【論評】アップル巨額罰金リスクが映すインドの政策リスク 外資を遠ざける「突然のルール変更」

2026-05-26 16:43
アップルはインドでの独占禁止法調査をめぐり、法改正により巨額罰金リスクに直面している。多国籍企業にとって、インドの政策リスクの高さを示す事例となった。(写真/中央通信社・李雅雯上海撮影、2026年3月13日)
アップルはインドでの独占禁止法調査をめぐり、法改正により巨額罰金リスクに直面している。多国籍企業にとって、インドの政策リスクの高さを示す事例となった。(写真/中央通信社・李雅雯上海撮影、2026年3月13日)

米アップルが先週、インドで直面した「380億ドル(約6兆円)規模の罰金リスク」は、各国政府にとって反面教師となる出来事だ。少なくともこの一件だけを見れば、インド経済の先行きに大きな疑問符を付けざるを得ない。

アップルにとって、この巨額罰金リスクはかなり「余計な」出来事だったと言える。発端は2021年、インド競争委員会(CCI)がアップルに対して開始した独占禁止法違反の調査だった。CCIは、アップルがアプリストア市場で支配的地位を濫用した疑いがあるとした。

2024年7月の調査報告書では、アップルが市場支配的地位を濫用し、開発者に不公平な条件を課したと認定された。アップル側は違法性を否定し、インドの独禁法に基づく罰金制度そのものについて、法の不遡及の原則に反し違憲だと主張。手続きを事実上止めようとした。

しかし、今回の裁判所の判断は、この道は通らないということを示した形だ。今後は、7月中旬に予定されるCCIの最終判断が焦点となる。

アップルに浮上した最大380億ドルの罰金リスク

​いわゆる「アップル税」は広く知られている。アップルの強い姿勢も今に始まったことではない。同社が世界各国で提訴や調査の対象となるのも初めてではなく、巨大IT企業に対する独禁法調査は各地で行われている。

多くの場合、最終的には数千万ドルから数億ドル規模の罰金で決着する。売上高や利益が数百億ドル、あるいは1000億ドル規模に上る巨大IT企業にとっては、大きな痛手とは言いにくい。アップルの場合、昨年の売上高は4161億ドル、純利益は1092億ドルだった。

従来の基準であれば、インド市場での売上高をもとに罰金が計算される。アップルのインドでの年間売上高は約90億ドルとされ、仮に10%の罰金が科されたとしても、金額は約9億ドルにとどまる。年間1000億ドルを超える純利益を上げるアップルにとって、影響は1%未満だ。無傷とは言えないまでも、十分に負担できる水準だった。

しかし、今回の問題はそこではない。

突然のルール変更が多国籍企業を遠ざける

​インドは2024年の競争法改正で、独禁法違反に対する罰金の算定基準を、インド国内売上高から全世界売上高へと変更した。この変更は、単なる算定方法の見直しにとどまらず、制度の性格そのものを変えるほど大きい。

アップルを例にすれば、その影響は明らかだ。全世界売上高を基準に同じ10%の罰金が適用された場合、4161億ドルをもとに計算されるため、罰金額は最大416億ドルに達する。多くのメディアが報じた「380億ドルの罰金」は、2024年の売上高を基準にした試算だが、実際にはさらに大きくなる可能性もある。
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もちろん、インド当局が実際に10%という上限に近い罰金率を適用する可能性は高くないかもしれない。それでも、算定基準が国内売上高から全世界売上高へ変わったことで、罰金規模は一気に46倍に膨らむ計算となる。

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