米国のトランプ大統領は、米政府がIntelの10%の株式を取得したと発表し、市場の注目を集めた。また、TSMCへの出資の噂も伝えられたが、TSMCの魏哲家董事長は22日夜に取材を受け、「米国は出資しないと発表した」と明らかにし、外部の疑念を払拭した。天風国際証券のアナリスト郭明錤氏はこれについて重点分析を行い、なぜこの出資モデルが「TSMCとサムスンには適用されないか」を指摘した。
郭明錤氏は記事の中で、「先に結論を言えば、米国政府がIntelに出資しても“技術的な上限”を保証することはできないが、“企業価値の下限”を確保することはできる」と述べた。米国政府は当初からIntelに89億ドル(約1兆3,000億円)の補助金を支給する計画を持っていたが、今回の違いは9.9%の株式を取得する点にある。これは1株20.47ドルで4億3,330万株を購入することを意味している。
郭明錤氏は次のように指摘している。今回の4億3,330万株は普通株の新株(primary shares of common stock)であるが、米国政府はIntelの経営に介入する意図を持たない。そのため、取締役会への代表権やその他の経営・情報関連の権利といった普通株に付随する権利を放棄する方針である。この受動的な投資姿勢により、政府がIntelの経営に干渉するのではないかという市場の懸念は大きく和らいだ。
また、初級株の発行によって、Intelは米国政府からの投資資金を直接受け取ることが可能になる。現時点で大半の株主が関心を寄せているのは、Intelがいつ赤字から黒字へ転換できるか、そして先端プロセスの開発能力である。そのため、EPS(1株当たり利益)の希薄化につながったとしても、反対する株主はほとんどいないとみられる。米国政府がIntel株を取得する目的は長期的な戦略支援であり、緊急の救済措置ではない。加えて、今後数年間に固定配当を支払うことで財務負担が増し、設備投資に影響を及ぼすことを避けたい意向から、特別株ではなく普通株を選択した。
郭氏はさらに、米国政府の出資の最大の意義は、Intelに強力な「後ろ盾」を与え、「大きすぎて潰せない」という信念を市場に強める点にあると分析する。これはIntelの先端プロセス技術力そのものを高めるものではないが、市場が割引率を低めに設定し直し、株価純資産倍率を再評価することにつながる。その結果、Intelの企業価値の下限を引き上げ、株式市場でのパフォーマンス改善を通じて、間接的に経営の支援となる。
しかし、このモデルがTSMCやサムスンには当てはまらない理由について、郭明錤氏は次のように指摘している。半導体受託製造は国家レベルの戦略資源であり、もし外国政府が出資すれば、その最も重要な国家戦略資源の一部所有権を外国に委ねることになり、潜在的な政治リスクを招く。これは米国政府にとっても望ましい状況ではないという。
郭氏はさらに分析する。TSMCとサムスンは現時点で十分に利益を上げているため、普通株の新株発行によるEPS(1株当たり利益)の希薄化を懸念する。また、両社は米国半導体産業の再建を担う立場にはなく、むしろ政治的に中立であることが長期的な経営に資する、と述べている。
編集:柄澤南 (関連記事: 「TSMCへの無償支援は不適切、最先端チップ99%の台湾集中は危険」米商務長官:インテル補助金に株式譲渡条件 | 関連記事をもっと読む )
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