7月26日に台湾で行われた全国規模の大リコールでは、リコール推進団体と民進党が24対0という惨敗を喫し、その後、両者の対立が本格化した。発起人である聯電(UMC)の名誉会長・曹興誠氏は「民進党に任せよう。あれは藍緑(国民党と民進党)の対決であり、我々が背負うには重すぎる戦いだ。それはまた、民進党が国会を変える最後のチャンスでもある」と述べた。インフルエンサーの八炯氏も「私は努力した。あとは皆さんに託す」と発言している。賴清徳総統は民進党の常任委員会で、8月23日の第二段階リコール投票について「市民団体と最後まで歩む」と強調したものの、全体的な勢いはすでに削がれていた。
第1波の7月26日では、国民党の立法委員らが「五分五分」の選挙区で戦ったが、結局リコールは全て失敗に終わった。今回の第2波で対象となった7つの選挙区は、国民党の地盤が強固か、あるいは実力派の立委が長年にわたり勢力を固めてきた地域であり、突破は困難とみられていた。さらに、同日に第三原発(核三)の再稼働を問う国民投票も実施され、関心が分散されたことで、7人の国民党議員は敗北の可能性を懸念するよりも、むしろ支持者の投票意欲の低下を心配していた。この投票行動の鈍さは各議員の勢いに影響を及ぼし、2026年の県市長選、さらには台中市長・盧秀燕氏が将来大位に挑む可能性にも直結する課題となっている。

投票熱の低下を懸念 盧秀燕氏の「高級ファンデ騒動」が思わぬ追い風に
7月26日の大規模リコールで大勝した後、与野党ともに8月23日のリコールについては「7人の国民党立法委員はいずれも切り抜けられる」との見方が強かった。台中で標的となった3人のベテラン国民党議員も比較的安定した戦況にあり、その中で顏寬恒氏は一時、民進党陣営の集中攻撃を受けたが、顏家が喪中にあることもあり、かえって「人情に欠ける」との反発が広がった。結果として、顏氏支持者の投票意欲を刺激し、反対票が大きく上回る形となった。
一方、江啓臣氏と楊瓊瓔氏の2人は「投票熱の不足」に懸念を抱いていた。街頭での遊説では支持者の反応は熱心だったが、7月26日の第1波のような激情は見られず、最後まで投票率の低下が心配された。それでも最終的には予想通り、リコール成立には至らなかった。
その過程で波紋を広げたのが、林佳龍氏の市長時代に交通局長を務めた王義川氏が暴露した「盧秀燕市長の2400元(約1万1000円)の高級ファンデーション使用」発言だった。これに民進党婦女部が「進歩的価値」として声援を送り、さらに台中市の元新聞局長である卓冠廷議員が党中央を批判したことで、論争は「女性蔑視」問題へと発展。いわゆる「厭女台派」騒動は台北政界にとどまらず、台中でも火を広げる結果となった。地元の政治家からは「林佳龍氏の側近が盧秀燕氏を攻撃したことで、むしろ支持者の怒りを買い、リコール投票率を押し上げる“神救援”になった」との声も上がっている。
今回の台中での3件のリコールの裏には、2026年の台中市長選をめぐる布石もある。国民党の江啓臣氏(現・立法院副院長)と楊瓊瓔氏(現・立法委員)がいずれも有力候補とされ、盧秀燕氏の「後継ポスト」を争う構図が早くも意識されている。地元では「盧秀燕氏は江啓臣氏を支持している」との声がある一方、リコールのように地盤や地域での活動実績が物を言う戦いでは、長年地域密着で活動してきた楊瓊瓔氏の方が優勢とみられる。実際に楊氏は、リコール後に市長選への正式な出馬を表明する可能性があるとも伝えられている。
全体的に見ると、江啓臣氏にとっては「決して負けられない戦い」であり、その結果は盧秀燕氏の調整力や、台中に根付いた地盤の強さが、楊氏との対決をどこまで均衡させられるかにかかっている。
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