イランの高濃縮ウランが行方不明に? 核拡散リスクに国際社会が警戒強める

2025-06-24 13:25
アメリカ副大統領ヴァンス氏は「今後数週間で、我々はイランと核燃料の取り扱いについて協議し、この問題は主要議題の一つになる」と指摘した。(写真/AP通信)
アメリカ副大統領ヴァンス氏は「今後数週間で、我々はイランと核燃料の取り扱いについて協議し、この問題は主要議題の一つになる」と指摘した。(写真/AP通信)
目次

アメリカとイスラエルがイランの主要核施設を攻撃した後、国際社会ではイランが保有する高濃縮ウランの行方に関する懸念が急速に高まっている。核物質がすでに他の場所に移された可能性も指摘されており、中東における核拡散のリスクとそれに伴う軍事的緊張の拡大に、世界中が神経を尖らせている。

6月22日未明、米国はイスラエルと共同でイランのフォードゥ、ナタンツ、イスファハンの三つの核関連施設に大規模な軍事攻撃を加えた。B-2ステルス爆撃機が使用され、バンカーバスター爆弾や巡航ミサイルなど精密兵器が投入された。トランプ大統領は攻撃後、標的が「完全に破壊された」と発表し、イランが報復すればさらなる攻撃を受けると警告した。

イラン、4つの核兵器を直接製造可能な濃縮ウランを保有

国際原子力機関(IAEA)が5月に発表した報告書によれば、イランの濃縮ウラン保有量は5月17日時点で9247.6キログラムに達し、2月の報告から約953キログラム増加した。そのうち、60%の高濃縮ウランは400キログラム以上にのぼり、核兵器4発を製造するのに十分な量だとされている。

核専門家の分析によれば、60%濃縮ウランから核兵器1発を製造するには25〜42キログラム程度が必要とされており、イランの備蓄量はすでにその水準を大きく上回っている。西側諸国は、これほど高濃度のウランが民生利用の域を超えており、兵器開発に直結していると見ているが、イランはあくまで平和利用の範囲内だと主張している。

イスラエル・テルアビブのAfeka工科大学講師で元軍人のユリ・ニシム・レビ氏は、「これらの高濃縮ウランは金属容器に封入され、トラックで簡単に移送可能だ」とし、既に1発分以上の核爆弾製造が可能な状況だと警告する。

核物質は攻撃前に移された可能性も

IAEAは攻撃後、核施設周辺での放射線量の異常上昇は確認していないが、レビ氏は「これは核物質の消失を意味しない」と指摘する。通常、遠心分離機が稼働していれば攻撃後に一定の放射線が検出されるはずであり、それが見られないということは、材料がすでに他所に運ばれたか、瓦礫の下に深く埋もれている可能性があるという。

特にナタンツやフォードゥといった施設では、放射線の外部漏洩は限定的であるとされ、内部のみにとどまっている可能性が高い。また、イスファハンには中国の技術支援による研究炉が存在し、1000人以上の核科学者が集まり、イランの核計画の中核を担っている。これら施設の戦略的価値は極めて高く、軍事目標としても最優先されていた。

IAEAの2023年12月26日付報告書では、イランが1カ月あたり9キログラムの60%濃縮ウランを生産していることも明らかになっている。この濃度を兵器級である90%以上に再濃縮すれば、わずか数日で完成する可能性がある。

レビ氏は「イランは約20の核関連施設を保有し、それぞれが分散しており、全体で一つの核生産チェーンを形成している」と語る。これは、攻撃を受けても全能力が失われないよう設計された意図的な配置だという。

米国副大統領ヴァンス氏は、米ABCテレビの番組《This Week》で、「今後数週間で、イランとの間で核燃料管理に関する議論を進めることになるだろう」と述べ、アメリカ政府が現在、イランの核物質の行方に深い関心を寄せていることを示唆した。

アラクの重水炉も潜在的な脅威に

高濃縮ウランとは別に、イランはアラクに設置された重水炉、現在のKhondab重水研究炉でも活動を進めている。この施設は2026年に稼働開始予定で、将来的には兵器級プルトニウムの製造能力を持つとされる。

レビ氏は、ロシアが関与して建設されたブシェール原子力発電所は今回の攻撃対象から除外されたとし、「ここを攻撃すれば重大な地政学的リスクが伴う」と述べている。

現在、衛星画像による被害評価が進められており、国際的な核専門家らは関連施設での放射線の変化を監視している。今後の展開次第では、イランの核物質の行方と、残された核能力の実態が世界の関心の中心になるだろう。

中国語関連記事

世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp

最新ニュース
仮想通貨界に激震!史上最大10億ドルのビットコイン統合へ 次のブルマーケットは目前か?
大谷翔平の愛犬・デコピンが「遊戯王」カードに!ファン大興奮のレアコラボ
台湾有事「想定」で避難計画本格化 2027年与那国島で地下施設運用、石垣・宮古も拡大へ
評論:「台湾」は「中国」から誕生?頼清徳総統の歴史観に広がる波紋
トランプ氏、イスラエルとイランの停戦を宣言!イランが米軍に攻撃通知の「奇策」も浮上
米イラン衝突で中国の中東戦略に打撃 ホルムズ封鎖リスクに「一帯一路」も直撃か
習近平氏、ロシアを通じて欧州けん制か NATOは台湾有事との連動に警鐘
中東「12日戦争」に終止符 イスラエルとイランが全面停戦 トランプ氏が電撃発表
夏珍コラム:「大規模なリコール」が掘り起こした国家安全の脆弱性
中東危機拡大 米軍基地空襲・テヘラン爆撃で世界経済に波紋
法律業界にもAI革命 台湾の大手法律事務所が「AIツール」導入で業務効率が劇的向上
台湾株が400ポイント超の急騰 中東停戦とAI関連株に追い風、TSMC・AI銘柄に買い殺到
台湾鉄道の運賃大幅改定 悠遊カード特典も縮小へ 9つの変更点を徹底解説
李登輝元総統「君の論文を読んでいる」と日本人学者に発言! 若林正丈教授が見た陳水扁元総統、「この主義の賭博師」と評価
アメリカ、イランと開戦! B-2爆撃機が6発の『バンカーバスター』を投下、トランプ氏「フォルドゥはもう存在しない」
イラン核施設空爆後、トランプ氏が演説「中東は平和を求めよ、さもなくば報復も」
FacebookやGoogle含む160億件超のアカウント情報流出、専門家が即時対応を呼びかけ
「ミッドナイトハンマー作戦」全貌判明 トランプ政権が指示、イラン核施設を初空爆
人物》民進党、25年の修行を積んだ影武者起用 頼清徳総統、戦争と災害防衛の韌性強化に寄与
「歴史的決定」と評価──イスラエル駐台代表が語る「核阻止」の国際連携
米国が同盟国に軍事費「GDP5%」を要求──次のターゲットは日本とアジア太平洋
都議選2025:都民ファーストが第1党に 自民党は大幅後退、「政治とカネ」問題が影響か
台南から届いたパイナップルに笑顔広がる 北海道・美唄の高校生「甘くてジューシー!」
米軍のイラン攻撃は台湾にも波及?『ニューヨーク・タイムズ』:中国の限界と米中の思惑
「甘くておいしい!」台湾・台南から届いたパイナップルに熊本・宇土の子どもたちが笑顔
台湾、独自衛星ネットワーク構築へ 中国の宇宙軍に対抗、欧州と連携強化
原油100ドル時代が現実に?米軍のイラン爆撃が世界経済に波紋
台湾、世界野球WBSCプレミア12優勝記念銀貨を発行 6月23日から予約受付
台湾・鉱山芸術季「225への手紙」開幕 金瓜石・九份・水湳洞を巡る記憶とアートの旅へ
米軍、イランの核施設3か所を攻撃 日本政府「重大な関心」表明
米軍「ミッドナイトハンマー」作戦、フォルドウ地下施設に6発貫通 濃縮ウランは事前に移送か
舞台裏》柯文哲事件の余波、台北地方検察庁の昇進システムに不安定化の兆し
賴清德「中華民国も台湾も等しく響く」 国家の本質は名称ではなく「四要素」と強調
イラン、イスラエルに報復空爆 全面衝突とホルムズ海峡封鎖の懸念も
2025年台北・人気クロワッサン店12選-巨大クロワッサンから中身入りまで多彩な味
年間4,000万人の新記録に挑む!中韓の訪日観光客急増、香港は「災難予言」で旅行キャンセル
台湾「百万ドル富豪」75万人突破!シンガポール抜き世界上位へ 今後5年で増加続く
米国、学生ビザ面接を再開予定! AITが回答:外交部は2日以内の予約再開を予測
チームラボプラネッツ豊洲 2025年、大規模拡張で新空間誕生
在日台湾人による学びとつながりの場──「在日東京揪団愛学習同好会」の試み
MEGAドン•キホーテ渋谷本店、外国人観光客に「作るアイテム」が人気
満場の拍手を浴びる!安倍昭恵夫人、2年ぶりに台南訪問 黄偉哲市長がマンゴーでおもてなし
お米好き必見!AKOMEYA食堂で楽しむ、冷やし茶漬けとごはんの“お友”たち
【新作スイーツ】AKOMEYA食堂「国産素材を味わう」──贅沢かき氷を神楽坂で26日より販売
夏をまるごと味わう「国産レモン」づくし──AKOMEYA TOKYOが贈る涼味のセレクト
米国、留学ビザ面接を再開──SNS投稿の審査を強化へ
外国人が絶賛する「台湾グルメ10選」──鼎泰豐を超えた1位の名店とは?
【独占インタビュー】台大卒アイドル・KANA-KANA「ステージに立てる幸せが、私の答え」
ホワイトハウスを去ったマスク、火星移住の夢は実現可能か?宇宙船のテストで4度目の爆発、2026年の火星初航に影響か
九份・西門町を上回る!ある公園が台湾で人気No.1観光地に、4か月で1800万人が訪問「皆が写真を撮りたがる」