米下院可決「トランプ大きくて美しい法案」国債3.4兆ドル増、1200万人が医療保険喪失、貧困層に深刻な影響

2025-07-04 11:23
2025年7月3日、米国連邦下院が減税と支出削減法案の採決を可決し、議長ジョンソンが共和党員に囲まれ記者会見を開いた。(AP通信)
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アメリカ独立記念日(7月4日)を翌日に控えた7月3日、アメリカのトランプ大統領が強く推進する論争的な大規模減税・歳出法案が、共和党が多数を占める連邦下院で極めて僅差で可決された。本法案は、トランプ氏の第二次政権における中核政策と位置付けられており、2017年の第1期政権下で実施された減税措置を恒久化するほか、社会福祉の大幅な削減を盛り込んでいる。ロイター通信によれば、この法案により今後10年間でアメリカの国債は最大3.4兆ドル増加すると見込まれ、約1,200万人が医療保険を喪失する可能性も指摘されている。

大きくて美しい法案」の可決は、トランプ氏が2024年の大統領選挙期間中に掲げた、移民政策の強化や中間層および企業への減税拡大といった公約の実現に向け、十分な財源が確保されることを意味する。この勝利はトランプ氏にとって極めて重要な意味を持つ一方で、米国社会における深刻な分断をさらに浮き彫りにした。

法案可決後、下院議長マイク・ジョンソン氏は「これは経済にロケット燃料を注入するようなもので、すべての船が浮かび上がることになる」と興奮気味に語った。ホワイトハウスはすでに、トランプ氏が東部時間の7月4日午後5時、独立記念日当日に正式に署名し、法案を発効させると発表している。

ロイター通信によれば、869ページに及ぶ本法案は、連邦議会で激しい攻防戦を引き起こした。共和党は、トランプ氏が設定した7月4日の独立記念日までに法案を成立させるべく、上下両院の議員が週末返上で協議を続けた。まず法案は上院で、賛成51票・反対50票というきわどい票差で可決された。決定打となったのは、J.D.ヴァンス副大統領による議長決裁票であった。続いて下院での審議に移ったが、法案に伴う巨額の財政赤字や医療制度への影響をめぐり、共和党内でも深刻な対立があった。それでも、トランプ氏が直接圧力をかけたことで、党内の反対意見は最終的に封じ込められた。

トランプ氏はSNS上で「共和党にとって、これは簡単に『賛成』すべき案件だ。反対など馬鹿げている!!!」と投稿し、法案への全面的な支持を呼びかけていた。

最終的に、下院は賛成218票、反対214票という僅差で法案を可決した。220名の共和党議員のうち、造反票を投じたのは2名にとどまった。ペンシルベニア州選出の穏健派ブライアン・フィッツパトリック氏と、ケンタッキー州選出の保守派トーマス・マッシー氏である。マッシー議員は、法案が歳出削減の面で不十分であることを理由に反対票を投じた。

法案の核心:永久減税対社会福祉への影響

本法案の核心は、「恒久的な減税」と「社会福祉の削減」という大規模なトレードオフにある。

減税面では、2017年にトランプ氏が署名し、2025年末に失効予定であった個人および企業向けの減税措置を恒久化することが、法案の最大の柱となっている。さらに、チップ収入や残業代、高齢者や自動車ローンに対する税控除といった、トランプ氏が選挙戦で掲げていた複数の減税優遇策も新たに盛り込まれた。共和党は、これらの措置がすべての所得層の負担軽減につながり、経済成長を促すと主張している。