九三軍事パレードを前に 中国無人機群が台湾に照準 米国を上回る強みも「侮れない」

2025-08-27 17:53
解放軍の殲-20戦闘機は無人機「忠実僚機」との連携を想定しており、AIの活用によって将来の空中戦の姿を一変させる可能性がある。(写真/中国軍網)
解放軍の殲-20戦闘機は無人機「忠実僚機」との連携を想定しており、AIの活用によって将来の空中戦の姿を一変させる可能性がある。(写真/中国軍網)
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中国で開催される「九三軍事パレード」では、これまで秘密裏に開発されてきた無人機群が公開展示される見通しだ。これらは「協同作戦航空機」(CCA)とも呼ばれ、有人機と連携して戦闘に参加する「忠実な僚機」として注目されている。

国防安全研究院の舒孝煌副研究員は『風傳媒』の取材に対し、現在確認されている中国無人機の多くはステルス性能を備え、戦闘機への奇襲や防空網突破、精密攻撃が可能だと指摘。その能力は現時点でアメリカをわずかに上回っている可能性があり、「決して軽視できない」と警鐘を鳴らした。

北京では軍事パレードに向けた準備が進み、多数の新型装備が搬入される様子が軍事ファンによって撮影されている。無人機については少なくとも4機種が確認され、用途をめぐって議論が起きている。海外メディアの分析では、今後は双座型の「殲-20S」が司令役となり、パイロットと同乗する兵器管制官が複数の無人機を操作する戦術が想定されているという。

北京鋪陳93閱兵,多款新式無人機受到軍迷關注。(翻攝自X @Rational314159)
北京で準備が進む93閲兵では、多数の新型無人機が搬入され、軍事ファンの注目を集めている。(X @Rational314159より)

AIと5Gが切り開く「蜂群作戦」

舒氏は、忠実な僚機の開発ではAIと5Gが不可欠だと説明する。母機と無人機、さらには無人機同士の間で安定した通信を確保するには大容量・低遅延の通信が必要で、特に多数の無人機による「蜂群作戦」を実現するために5Gが有効だという。

アメリカ空軍も2023年ごろから実際の試験を開始し、AI制御のF-16試験機を投入。パイロットとエンジニアが搭乗するが操作は行わず、AIが自律または半自律で飛行。異常があった場合のみ人間が介入する方式を採用している。これはオープンアーキテクチャの実験であり、各企業が異なるアルゴリズムを組み込み操縦方法を検証している。舒氏は「パイロットが無人機と協働することを受け入れなければ技術は定着しない」として、この段階をAI自動化空戦の第一歩と位置づけた。

解放軍部隊進行最後預演,準備參與93天安門大閱兵。(美聯社)
解放軍部隊は93回天安門大閲兵に向けた最終リハーサルを行っている。(AP通信)

舒氏によれば、中国もアメリカと同様の取り組みを加速させており、三角形の全翼型など多様な形状のステルス無人機を開発中だ。衛星写真などからもその存在が確認され、研究開発にはすでに10年以上が投じられている。大学の研究機関も動員され、制御技術、ステルス性能、AI応用などで着実な成果を上げているとみられる。

「共産党軍の無人機は、外形だけでなくシステム全体で進化を遂げており、アメリカを一部上回る分野もある。軽視すれば台湾にとって重大なリスクとなりうる」と舒氏は警告した。

国防安全研究院副研究員舒孝煌。(楊騰凱攝)
国防安全研究院副研究員の舒孝煌氏。(写真/楊騰凱撮影)

共軍無人機、精密攻撃能力を獲得か

舒孝煌氏は、中国の無人機開発が急速に進展していると指摘する。主力戦闘機「殲-20」や「殲-20S」と無人僚機を組み合わせれば、従来の人民解放軍空軍には不可能だった作戦遂行が可能になるという。

従来、解放軍は欧米諸国の密集した防空網を突破できないとされ、ロシア同様に長距離ミサイルに依存して主要目標を攻撃してきた。しかし、防空システムの進化により、これらのミサイルは迎撃されるリスクが高まっている。加えて長距離兵器は固定目標にしか対応できず、新たな目標を発見しても情報伝達や分析に時間がかかり、機動的な攻撃が難しい。そこでステルス戦闘機や無人機を前面に出し、防空網を制圧して後続部隊を安全に進入させる戦術が浮上している。

殲-20S(左)為全球首款雙座五代戦機,後座武器官可指揮無人僚機組成機隊。圖為2024年中国航展現場。(翻攝自中国軍網)
殲-20S(左)は世界初の双座型第5世代戦闘機で、後席の兵装士官が無人僚機を指揮し編隊を組むことができる。写真は2024年の中国航空ショーでの展示。(写真/中国軍網より)
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