四方を海に囲まれた台湾にとって、海軍は安全保障の要だ。しかし近年、中国人民解放軍の海軍力は急速に拡大し、艦艇数ではすでに世界一に。最新鋭艦の配備も進む中、防衛に立つ台湾海軍の艦艇は明らかに劣勢を強いられている。2025年の漢光演習で頼清徳総統が視察した布雷訓練は、海軍が真剣に演じる一方で、水面下の大きな弱点を浮き彫りにした。台湾は今も「百年前の兵器」に依存せざるを得ない状況なのだ。

水雷は「非対称戦」の有力兵器
海軍における水雷は、非対称戦の切り札とされてきた。隠密性が高く、安価で製造でき、設置も容易で、掃海が困難という利点を持つ。海岸封鎖や港湾防衛、敵上陸阻止など多様な役割を果たし、戦術的にも戦略的にもコストパフォーマンスの高い武器だ。特に「雷区」と宣言された海域や港は、交戦国だけでなく中立国にも強い心理的威嚇を与え、実質的に航行禁止区域と化す。
台湾海軍が現在使用しているのは、米国製のMK-6水雷と、中山科学研究院(中科院)が開発した「萬象」シリーズの国産機雷だ。萬象1型は磁気感応式で水深50メートルに設置でき、装薬量は約295キロ。萬象2型は音響・磁気・水圧に反応し、水深300メートル以内で運用可能。沈底型は400キロ、繋留型は170キロの装薬を搭載する。
しかし、最大の問題はMK-6だ。初登場は1917年、15度の改良を経て現在も使用されているが、最新型でさえ1964年の設計だ。台湾海軍は2022年に布雷演習を公開し、MK-6を布設する様子を披露した。米軍事サイト《THE DRIVE》は「現代的な布雷艇を保有しているのに、なぜ100年前の水雷を運用しているのか」と首をかしげた。ただし、MK-6は低コストで殺傷力も実証されており、大量に布設すれば中国の渡海作戦を遅らせ、台湾や同盟国に貴重な時間を稼ぐ可能性があるとも指摘された。

新型導入計画は頓挫 「萬海計画」の行き詰まり
海軍も打開を模索してきた。2024~2028年にかけて約90億元(約4,320億円)を投じ、新型水雷を調達する「萬海計画」を策定したが、輸出許可が下りず、1年で頓挫した。その後は中科院に新型開発を依頼したものの、完成品は「要求を満たしていない」と判断され採用されなかった。このため布雷艇だけは最新鋭でも、実際に搭載されるのは依然として旧式のMK-6。布設速度も遅く、水雷戦力は前進できずに停滞したままだ。 (関連記事: 舞台裏》敵を撃退するか、それとも自滅か?漢光演習は「史上最長・最実戦的」も、台湾の弱点を露呈 | 関連記事をもっと読む )
2025年漢光演習で布雷を公開
最新版の《四年期国防総検討》(QDR)によれば、国軍は今後も現行戦略を継続し、「多領域拒止」と「弾性防衛」を発展の軸に据える方針だ。不対称戦力を優先的に整備し、作戦全体の持久性と柔軟性を強化する。その一環として、2025年の漢光41号演習では多領域拒止が重点項目に位置づけられ、演習開始前から工兵部隊が空港や港湾への連絡道路を遮断する訓練を実施。海上では機雷の布設が「第一の阻止線」として重視された。