台湾侵攻は中国に壊滅的打撃? ロシアの衰退に乗じた「北方戦略転換」説に注目

2025-07-04 12:12
戦略国際問題研究所(CSIS)が2023年に実施した包括的なウォーゲームの結論によれば、中国の台湾侵攻は失敗する可能性が高く、すべての参加国に天文学的な損失をもたらすと指摘される。(画像/在韓米軍ウェブサイトより)
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長年にわたり、国際社会は中国本土による台湾への脅威に強い関心を寄せてきた。しかし、近年浮上したある新たな証拠が注目を集めている。中国国内の審議資料と、流出したロシアの情報文書を組み合わせた分析によれば、北京はより大胆な計画を密かに練っている可能性がある。すなわち、中国の戦略的野心は北方へと向きを変え、ロシアのシベリアを狙っているというのだ。

この動きは、中国の資源への強い欲求、地政学的な機会主義、そしてロシアによる支配力の衰退といった要因に突き動かされたものと見られる。西側諸国がまだ十分に理解していない形で、世界秩序を再構築する可能性がある。加えて、台湾侵攻には極めて大きな代償が伴うこと、そしてシベリアが中国の経済成長に寄与しうる潜在力を持つことを踏まえると、専門家は、中国が2027年までに戦略の軸足を「北方」に移す可能性が高まっていると指摘している。

台湾侵攻の代償:演習の失敗率高く、経済損失は最大10兆ドルに

米国メディア「ザ・ヒル(The Hill)」に寄稿したコラムニストのジョン・ロナガン氏は、中国による台湾への執着は、習近平主席の民族的自負心とその掲げる国家的ビジョンによって支えられており、依然として中国共産党の主要な修辞的基盤であると指摘する。しかし、全面的な上陸侵攻は、物流面でも経済面でも悪夢のような展開となるだろう。

戦略国際問題研究所(CSIS)が2023年に実施した大規模なウォーゲームの結果によれば、中国による台湾侵攻は失敗に終わる可能性が高く、関係国すべてに天文学的な損失をもたらすとされている。同研究では、3週間に及ぶ紛争が発生した場合、中国は壊滅的な打撃を受けると予測。約1万人の兵士が戦死し、戦闘機155機と主力艦艇138隻を失う可能性があるという。

経済的な観点から見ても、その影響は深刻である。ブルームバーグ・エコノミクスが2024年に発表した分析によれば、台湾を巡る戦争は世界全体で約10兆ドル、すなわち世界GDPの10%に相当する損失をもたらすと推計されている。台湾が半導体生産において圧倒的な地位を占めていることから、供給の途絶は世界的なサプライチェーンの麻痺を引き起こし、中国自身のハイテク産業も大きな打撃を受ける。こうした膨大なコストと、米国およびその同盟国との広範かつ長期的な衝突に発展するリスクの高さが重なり、近い将来における台湾侵攻の可能性は一層低下しているとみられる。

シベリアの誘惑:資源の宝庫とロシア衰退の完璧な結びつき

これに対し、シベリアは魅力的な報酬を提供する一方で、相対的にリスクが低い地域である。豊富な石油・天然ガス・金・ダイヤモンド・レアアース(希土類)・淡水といった天然資源は、資源不足に悩む中国経済の維持にとって極めて重要な意味を持つ。

中国北部の乾燥地帯では、長年にわたって深刻な水資源の不足が続いている。特に、農業と工業の中心地である華北平原は、世界の淡水資源のわずか5%で中国人口の20%を支えており、水の供給は極めて不安定である。一方、シベリアにあるバイカル湖は、単一の湖として世界の未凍結淡水の20%を擁しており、この淡水資源が中国北部に導入されれば、水不足の構造的問題を根本から覆す可能性がある。