べた。また、地球規模の格差や極度の貧困も深刻な不平等として存在し、「いつ爆発するかわからない兵器」と表現した。

続いてホールバーグ事務総長が発言し、現在の国際情勢は外交、国際法、国際機関、国際秩序の弱体化が進み、1950年代よりリスクが高まっていると述べた。核科学者らによる「終末時計」も89秒に迫っていると説明し、核依存が強まり、核タブーが弱まっている状況を指摘した。非核保有国も核対立の影響を受けるため、対話を維持し、軍事的思考に陥らない外交、いわゆるトラック2やトラック1.5の重要性を強調した。

質疑応答では、米国のトランプ大統領が核実験再開を指示したとの報道について、広島宣言で触れなかった理由が問われた。これに対しシャハリスタニ会長は、包括的核実験禁止条約(CTBT)は地上・地下・海上・宇宙のすべてで核実験を禁じる重要な条約であり、アメリカがこれを主導してきたと述べた。核実験再開の「ドアを開ければ」、他の核保有国も実験に踏み切り、アメリカ以外の国々が利益を得て、世界の不安定化を招くと説明した。パグウォッシュはすでに危険性を警告し、アメリカ当局にも訴えてきたと述べた。

ホールバーグ事務総長も補足し、広島宣言にはCTBTの実施と参加を求める内容が含まれていると説明した。条約が未発効なのはロシアとアメリカを含む主要国が批准していないためであり、核兵器を減らし廃絶に向かううえで条約の履行が不可欠だと述べた。

科学者の倫理についての質問には、シャハリスタニ会長が回答し、マンハッタン計画や旧ソ連などで核兵器開発に関わった科学者が後に後悔し、自らの政府に核兵器開発停止を訴えた例を挙げた。パグウォッシュ運動は、科学者が倫理に基づいて核兵器開発を止めるために始まったものであり、戦争による紛争解決を否定する立場に立ってきたと述べた。会長は自身のイラクでの経験にも触れ、新憲法では核兵器開発を行わず、大量破壊兵器を持ち込まず、宇宙空間で攻撃を行わないと明記されたことを紹介した。

さらに、広島宣言で被爆者支援への科学者の役割が明確に書かれなかった点、新設された国連の科学パネルが核戦争の影響を改めて分析する意義についても質問が出た。

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