『エコノミスト』が解説:トランプの「大きくて美しい法案」ー米国債急増、赤字拡大、最大の代償を払うのは貧しいアメリカ人

2025-07-03 23:14
2025年6月30日、デモ参加者たちは段ボール製の棺を持ってアメリカ合衆国議会ビルの前に集まり、トランプ大統領による大幅減税と支出削減を目的とした「大そして美しい法案」に抗議した。ポスターには「ミシガンでは33万1,000人が連邦医療補助を失う」と書かれている。(AP通信)
2025年6月30日、デモ参加者たちは段ボール製の棺を持ってアメリカ合衆国議会ビルの前に集まり、トランプ大統領による大幅減税と支出削減を目的とした「大そして美しい法案」に抗議した。ポスターには「ミシガンでは33万1,000人が連邦医療補助を失う」と書かれている。(AP通信)
目次

7月1日、アメリカの上院は27時間連続の投票と討論を経て、トランプ大統領が強く推進する「大きくて美しい法案」(One Big Beautiful Bill)を可決した。この法案は2017年にトランプが署名した減税措置を永久化し、軍事および国境移民取り締まりの予算を大幅に増加させる計画である。下院はすでに5月22日にこの法案を通過させており、本法案は上院でも可決されたため、今後両院で詳細を調整し、最終的にトランプ大統領の署名を経て施行されることになる。『エコノミスト』は複数の予測を図表でまとめ、この法案はアメリカの財政赤字を拡大させ、長期的な経済成長を遅らせ、貧困層に深刻な影響を与えることが明らかになったと指摘している。

一、公債増加3兆ドル

トランプ政権は「大きくて美しい法案」が借入を減少させると主張しているが、これは彼が最初の任期で行った減税措置が永久に続くと仮定した場合の話である。当時の減税は実際には一時的なものであった。独立系シンクタンク「アメリカ連邦予算責任委員会」(CRFB)は、下院のバージョンが今後10年間の公共債務を約3兆ドル増加させる一方で、上院のバージョンは州および地方税の控除がさらに広がるため、債務の増加幅がさらに大きくなると試算している。

アメリカ大統領トランプ「大きくて美しい法案」が通過した場合、2025年から2034年にかけて、米国の公債は約3兆ドル急増する見込み。
アメリカ大統領トランプ「大きくて美しい法案」が通過した場合、2025年から2034年にかけて、米国の公債は約3兆ドル急増する見込み。

主な赤字への影響(Primary Deficit Impact)とは、新法施行後の年間の歳入減少または支出増加による赤字の増加を示す。また、利息は主要赤字の増加により、政府が将来支払う必要のある借入利息の追加負担を表す。つまり、主な赤字への影響は新法が財政へ及ぼす「直接の衝撃」であり、利息は将来の「後続コスト」を意味する。

二、赤字の増加3~4兆ドル

CRFBは、「大きくて美しい法案」が連邦政府の赤字を3兆から4兆ドル増加させると評価している。法案内の各種減税措置のコストは、他の改革によって部分的にしか相殺されていない。これらの減税には、トランプが選挙時に約束したチップと時間外労働税の廃止が含まれる。理論上、これらの減税は一時的なものであり、トランプ退任後には無効になるが、実際には減税が長く続くのが一般的である。さらに、国防総省と移民・海関取締局(ICE)の予算は大幅に増加し、移民の送還を引き続き強化することになる。 (関連記事: 米下院可決「トランプ大きくて美しい法案」国債3.4兆ドル増、1200万人が医療保険喪失、貧困層に深刻な影響 関連記事をもっと読む

アメリカ大統領トランプ「大きくて美しい法案」が通過した場合、2025年から2034年にかけて、米国の赤字は約3兆から4兆ドル増加する見込み。
アメリカ大統領トランプ「大きくて美しい法案」が通過した場合、2025年から2034年にかけて、米国の赤字は約3兆から4兆ドル増加する見込み。

三、GDPが2%減少

減税は短期的に経済を刺激するが、このことが近年の株式市場の好調を説明している。しかし、長期的な見通しは必ずしも楽観的ではない。イェール大学の予算実験室は、下院版の「大きくて美しい法案」が2050年までにアメリカのGDPを約2%押し下げると予測している。主な理由は、債務の増加が金利を押し上げ、民間投資が圧迫されるためである。一方で、減税がより多くの人を労働市場に引き込み、投資を刺激することで、悪影響が緩和されるとするより楽観的な予測もある。

アメリカ大統領トランプ「大きくて美しい法案」が通過した場合、2024年から2050年にかけて、米国のGDPは2%低下する見込み。
アメリカ大統領トランプ「大きくて美しい法案」が通過した場合、2024年から2050年にかけて、米国のGDPは2%低下する見込み。

四、債務比がGDPの125%~130%に上昇

最新ニュース
「相互関税」猶予は7月9日で終了 関税交渉は「前払い制」へ?トランプ氏、未合意国に「関税通知書」送付へ
米国、ペトリオット供給を一時停止 ウクライナ激怒「ロシアの侵略を助ける行為」 トランプ政権は「米国第一」と正当化
台湾侵攻は中国に壊滅的打撃? ロシアの衰退に乗じた「北方戦略転換」説に注目
台風4号「ダナス」発生か 台湾接近で週末に暴風・大雨の恐れ
米下院可決「トランプ大きくて美しい法案」国債3.4兆ドル増、1200万人が医療保険喪失、貧困層に深刻な影響
インタビュー》米国「防衛費増やせば関税下げる」 台湾に「イスラエル・モデル」提案も
米越が貿易協定 「原産地偽装」に40%課税も 対中対策の新たな一手か
米越が関税協議で合意も、日本は譲歩拒否 石破首相「関税より投資、防衛費は自ら決める」
特別インタビュー》米軍、イラン核施設を精密爆撃 NATO覚醒で全加盟国「防衛費5%」合意へ
鹿児島・トカラ列島で地震1000回超 7月5日大地震説に現実味?専門家「M7級の確率7割」
評論:新台湾ドルが急騰 背景に米台交渉の「静かな取引」か
台湾文化の精髄が大阪に集結 安藤忠雄設計空間で「台湾スペクトル」展開催へ
グラビアから再出発、小倉ゆうかさんが語る「原点」と「台湾との縁」
台北市元副市長の妻が転落死 拘留中の夫を支え続けた末の悲劇
イラン、ホルムズ海峡に機雷準備か 米国が機雷搭載を確認「封鎖の現実味」と警戒強める
医薬品原料の5割が中国依存 ジェネリック薬協会が危機感「薬なければ治療できない」
習近平氏がBRICS首脳会議を初めて欠席 「傀儡化」や「権力移行説」に現実味との見方も
舞台裏》妻の訃報に法廷で崩れ落ちた元副市長・彭振聲氏 民眾党が全面支援へ
呉典蓉コラム》頼清徳総統は「団結」の名を借りて分断を広げたのか?野党は「リコール側翼」と猛反発
トランプ氏が爆弾発言「イスラエルが60日停戦に同意」と一方的表明 ハマスに「最終提案」受け入れ迫る
秋田市長が台湾・台南訪問 友情の証「秋田街」誕生へ 教育・スポーツ交流も加速
日米韓の14大学で発覚! 学術論文に秘密指令を埋め込み、AIが高評価を出す
ベトナムが富を目指す!二重国籍制限を緩和し、海外の600万人の優れた国民に「祖国への帰還呼びかけ」
イラン反体制派指導者、抵抗運動が広がる 神権体制崩壊が始まったとの見方示す
インタビュー》台湾海峡の緊張はなぜ続くのか 野党幹部・元高官インタビューで見えた対話の壁
トランプ氏「日本は甘やかされてきた」 対日関税25%警告に波紋広がる
トランプ氏「関税交渉の延長なし」 日本に30%超の関税示唆、緊張高まる
台北市で防空演習、7月17日実施へ MRT全駅「入場のみ」制限、全市で人と車両の通行規制
高雄で日台フルーツフェス開催へ 人気YouTuber「高雄の嫁」Manaさんがプロモ映像で魅力発信
台湾副市長の妻が自殺 汚職審理の直前に 「私は無実だ」法廷で号泣の訴え、妻の死が供述に影響か
台湾・雲林県、超高齢社会に備え日本の在宅医療を視察 県長が悠翔会を訪問し先進事例を学ぶ
「7月5日地震説」拡散の中、政府が南海トラフ地震対策を正式決定 10年で死者8割減目指す
トランプ減税法案、上院を僅差で通過 副大統領が決定票、共和党内に深まる亀裂 米国債・医療保険の危機が目前に
「オールスターゲーム2025」公式グッズ解禁!MLBファン必見の限定ロゴアイテム、7月3日より販売開始
天気予報》「台風が2つ連続で発生か」 最新の進路予測で台湾上陸の可能性も
建築家・藤本壮介、初の大規模個展「原初・未来・森」 森美術館で開幕
評論:わが国は取り戻せるのか?
フェアモント東京、7月1日グランドオープン 都心と湾岸に交差するラグジュアリーの新拠点
「マイナビオールスターゲーム2025」練習用ユニフォーム&キャップの販売開始 全選手対応ネーム&ナンバー入りモデルはFanatics限定
建築家・内藤廣の思考を再構成する都市展「赤鬼と青鬼の場外乱闘」、渋谷で7月開幕
為替市場に緊張感 トランプ氏の圧力で新台湾ドル高、円とウォンは異常な低迷
中国発のJAL便が関空に緊急着陸 ボーイング737型で再び異常 乗客「遺書を書いた」
日米豪印、初の「シップ・オブザーバー・ミッション」実施へ 連携強化で「自由で開かれたインド太平洋」に一歩
フェス前にチェック!フジロック会場体験・新グッズ・チケット配送締切が続々公開
マオリ・オールブラックス来日にあわせ公式グッズ販売開始 ファナティクス・ジャパンが特別アイテム展開
「エキュート日暮里」5周年記念で限定グルメ&体験イベント “ご縁”をテーマに特別企画開催へ
麻布台ヒルズで「夏のひんやりスイーツ&グルメ」開催へ 冷やし麺や果実氷など56種の限定メニューが登場
鹿児島・トカラ列島で地震740回超 「トカラの法則」再び話題、7月の大地震説にも専門家が冷静促す
李忠謙コラム》トランプ氏の「ミッドナイト・ハンマー」は何を砕いたのか?
台湾副総統チェコ訪問中の「中国の尾行」はフェイク?仏研究者が「証拠乏しく外交慣例にも反する」と指摘