政府、高市首相の「台湾有事」発言を撤回せず 与党内からは大阪の中国総領事『追放』要求も

東京の街頭で待つ中国人観光客。(写真/AP通信提供)
東京の街頭で待つ中国人観光客。(写真/AP通信提供)

高市早苗首相は国会で、「台湾有事」(台湾海峡での戦争)や中国による武力侵攻の際、日本安全保障法制に基づく「存立危機事態」に該当する可能性があるため、自衛隊が緊張の続く台湾海峡に介入することが可能となると述べた。この発言を受け、中国政府は即座に反発を示した。

高市氏の発言が中国政府を刺激しただけでなく、中国の薛剣・大阪総領事が自身のXアカウントに、高市早苗氏の「首をはねる」ことを連想させる投稿を行い、事態は一気に別の次元の対立へと発展した。

与党連立の一角を担い、現在は大阪府知事で日本維新の会代表でもある吉村洋文氏は、18日の定例会見で薛剣氏を強く批判した。経験豊富な外交官として、このような公的発言は著しく不適切だとして、薛剣氏に対し公開謝罪を求めた。

吉村洋文氏は、現政権に対してさらに踏み込んだ対応を提案し、政府はより強い外交措置を取るべきだと主張した。具体的には、薛剣氏を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に指定し、一定期間内に日本から退去させるよう求めた。これは、主権国家が望ましくない外交官に対して発動する、最も厳しい措置とされる。

また大阪府知事としての立場からも、吉村氏は「(中国側の)謝罪がない限り、中国総領事館が主催するいかなる行事にも出席しない」と表明した。

2025年10月21日、日本維新會黨魁吉村洋文抵達東京首相官邸。(美聯社)
2025年10月21日、日本維新の会代表の吉村洋文氏が東京の首相官邸に到着した。(写真/AP通信提供)

高市早苗氏が国会で、「台湾有事」が日本の集団的自衛権行使にあたる「存亡危機事態」になり得ると述べた点について、吉村洋文氏は明確に支持を示した。彼は、この答弁は従来の想定内であり、特段問題のある内容ではなく、撤回する必要もないと指摘した。

ただし吉村氏は同時に、高市内閣に対しても「防衛戦略の観点から言えば、特定の事態を明確に“存亡危機事態”と想定すべきではない」とも助言した。こうした表現は誤解を招きやすく、中国側には政府として丁寧な説明を尽くす必要があると強調した。

2025年11月17日,北京市民正在閱讀高市早苗涉台言論的新聞。(美聯社)
2025年11月17日、北京市内の市民が高市早苗氏の台湾に関する発言を報じるニュースに目を通している。(写真/AP通信提供)

日本の木原稔官房長官は18日午後、高市首相が国会で答弁した「台湾有事」(台湾海峡での衝突)に関する発言について、政府として撤回する考えはないと明言した。首相の答弁は、従来の政府方針を変更するものではないとも強調した。

しかし、双方の対立が激しくなる中、中国側は日本への渡航自粛を呼びかける措置を打ち出し、観光需要を通じて東京に圧力をかけようとしている。日本政府観光局(JNTO)の統計によれば、今年1〜10月の累計で訪日した中国人旅行者は820万人に達し、前年同期比で40.7%増と大幅に伸びた。訪日客数では韓国を上回り、中国が最多となっている。

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