【論評】トランプ氏の「半導体泥棒」発言に台湾はなぜ沈黙するのか

2026-05-28 14:27
2026年5月26日、米国のトランプ大統領が「台湾は米国の半導体を盗んだ」と繰り返し主張する中、台湾の卓栄泰行政院長は「これは国際政治の現実だ」と述べるにとどまり、自らの立場を低くして反論を避けている。(写真/AP通信提供)
2026年5月26日、米国のトランプ大統領が「台湾は米国の半導体を盗んだ」と繰り返し主張する中、台湾の卓栄泰行政院長は「これは国際政治の現実だ」と述べるにとどまり、自らの立場を低くして反論を避けている。(写真/AP通信提供)

トランプ米大統領が「台湾は米国の半導体を盗んだ」と繰り返し主張していることに対し、台湾の行政院長・卓栄泰氏は「それが国際政治の現実だ」と述べるにとどまり、反論を控えている。米国が自ら半導体の種を売り、台湾が半世紀をかけてそれを育て上げたのが歴史的経緯である。台湾と米国はパートナー関係にあり、半導体を「盗んだ」事実はないにもかかわらず、台湾総統・頼清徳氏の政権はなぜ沈黙を続けるのか。トランプ氏の「認知戦(情報操作)」に対する無抵抗な姿勢は、いつまで続くのだろうか。

取引の技術を盾に台湾を食い物にする姿勢

トランプ氏は台湾に関して、主に3つの点を頻繁に口にする。第1に「台湾は裕福であり、保護費を支払うべきだ」、第2に「台湾は米国の半導体産業を盗んだ」、そして第3に「米国から遠く離れており、手が届かない」という主張だ。これらは「米国第一主義(MAGA)」に基づく取引型思考を鮮明に反映している。同氏は台湾への武器売却契約を「交渉のカード」と呼び、頼氏に言及する際も「総統」とは呼ばず、「台湾を統治する人物」と表現している。そして最近になり、再び「台湾による半導体窃盗」を強調し始めた。

トランプ氏が台湾を泥棒呼ばわりする根拠はどこにあるのか。台湾の半導体大手、聯華電子(UMC)の創業者である曹興誠氏は、「台湾政府や台湾積体電路製造(TSMC)がこれまで一切の釈明をしていないのは、極めて深刻な職務怠慢だ」と痛烈に批判した。これに対し、卓氏は「国際政治の現実だ」と発言。外交部長・林佳龍氏は立法委員(国会議員)からの厳しい追及を受け、最終的にトランプ氏の発言は「不公平であり、事実に反する」と述べるにとどまった。さらに、立法委員が米国の主要紙に抗議広告を掲載するよう求めた際、外交部北米司は「対米広報予算が削減されており、広告を出す資金がない」と回答している。

「国際政治の現実」とは、当事者意識のない、及び腰の発言である。頼政権は中国に対しては強硬姿勢を貫く一方で、米国に直面すると途端に軟化する。政府高官が表立って強力に反論し、事実関係を正さなければ、「トランプ流の嘘」を甘んじて受け入れ濡れ衣を着せられることになる。やがて嘘も真実として定着し、事情を知らない多くの欧米諸国や、さらには台湾市民までもが、台湾が本当に半導体を盗んだと誤解することになりかねない。 (関連記事: トランプ氏、台湾半導体は「米国から盗んだ」と再主張 企業に「荷物をまとめて米国へ」 関連記事をもっと読む

卓栄泰氏が人口対策の新戦略を説明(2)「台湾人口対策新戦略-家庭支援篇」国家安全高層会議後の記者会見が27日に総統府で開催され、行政院長・卓栄泰氏(右)が出席して説明を行った。左は総統・頼清徳氏。中央社記者・呉家昇撮影
2026年5月26日、米国のトランプ大統領が「台湾は米国の半導体を盗んだ」と繰り返し主張する中、台湾の卓栄泰行政院長は「これは国際政治の現実だ」と述べるにとどまった。(写真/中央社提供)

覇権衰退と感情的恫喝

台湾のドキュメンタリー映画『造山者――世紀の賭け』が示すように、1976年当時の台湾は依然として農業社会であったが、台湾の工業技術研究院(工研院)は米国のRCA社と10年間の技術移転契約を締結した。台湾は技術移転費とライセンス料を含む350万米ドルを支払い、若手エンジニアを米国に派遣して技術を学ばせた。当時の台湾にとってこの金額は天文学的であり、まさに国家の命運を賭けた世紀の大勝負であった。台湾は半導体を盗んだのではなく、米国が自ら提供した種を正当に購入し、半世紀をかけてそれを育て上げたのが真実である。

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