高市早苗首相は最近、国会で台湾海峡情勢について言及し、もし同海峡で武力衝突が起きれば、日本が集団的自衛権を行使し得る「存亡危機事態」に該当する可能性を明確に示した。これは、重要局面では東京がより具体的な軍事行動をとる可能性を示唆する発言である。日本国内では安全保障政策をめぐる継続的な議論として受け止められたが、北京側はこれを強い挑発として扱い、反発をエスカレートさせた。中国駐大阪総領事の薛剣氏は「斬首」という表現で高市氏を攻撃し、中国政府は日本への経済的圧力をさらに強化して、いわゆる日本産品への輸入規制措置を指す「禁日令」を発表した。中でも注目を集めたのは、中国駐日大使の呉江浩氏がSNSで示した最新の主張である。台湾の一部の藍派(国民党)政治家の発言を引用し、「台湾人は皆、高市氏に反対して立ち上がる」という構図をつくり出し、地域世論を揺さぶろうとした。
呉江浩氏、国民党政治家の発言を引用し「台湾人は高市氏に反対」と主張
18日、呉江浩氏は再びXに投稿し、台湾の馬英九前総統、国民党前主席の洪秀柱氏、『観察』雑誌の創設者・紀欣氏の発言を直接引用して紹介した。馬英九氏は高市氏の発言を「台湾の利益を損なう」と批判し、両岸問題は直接対話で解決すべきだと述べた。洪秀柱氏は高市氏の主張を挑発だとし、「台湾を危険な瀬戸際に追いやる」と論じ、日本統治時代にも触れた。紀欣氏は「正義感のある台湾人は皆、高市氏に反対する」と発言した。呉氏はこれらの意見をまとめ、「台湾人は皆、高市早苗氏に反対して立ち上がる証拠だ」と位置づけた。しかし、このような物語はすぐに反発を受けた。現実の台湾世論は必ずしもそうではなく、「台湾人の代弁者ではない」という批判がネット上の議論の中心となった。
日本と台湾のネットユーザーが強く反発 「代表する資格はない」
呉江浩氏の投稿は累計7万回以上閲覧されたが、そこに寄せられた日本のユーザーの多くは、中国には「台湾人を代弁する資格はない」と明言した。また、もし北京が本当に台湾の民意を尊重するのであれば、まず「台湾への武力侵攻はしない」と宣言すべきだとの指摘もあった。日本のユーザーの多くは、高市氏の答弁はあくまで国会内の法制度の議論に過ぎず、中国側の過剰な反応のほうが不自然だと述べた。「台湾は台湾、日本と台湾は友人だ」とする率直な意見も多かった。
台湾のネットユーザーも多く反応し、「馬英九氏と洪秀柱氏は台湾の民意を代表していない」と強調。「馬英九氏の退任直前の支持率はわずか9%だった」と指摘し、中国が少数政治家の発言を抜き出して“台湾の主流意見”として扱おうとしていると批判した。「冗談ではない、あの二人が台湾を代表できるはずがない」との声もあり、北京が「誰も気に留めない発言」を台湾の声として扱う姿勢を「滑稽で哀れ」と表現するコメントもあった。
中国のナラティブと台湾の主体性の再衝突
今回のオンライン上の応酬は、二つの事実をくっきり示している。第一に、北京は台湾の少数の親中派の声を使い、「台湾は北京の見解に同意している」というイメージを作ろうとしたものの、結果は完全に逆効果だったということ。第二に、日本と台湾のネットユーザーが同じスレッド上でめずらしく足並みをそろえ、中国には台湾人を代弁する資格はなく、かつて低支持率だった政治家の発言を台湾社会の主流世論として扱うべきではないと指摘した点だ。台湾側からは「中国という国家が成立したのは1949年だが、台湾は1912年にすでに成立している。歴史の書き換えはやめてほしい」といったコメントも見られた。
地域情勢がきわめて敏感なこの時期に、今回の世論戦は形式上はソーシャルメディア上の出来事にとどまっているものの、そこに映し出されているのは、国際的な民主社会の目から見た台湾の主体性の揺るぎなさと、北京のナラティブが海外で長期的に直面している信頼性の危機である。
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