「40時間フライト」の極限任務──B-2爆撃機パイロットの過酷な現実とは?

2025-06-25 13:08
B-2は給油なしでも6,000マイル(約11,100km)飛行可能だが、多くの任務では複数回の空中給油に頼って航続距離を延ばす必要があるとバシャム氏は指摘。パイロットは機体尾部から約5メートル後方の給油ブームを視認できず、ほぼ「盲飛」に近い操作となる。(画像/アメリカ空軍サイト提供)
B-2は給油なしでも6,000マイル(約11,100km)飛行可能だが、多くの任務では複数回の空中給油に頼って航続距離を延ばす必要があるとバシャム氏は指摘。パイロットは機体尾部から約5メートル後方の給油ブームを視認できず、ほぼ「盲飛」に近い操作となる。(画像/アメリカ空軍サイト提供)
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アメリカ空軍の戦略爆撃機B-2スピリットは、イランの核施設への攻撃任務において重要な役割を担った。全翼型のこの機体は、約20億ドル(約3,100億円)をかけて製造されたステルス爆撃機で、敵のレーダー網をかいくぐる性能と引き換えに、パイロットの肉体と精神に極限の負荷をかける存在でもある。かつて9年間にわたりB-2を操縦した元アメリカ空軍中将のスティーブ・バシャム氏は、「大陸間飛行を40時間以上続けるには、技術だけでなく強い意志が必要だ」と証言する。

過酷な任務前に行う「体調管理」と「食事戦略」

バシャム氏にによると、長距離任務前には詳細な飛行計画のほか、パイロットに対して睡眠の調整訓練や栄養指導も行われる。任務中に覚醒を保つ食べ物、逆に休息を促す食事などの知識を身につけた上で、体調管理に努めなければならないという。

狭い機内には簡易トイレしかなく、食事も消化に負担の少ないものが好まれる。バシャム氏は「全粒粉パンの七面鳥サンド」を例に挙げ、軽食でコンディションを整えていたという。乗務中、ひまわりの種をかじったり、操縦席後方のキャンバスベッドで仮眠を取ることもあった。

空中給油は「見えない給油棒」との闘い

B-2は空中給油なしでも約6,000マイル(約11,100km)を飛行できるが、多くの任務では複数回の空中給油が必要になる。だが、この給油作業は機体尾部の給油口が視認できず、給油機の灯火と記憶を頼りに接続を行う「ブラインド飛行」となる。特に月明かりのない夜間には高度な集中力と操縦技術が求められ、「極めて危険な作業」とされる。

AI化が進んでも人間の限界に挑むB-2操縦

B-2にはコンピューター制御の「フライ・バイ・ワイヤ」技術が導入されており、物理的な操縦索ではなく電子的に飛行を制御する。しかし初期はソフトウェアの遅延が空中給油時の精密操作を妨げていたという。改良が進んだ今も、高高度での密集編隊飛行などは依然としてパイロットの高い負荷となる。「我々のパイロットは簡単そうに見せるが、実際には困難の連続だ」とバシャム氏は語る。

任務の遂行は誰が支えるのか?背後のチーム支援が鍵になる

従来の大型爆撃機に比べ、B-2はわずか2人の乗務で運用される。操縦士と副操縦士がすべてをこなす裏で、実は数百人規模の整備・補給・計画チームがこの任務を支えている。「世界中に展開された整備・補給ネットワークと緻密な計画支援がなければ、B-2の任務は不可能」とバシャム氏は断言する。最先端のステルス性能を持つB-2だが、任務を成功に導くのは最後には「人」であるということを、この証言は強く示している。

​編集:田中佳奈

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