「2027台湾侵攻」は本当か?習近平氏が語らなかった「統一タイムテーブル」の裏側

2025-07-07 17:04
風傳媒の番組《下班国際線》で、司会者の路怡珍氏と中華新時代智庫基金会理事長の李大壯氏(写真)、そして風傳媒両岸センター主任の張鈞凱氏が対談した。(写真/柯承惠撮影)
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アメリカで今年5月に開催された公聴会で、中国共産党が2027年に台湾への攻撃を計画している可能性があるとの見解が示され、台湾海峡における軍事衝突のリスクが再び注目された。こうした議論に対して、中華新時代智庫基金会の理事長・李大壯氏は、風傳媒の番組『下班國際線』に出演し、2023年に行われた米中首脳会談で、習近平氏が党内部で「台湾統一の具体的なタイムテーブル」を聞いたことがないと述べた。

李氏は、各国の戦略機関がさまざまな軍事シナリオを想定し、分析を重ねているのは事実だが、それらは必ずしも政策決定や実行を意味しないと指摘する。仮に2027年という時期が予測されたとしても、それはあくまで可能性の一つにすぎず、過度に反応する必要はないと語った。予防的措置や備えは重要だが、数値や時期に振り回されるのではなく、慎重に状況を見極めるべきだと強調した。


さらに李氏は、中国と台湾の間で公式な交流が極端に減っている現状にも懸念を示した。いまや両岸の接点はわずかなルートや非公式なチャンネルに限られ、相互理解が著しく欠けていると語る。そうした中で中国が頻繁に軍事演習を行うことは、台湾側の市民感情を冷やすだけでなく、演習自体も莫大な費用とリスクを伴うため、常に緊張の糸が張り詰めた状態にあるという。

中国共産党がこうした軍事行動をとるのは、単なる圧力の誇示ではなく、時に政治的メッセージや「民意のガス抜き」としても使われている。李氏はその一例として、2022年にアメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問した際の対応を挙げた。訪問直後、中国国内では台湾問題への関心が一気に高まり、不満の声も噴出。これに応える形で政府が軍事演習を展開した背景があるとし、政治的要求と軍事行動が密接にリンクしている実態を指摘した。

武力での統一は「始める」より「終える」方が難しい

李氏は、台湾と中国の関係について語る中で、注目すべきは習近平氏の思惑だけでなく、中国国民が台湾への武力行使をどう見ているかだと指摘した。現在の中国国内には差し迫った統一のタイムテーブルは存在せず、逆に「危険ラインを越えたときに初めて反応が起きる」との見方を示した。特に重要なのは、国際社会が設定する「ライン」ではなく、国民が体感する危機感に応じた線引きであると説明した。

また、中国の軍事力が仮に8割程度真実だとしても、台湾との間に軍事的な均衡はなく、攻撃そのものは難しくないかもしれないが、「どうやって戦争を終わらせるか」の方がはるかに難題だと語った。政府はあらゆる行動について「実行可能性」と「制御可能性」を見極める必要があり、それを無視した場合は不必要な混乱を招くだけだという。中国共産党はこの点で非常に慎重であり、決定に際しては徹底的にシミュレーションを重ねているとした。 (関連記事: 習近平が台湾侵攻なら「NATO諸国はロシアと戦う羽目に」 NATO事務総長が最悪シナリオを想定 関連記事をもっと読む

風傳媒の両岸中心主任・張鈞凱氏もこの点に同調し、中国共産党の高層部は、まず実行可能か、次に制御できるか、最後に必要かどうかという三段階で政策判断を下すと説明した。また「時」と「勢」の条件が整って初めて動くという特徴があると述べ、中国国内では2027年説について公的にはほとんど語られていないと指摘した。