台湾出身で日本在住25年の遠藤玲奈氏は、故郷・台湾の良質な産品を日本の消費者に届けたいとの思いから、2024年に蜂蜜事業へ参入し、株式会社蜂盛貴(HOSEKI)を設立した。
遠藤氏にとって、蜂蜜は単なる食品ではない。台湾特有の自然環境や花の香り、養蜂職人の技術が凝縮されたものであり、多くの台湾人にとって、幼い頃から身近にあった記憶でもあるという。
社名の「蜂盛貴」には、蜂蜜を「液体の宝石」と捉える思いと、ミツバチがもたらす貴重な「宝物」という意味が込められている。同ブランドは、ミツバチと自然、人が豊かに共生する社会を目指し、「共生と豊かさ」をブランド理念に掲げている。

ミツバチへの思いを原点に、台湾産蜂蜜を日本市場へ
ブランドの原点には、遠藤氏がミツバチの生態に強く心を動かされたことがある。ミツバチは小さな存在でありながら、自然生態系の維持や人類の食料生産に欠かせない役割を担っている。
遠藤氏は、天然蜂蜜の普及を通じて、環境や自然生態系への関心を高めたいと考えている。
現在、日本の蜂蜜自給率は極めて低く、市場は輸入に大きく依存している。一方で、コロナ禍以降、日本の消費者の健康意識は高まり、食品の加工プロセスや原材料への関心も強まっている。
遠藤氏は、市販されている大量生産の蜂蜜の多くがボトル詰めを容易にするために加熱処理されており、これが蜂蜜本来の天然酵素を破壊し、栄養成分や花本来の香りを損ねていることに着目した。
これに対し、台湾は亜熱帯に位置し、地理的・気候的環境がミツバチの繁殖に非常に適しており、ほのかな苦味を持つフカノキ(鴨脚木)や、広く親しまれている龍眼(ロンガン)蜜、ライチ蜜など、多様で独特な個性を持つ花種を育んでいる。
未加工の台湾産天然蜂蜜は、自然由来の成分や重層的な花の香りを残している。遠藤氏によると、単一の甘味に慣れていた日本の消費者からは、試食の段階で驚きの声もあったという。市場の需要も、価格重視から、品質や体験を重視する傾向へと少しずつ変化している。
品質管理を支える「蜂蜜マイスター」 産地情報の透明性も重視
競争の激しい日本の輸入蜂蜜市場で信頼を得るため、遠藤氏は品質管理に力を注いでいる。
台湾の蜂蜜は、季節や産地によって風味が大きく異なる。蜂盛貴では、専門の「蜂蜜マイスター」にあたる「品蜜師」の制度を導入し、各ロットの蜂蜜について、香りや味わい、余韻を確認している。
取り扱うライチ蜜には、品評会で特等賞を受賞したものもある。遠藤氏は、消費者が最も良い状態で台湾蜂蜜を味わえるよう、品質の安定と管理を重視している。
また、日本の輸入食品規制に対応するうえで、蜂盛貴は産地や流通情報の透明性も重視している。各ロットについてSGS検査報告書を取得し、蜂蜜の調達先や加工工場に関する情報を確認できる体制を整えている。
遠藤氏は、養蜂職人の姿勢や透明性の高い情報開示が、日本の消費者との距離を縮め、ブランドへの信頼につながると考えている。
ポップアップ展開から商品開発へ 台湾の自然の恵みを広げる
今後の事業展開について、遠藤氏は、まずポップアップストアなどの実店舗を通じて、より多くの日本の消費者に台湾蜂蜜の独特な魅力を直接体験してもらい、ブランド認知を高めていきたいと語る。
ブランドの基盤を固めた後は、台湾のローカルストーリーを取り入れながら、日本のブランドとのコラボレーションも視野に入れている。台湾蜂蜜を飲料、菓子、パンなどの分野に広げていく方針だ。
さらに、同ブランドはスキンケア・化粧品分野への参入も視野に入れており、細胞再生を助けることが実証されているデセン酸を豊富に含むローヤルゼリーをコア成分とした、無添加のフェイスマスクや美容液などのスキンケア製品の開発を計画している。
ただし遠藤氏は、化粧品開発は段階的に進めるものであり、最優先すべきは蜂蜜事業の品質を安定させることだと強調する。
台湾の自然が育んだ恵みを、できるだけ純粋な形で日本市場に届けること。それが、蜂盛貴がまず目指す姿だという。
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編集:小田菜々香


















































