【独占インタビュー】迷いから適応へ オリックスの台湾右腕・陳睦衡選手「球速150キロに到達、体力強化に集中」

2025-08-23 13:13
日本でプレーする台湾出身の陳睦衡投手。(写真/黃信維撮影)
日本でプレーする台湾出身の陳睦衡投手。(写真/黃信維撮影)

オリックス・バファローズの育成右腕、陳睦衡(チェン・ムーヘン)選手は2024年10月に育成契約で正式に入団し、同年11月にチームに合流した。台湾出身の若き投手が舞洲の二軍施設で独占インタビューに応じ、来日直後の興奮から一時的な迷い、そして平均球速148〜149キロ、最速150キロに到達した成果や、制球面での調整、体力強化の目標について語った。最後には台湾と日本のファンに感謝の言葉を述べ、「より高い舞台に立ち、より良い野球環境を一緒に築いていきたい」と決意を込めた。

投手陳睦衡。(棒協提供)
台湾出身の右腕・陳睦衡投手。(写真/台湾棒球協会提供)

陳選手は2006年3月23日生まれ、身長181センチ、体重84キロの右投げ左打ち。台湾・穀保家商を卒業し、高校時代から優れた投球能力で注目を集めた。2024年のU18アジア選手権では最速152キロを記録し、最優秀防御率、最高勝率、ベストナイン先発投手の三冠を獲得している。「日本のプロの舞台に立ったときは期待と興奮でいっぱいだったが、思いもよらぬ課題に直面した。練習の方向性や成果が正しいのか分からなくなることもあった」と、当時の心境を明かした。

プロ入り後は学生時代とは異なり、毎日の達成感を野球から得るようになった。結果が出なければ自身の方法を疑い、プレッシャーを抱えることもあったが、時間をかけて調整し、徐々に日職のリズムに適応していったという。「今は状態も良く、気持ちも立て直せている」と語り、二軍ではすでに複数試合に登板し、投球回数も伸びつつある。試合の印象について「悪い投球の試合の方が記憶に残る」と笑いながらも、京セラドームで二軍公式戦に登板し、観客を前に投げた瞬間に「自分は本当に日本プロ野球のマウンドに立っている」と強く実感したという。

日本で初めて制球難に直面したこともあった。「身体や練習方法の変化に加え、フォーム改善を試みた結果、逆に問題が出て迷いもあった。今は徐々に協調性を取り戻せている」と話す。U18アジア選手権後にオリックスから声をかけられたことについては、「当初はアメリカに行くと思っていたので驚いた。日本球団が台湾の高校生を獲得する例は少なかったから」と振り返る。

また、日本の練習環境については「効率的で設備も整っており、選手ごとのメニューを提供してくれる。無駄がなく、すべてに目的がある。とても先進的だと感じる」と評価した。春季キャンプを経て迎えたシーズンでは、平均球速が来日時の143〜144キロから148〜149キロへと向上し、最速も150キロに達した。「短期的な目標は体力と身体能力の向上。筋肉量を44キロに増やし、可動域も広げたい。整えば球速は自然に上がるはずだ」と意気込む。

チーム内では、同学年で仙台育英出身の山口廉王選手と特に親しく、「毎日一緒に昼食を取り、休日にも遊びに行く」と話す。二人の昼食時の様子は球団公式YouTubeでも紹介された。先輩からも積極的に声をかけてもらい、生活や日本語習得をサポートされている。球団による日本語レッスンも受けており、「まだまだ」としながらも語学力向上に励んでいる。

山口廉王(左)、旅日投手陳睦衡(右)。(黃信維攝)
仙台育英出身の山口廉王選手(左)とオリックスの陳睦衡投手(右)。(写真/黃信維撮影)

最後に台湾と日本のファンへ向けて、「早くから、あるいは最近から応援してくれている皆さん、本当にありがとうございます。海外で挑戦している私をこれからも応援していただき、一緒により高い舞台に立ち、新しい時代を切り開く野球環境を共に作っていきたい」と力を込めた。

編集:田中佳奈

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