特別インタビュー》トランプの空爆は「信頼の証明」か NATOの防衛転換と台湾の岐路を米専門家が語る

2025-07-03 17:20
2025年7月1日、風傳媒のインタビューに応じる(右から)ハドソン研究所前総裁で現日本事務局長のケネス・R・ワインスタイン氏、そして元立法委員でハドソン研究所シニアフェローの許毓仁氏。(写真/顏麟宇撮影)
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米国のトランプ大統領は、「ミッドナイト・ハンマー作戦」を発動し、B-2スピリットステルス戦略爆撃機を派遣して、GBU-57大型貫通爆弾によりイランのフォルドゥなど3か所の地下核施設を精密に攻撃した。この大胆な軍事行動は世界を驚愕させ、イランに深刻な打撃を与えることとなった。

さらに注目すべきは、この行動が北大西洋条約機構(NATO)の加盟国32か国の防衛意識を目覚めさせた点である。6月のサミットでは、各国が国防支出を2035年までにGDP比2%から5%に引き上げるという歴史的合意を達成した。

《風傳媒》は、米ハドソン研究所の前総裁で現在は日本担当主席を務めるケネス・R・ワインスタイン氏と、元立法委員で同研究所上級研究員の許毓仁氏にインタビューを実施。中東、NATO、インド太平洋地域の安全保障構造に与える影響と、台湾にとっての教訓について聞いた。

「張り子の虎」イランと代理戦争ネットワークの崩壊

米軍の核施設空爆が中東の戦略構造に変化をもたらすかという問いに対し、ワインスタイン氏はイランがこれまでハマス、ヒズボラ、アサド政権、フーシ派などを通じてイスラエルに圧力をかけ、「我々の核開発を止められる者はいない」という姿勢を貫いてきたと語った。

しかし現状は大きく異なるという。イスラエルは最近、電子信号による精密攻撃でヒズボラ幹部の行動を特定し、指揮系統の弱体化に成功。ガザ戦線ではハマスを完全に排除できていないが、支援するイランは資金面で深刻な制約に直面しているという。

6月22日(米東部時間)、米軍は本土から初めてB-2爆撃機を出撃させ、フォルドゥのような掩蔽壕型核施設を精密攻撃。同施設は貫通爆弾を想定して設計されていたが、今回の攻撃により大きな損傷を受けたとみられている。

ワインスタイン氏は、「これは冷戦以降、類を見ないほど高水準の合同軍事行動であり、歴史的瞬間だ。イランは張り子の虎に過ぎないことが証明され、防空システムは破壊され、核計画は中止され、代理人ネットワークは次第に制御不能に陥っている」と述べた。

彼はさらに、イラン国内でも政権が核・代理戦力に多額の予算を注ぐことへの疑念が強まりつつあり、今後の体制維持に注目すべきだと述べた。「政権がどれだけ持つのかが焦点だ」と語る。

また、こうした決断はまさにトランプ氏ならではだと強調。「他の大統領とは異なり、彼には勇気と明確なビジョンがあり、イランの核野望を断ち切る意志を示した」と評価した。

20250701-前美國駐日大使韋恩斯坦博士(Kenneth R. Weinstein)專訪。(顏麟宇攝)
2025年7月1日、《風傳媒》がハドソン研究所前総裁で現日本事務主席のケネス・R・ワインスタイン氏に独占インタビューを行った。(写真/顏麟宇撮影)
このMaxar Technologies提供の衛星写真は、イランのフォルドゥ濃縮ウラン施設が米軍の攻撃後に破壊された様子を示している。2025年6月22日撮影。(AP)
このMaxar Technologies提供の衛星写真は、2025年6月22日に撮影されたもので、米軍の攻撃後に破壊されたイランのフォルドゥ濃縮ウラン施設が写っている。(AP通信)

NATO防衛費増加、そのカギを握るドイツの変化

トランプ大統領によるイラン核施設攻撃の実効性には一部で疑問の声もあるが、この軍事行動は欧州の同盟国に国防強化の決意を促す転機となった。

6月24日、トランプ氏はNATOサミットへ向かう途上、SNS「Truth Social」にルッテNATO事務総長からの私信を投稿ルッテ氏は、トランプの空爆決定を「誰もが恐れた偉業」と称え、「我々をより安全にした」と評価しつつ、国防支出をGDP比5%へ引き上げる合意に至ったことは、歴代大統領が果たせなかった成果だと讃えた。