アメリカとイスラエルがイランの主要核施設を攻撃した後、国際社会ではイランが保有する高濃縮ウランの行方に関する懸念が急速に高まっている。核物質がすでに他の場所に移された可能性も指摘されており、中東における核拡散のリスクとそれに伴う軍事的緊張の拡大に、世界中が神経を尖らせている。
6月22日未明、米国はイスラエルと共同でイランのフォードゥ、ナタンツ、イスファハンの三つの核関連施設に大規模な軍事攻撃を加えた。B-2ステルス爆撃機が使用され、バンカーバスター爆弾や巡航ミサイルなど精密兵器が投入された。トランプ大統領は攻撃後、標的が「完全に破壊された」と発表し、イランが報復すればさらなる攻撃を受けると警告した。
イラン、4つの核兵器を直接製造可能な濃縮ウランを保有
国際原子力機関(IAEA)が5月に発表した報告書によれば、イランの濃縮ウラン保有量は5月17日時点で9247.6キログラムに達し、2月の報告から約953キログラム増加した。そのうち、60%の高濃縮ウランは400キログラム以上にのぼり、核兵器4発を製造するのに十分な量だとされている。
核専門家の分析によれば、60%濃縮ウランから核兵器1発を製造するには25〜42キログラム程度が必要とされており、イランの備蓄量はすでにその水準を大きく上回っている。西側諸国は、これほど高濃度のウランが民生利用の域を超えており、兵器開発に直結していると見ているが、イランはあくまで平和利用の範囲内だと主張している。
イスラエル・テルアビブのAfeka工科大学講師で元軍人のユリ・ニシム・レビ氏は、「これらの高濃縮ウランは金属容器に封入され、トラックで簡単に移送可能だ」とし、既に1発分以上の核爆弾製造が可能な状況だと警告する。
核物質は攻撃前に移された可能性も
IAEAは攻撃後、核施設周辺での放射線量の異常上昇は確認していないが、レビ氏は「これは核物質の消失を意味しない」と指摘する。通常、遠心分離機が稼働していれば攻撃後に一定の放射線が検出されるはずであり、それが見られないということは、材料がすでに他所に運ばれたか、瓦礫の下に深く埋もれている可能性があるという。
IAEAの2023年12月26日付報告書では、イランが1カ月あたり9キログラムの60%濃縮ウランを生産していることも明らかになっている。この濃度を兵器級である90%以上に再濃縮すれば、わずか数日で完成する可能性がある。
レビ氏は「イランは約20の核関連施設を保有し、それぞれが分散しており、全体で一つの核生産チェーンを形成している」と語る。これは、攻撃を受けても全能力が失われないよう設計された意図的な配置だという。
米国副大統領ヴァンス氏は、米ABCテレビの番組《This Week》で、「今後数週間で、イランとの間で核燃料管理に関する議論を進めることになるだろう」と述べ、アメリカ政府が現在、イランの核物質の行方に深い関心を寄せていることを示唆した。
アラクの重水炉も潜在的な脅威に
高濃縮ウランとは別に、イランはアラクに設置された重水炉、現在のKhondab重水研究炉でも活動を進めている。この施設は2026年に稼働開始予定で、将来的には兵器級プルトニウムの製造能力を持つとされる。
レビ氏は、ロシアが関与して建設されたブシェール原子力発電所は今回の攻撃対象から除外されたとし、「ここを攻撃すれば重大な地政学的リスクが伴う」と述べている。
現在、衛星画像による被害評価が進められており、国際的な核専門家らは関連施設での放射線の変化を監視している。今後の展開次第では、イランの核物質の行方と、残された核能力の実態が世界の関心の中心になるだろう。
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