論評:日中外交戦の応酬で存在感を誇示? 呉釗燮氏が再び前面に

2025-11-19 15:36
外交部は最近、公式Threadsアカウントで「魔法部のケンカ王」とも呼ばれる呉釗燮氏の写真をシェアした。(写真/台湾外交部Threadsより)
外交部は最近、公式Threadsアカウントで「魔法部のケンカ王」とも呼ばれる呉釗燮氏の写真をシェアした。(写真/台湾外交部Threadsより)
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日中間の外交的対立が激しさを増す中、中国外務省の林剣報道官が最近、SNS上で「中国に挑む者は頭破血流(血まみれになる)」と発言した。これに対し、台湾の国家安全会議秘書長・呉釗燮氏が、まるで中国の“プロパガンダ発信機”を模したかのような図カードを使って反論。「公然たる覇権主義だ」と批判し、カードには皮肉を込めて「中華人民共和国・雑談発言人」と署名した。かつて“外交部のケンカ王”と呼ばれた彼が、あえて自らの品位を引き下げるような応酬に出たことが、台湾の「有事フレーミング」を過剰に刺激しているとの指摘もある。

台湾には本来何もなく、日中が勝手に揉めているだけでは?

日中の緊張は急速に高まり、どちらが先に引くかの「チキンゲーム」に突入している。日本の高市早苗首相は長年の「戦略的曖昧さ」を破り、11月7日の国会で「台湾有事が起きれば、日本の存亡危機事態に該当し得る」と述べ、現行の「安全保障法制」の下で集団的自衛権を行使する可能性を示唆した。安倍晋三氏が「台湾有事は日本有事」と語った当時、すでに首相ではなかったが、高市氏はその右派路線をさらに強めている。

高市氏は首相就任後、強いリーダーシップを示し、支持率は一時82%と史上2番目の高さを記録した。しかし、内外の課題が山積する中、少数与党を率いるのは容易ではない。彼女が裏で靖国神社参拝を画策しているとの見方もあり、「チキンゲーム」によって政権を固めようとしているとの指摘もある。ただし、一手でも誤れば大きな反発を招くリスクがある。

日本首相高市早苗。(美聯社)
日本の高市早苗首相。(AP)

北京は高市氏の台湾関連発言に即座に反応し、日本映画の公開延期、中国人観光客の日本渡航の停止、日本製品のボイコットなど、報復措置を次々と発動した。中国国内にも緊張感が広がり、公開予定だった『クレヨンしんちゃん』最新作や『はたらく細胞』の上映が延期に。『鬼滅の刃・無限城編』については正式な撤退通知はないものの、公開3日目以降の興行成績が急落している。昨年、中国人観光客は約700万人で日本全体のインバウンドの20%を占めており、“禁日ムード”は日本の観光市場にも重い影を落としている。

小さな虫が軍鶏に挑む「魔法ケンカ王」

日中が国交を結んで以降、両国関係は3度、深刻な敵対局面に陥った。2005年には小泉純一郎氏の靖国神社参拝が毎年続き、中国各地で大規模な反日デモが発生。2010年には尖閣諸島周辺での漁船衝突、2012年には野田佳彦政権による尖閣「国有化」で再び反日運動が激化し、関係は底まで落ち込んだ。

中国外交部は本来、硬い外交用語を淡々と使うことで知られ、「耿爽シミュレーター」と揶揄されるほど定型化した表現が多い。「頭破血流」「断固反対」など自動生成のような決まり文句をネット民が模倣し、話題になることもあった。かつては「耿爽も失業するのでは」と冗談が飛んだが、最近その“ネタ”を公然と実演したのは、よりにもよって台湾政府の要職にある呉釗燮氏だった。

釣魚台爭議海域。(美聯社資料照)
尖閣諸島(中国名・釣魚台)をめぐる係争海域。(AP資料写真)
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