米国のドナルド・トランプ大統領が各国に「相互関税」を課すと打ち出して以来、台湾もその波に飲み込まれている。政府は当初「夜は安心して眠ってほしい」と国民に呼びかけたが、最初に示された税率は32%に達し、現在も20%という高水準のままだ。台湾メディアは一時、政府が最大4000億ドル規模の対米投資計画を準備し、日本と同水準の15%関税を目指していると報じた。
《風傳媒》が入手した経済部の内部資料によると、6月下旬にワシントンで開かれた第2ラウンド交渉で、米国側は農水産物や自動車・関連部品の関税撤廃、輸入車制限の撤廃、さらに軍事費をGDP比3%に引き上げることなどを要求。これに対し台湾は8月初め、米国製品の市場を全面的に開放する意向を伝えた。
行政院副院長の鄭麗君氏は6月25日、代表団を率いてワシントンを訪れ、米通商代表ジャミーソン・グリア氏、商務長官ハワード・ルートニック氏らと協議。双方は「建設的な進展があった」と発表したが、台湾側はその後、米国製品に対する市場開放を包括的に保証した。
交渉の中で、米国は小麦・トウモロコシ・大豆・乳製品・肉類・水産物・果物・野菜・自動車・化学製品・化粧品・医療機器・薬品・機械など幅広い品目の関税撤廃を求めた。さらに非関税障壁の撤廃や米国車輸入枠の撤廃、米国の医薬品審査手続きの簡素化、牛肉や豚肉に関するSPS(動植物検疫措置)問題の解決、米国製品輸入の許可制度撤廃、牛血や牛脂・バイソン・鶏肉・卵製品・水産物の輸入促進、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の地域指定の承認なども含まれていた。
台湾側はまた、今後4年間で台湾企業による米国投資を総額2500億ドルとすることを約束。AIサーバー、半導体、ICT、電子受託製造業が重点分野とされた。さらに4年で1300億ドル、10年で3000億ドル規模の米国製品調達を行うとし、液化天然ガス、原油、航空機、防衛装備、発電機、農産物(大豆、トウモロコシ、小麦、牛肉など)が対象に含まれる。加えて4000億ドルの金融保証を用意し、台湾企業の対米進出を後押しする方針だ。
しかし、農漁業関係者からは深刻な懸念が上がる。加工業や大企業にとっては原料を安価に調達し、製品化する好機になるかもしれないが、新鮮な農水産物を国内市場や国軍の給食、学校給食に供給してきた中小業者には壊滅的打撃となりかねず、「台湾の基盤産業が一気に崩れる恐れがある」と警鐘を鳴らしている。
経貿部:交渉は未だ金額規模を議定せず
6月の台米対等関税第2ラウンド交渉では、米国が農水産物や自動車関連製品の関税撤廃、輸入車制限の撤廃、軍事費をGDPの3%に引き上げることなどを要求した。台湾は8月初めに米国へ返答し、米国製品の市場全面開放を保証した。
これに対し行政院台米経貿作業グループは、「交渉はまだ確定しておらず、未確認の情報が流布されることは国際交渉の進行を妨げ、不確定な情報が国民を誤導する可能性がある」として強い遺憾を表明した。
作業グループによれば、今回の米国と各国との交渉は、いずれも貿易と投資を優先するもので、関税や非関税障壁、投資、調達など幅広い議題を含んでいる。米国は各国との貿易赤字を解消することを狙っており、台湾も例外ではない。台湾は8月1日に暫定的な対等関税率を獲得したが、現在も米国との交渉は続いており、特に232条項や投資・サプライチェーン協力といった議題で協議が進行中である。これらは台湾産業の今後の世界展開や経済発展に直結する重要課題であり、依然として金額規模は確定していない。
「交渉の基本原則は国家利益、産業利益、そして国民の安全と健康福祉を守ることにある」と作業グループは強調した。そのうえで、交渉が継続中である以上、誤った情報は不必要なリスクを交渉に持ち込む恐れがあると警告。いずれ合意に達した際には、台米双方が条件を公表し、政府が国会に付託して審議を受けるとした。
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編集:田中佳奈
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