台湾で23日に実施された「第2波リコール投票」と「第3原子力発電所(核三)再稼働を問う国民投票」の開票結果が夜に出そろい、いずれも否決された。これを受けて、賴清德総統は総統府で談話を発表し、「台湾人民は今回のリコールと公投を通じて再び民主の力を示した。これは人民の意志であり、結果は尊重し受け止める」と述べた。
賴総統は、核三再稼働公投が成立しなかった点について「通過はしなかったが、社会におけるエネルギー多様化への期待は十分に理解した」と語り、改めて安全性の確保を最優先にすると強調。「原子力の安全は科学的な問題であり、検証を必要とする課題で、公投一度で結論が出るものではない」と述べた。
また、7月26日のリコール投票後に行政院長の卓榮泰氏が繰り返し辞意を示していたことを明かしつつも、賴総統は「台米関税交渉はまだ決着しておらず、台風や豪雨による災害復旧も続いている。今年度の補正予算・特別予算、来年度の中央政府総予算も審議中であり、多くの国政課題が進行している」と指摘。卓氏に続投を要請した上で、「人民の期待に応えるため、執政チームを刷新する」と述べた。
賴清德総統「原子力再稼働は二つの必須条件と三原則」
賴総統は核三延役公投に関連し、今年5月に改正された《核管法》に基づき、再稼働には「二つの必須条件」があると説明。
第一に、核安会が安全審査の手続を定めること。
第二に、台電(台湾電力)がその手続に従って自主安全検査を行うこと。
「核安会は各界の意見を広く取り入れて早急に関連規則を定めるべきであり、台電は公告後に検査を開始し、社会に定期的に進捗とリスクを報告すべきだ」と指示した。
その上で、政府は「核安無虞(安全確保)、核廃有解(廃棄物処理)、社会有共識(社会的合意)」の三原則を堅持すると表明。将来もし技術が進歩し廃棄物が減り、社会の受容度が高まれば「先進原子力の可能性を排除しない」と述べた。「国民が求めるのは安心と安定供電であり、これを保障するのは政府の責任だ」と語り、今後もエネルギー転換を推進するとした。
卓榮泰氏の続投と「四つの調整」
賴清德総統は言葉を続け、自身が就任してから1年3か月が経過した今、政府の施政に不足がある点について「常に省み、調整と変革を続けなければならない」と述べた。特に行政院長の卓榮泰氏は、7月26日のリコール投票後にすでに複数回辞任の意向を示していたという。しかし賴総統は、この時期には台湾と米国の関税交渉がまだ決着しておらず、台風や豪雨による災害復旧も進行中であるうえ、今年は追加予算や特別予算、さらに翌年度の中央政府総予算も立法院で審議されていることを指摘。「多くの重要政策を安定的に進める必要がある」とし、卓氏に続投を求め「国家の重要な任務を共に担ってほしい」と強調した。
さらに賴総統は、国民の期待に応えるため、政権チームとして四つの調整を行うと表明した。具体的には、チーム体制の再編、政策の優先順位の見直し、行政と立法の関係改善、そして国家財政の健全化である。内閣は必要に応じて人事を改編し、効率性を高め、政策を実感できる形にする。優先順位については経済、民生、社会的弱者、若者に重点を置き、特別予算や年度予算を通じて国民生活の支援、産業発展の推進、経済のレジリエンス強化を進め、国家の力を高めていくとした。
行政と立法の関係については、政府は国家利益を守る姿勢を堅持しつつ、与野党間でより多くの対話を求め、党派を超えて台湾を守り、国民生活に資する政策を進めていきたいと強調した。また、安定した国家財政こそが世代を超えた持続可能性を保証すると述べ、与野党が協力して財政構造を健全化し、長期的な発展を確保することを期待している。
さらに賴清德は、この日が823戦役勝利から67周年にあたることに触れ、「あの時、私たちは族群の違いを超えて台澎金馬の軍民が一体となり、金門を、そして台湾を守り抜いた。今日の挑戦は異なるが、求められる団結は同じだ。団結してこそ、国家を守り、民主と自由を守ることができる。私は823の精神を胸に、国民と共に台湾をより民主的で、安全で、繁栄した未来へ導いていく」と訴えた。
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