イランはなぜ核開発をやめないのか?――自主独立という国家の誇りと代償

2025-06-25 14:08
イラン革命40周年:反米スローガンを掲げるイランの若者たち。(AP通信)
イラン革命40周年:反米スローガンを掲げるイランの若者たち。(AP通信)
目次

「我々にとって、核燃料サイクルの掌握と核エネルギーの開発は、エネルギー資源の多様化だけでなく、イラン人の民族的アイデンティティ、尊厳、そして国際的地位に関わる問題です。アイデンティティの重要性を理解しなければ、多くの問題は解決されないでしょう。」

——2013年9月19日、当時のイラン大統領ハッサン・ロウハニ(Hassan Rouhani)

日本時間6月24日、トランプ大統領はイスラエルとイラン間の全面停戦を発表した。一方で、イラン現地時間6月22日未明、米軍はイラン国内のフォルド、ナタンズ、イスファハンにある3カ所の核施設に対して精密攻撃を実施。イランの核開発への強硬姿勢が改めて浮き彫りになった。『ガーディアン』紙は、イランの核エネルギー政策の歴史的背景と地政学的課題を分析し、核をめぐる同国の執着は単なるエネルギー確保を超え、国家の誇りと独立の象徴に結びついていると指摘している。

この画像はMaxar Technologiesが提供した衛星写真で、2025年6月22日にイスファハン核施設が米軍空襲を受けた後の損傷状況を示しています。(AP通信)
この画像はMaxar Technologiesが提供した衛星写真で、2025年6月22日にイスファハン核施設が米軍空襲を受けた後の損傷状況を示している。(AP通信)

「核エネルギー民族主義」はどのように形成されたのか?

イラン系米国人の国際政治学者ヴァリ・ナスル氏は著書『イランの大戦略』の中で、イランの核への執念は、大国による支配の歴史と、そこからの脱却を求める意志から生まれたと論じている。19世紀以降、イランは英露の影響下にあり、20世紀初頭には石油資源がイギリス企業に搾取された。

さらに、1941年と1953年には英米の関与によって指導者が追放され、特に1953年のクーデターでは、石油国有化を推進した民選首相モハンマド・モサッデク氏が英米の諜報機関によって失脚させられた。この歴史的屈辱は、イランに「自らの資源と運命を自らの手で掌握する」という国家的教訓を刻んだ。

核開発の原点は英米との協力関係にあった

1950年代、イランはアメリカとの同盟関係のもとで核エネルギー開発を開始。パーレビ国王の下で、米国の「原子力の平和利用(Atoms for Peace)」計画により、イランは23基の原子力発電所建設に乗り出し、周辺諸国への電力供給も視野に入れた「現代国家」を目指していた。

だが、1979年のイスラム革命で情勢は一変する。ホメイニ師の指導下で、王政は打倒され、シーア派を中心とするイスラム共和国が樹立された。ホメイニ氏は民主主義、イスラム教義、そして「独立」を三本柱とする国家理念を掲げ、「ウラン濃縮の権利」を国家主権の象徴として強く主張した。

興味深いのは、ホメイニ氏自身が当初、核エネルギーを「西洋依存」の象徴とみなして否定的だったことだ。彼は西洋文化の浸透を「西方中毒(gharbsadegi)」と批判し、核計画を一時凍結。多くの核科学者がその決定に失望したとされる。

だがその2年後、イランは電力不足と人口増加に直面し、核計画を密かに再開する。イラン・イラク戦争のさなかには、イラクが未完成のブシェール原子力発電所を化学兵器で複数回攻撃し、イランは国際的孤立と脆弱性を痛感した。さらに、欧州企業との数十億ドル規模の法的係争も重なり、外国技術への依存に対する不信感が高まった。こうした経験が、国内における「核エネルギー民族主義」の台頭を後押しすることになる。

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