台湾では大規模リコールが正式に幕を閉じ、最終的に31件すべてが成立せず不発に終わった。だが民進党内部からは早くも反省と批判の声が上がっている。米国在住の教授で評論家としても知られる陳時奮氏(筆名・翁達瑞)は25日、フェイスブックに投稿し、賴清徳総統の発信には「決まり文句ばかりで心に響かない」と苦言を呈した。「演説や投稿を支える文字幕僚の責任もあるが、賴総統自身の言葉に対する感覚の鈍さも表れている」と指摘している。
陳氏は、賴総統の話し方は誠実で飾り気がないものの、どうしても人々の心を動かせないと分析する。その原因は「決まり文句の多用」にあるという。陳氏の説明によれば、ある文章から重要な単語を入れ替えても全体が成り立ってしまう表現は、感情がこもらず、聞く側にも届かない。結果、共感や感動が生まれないのだ。
具体例として陳氏が取り上げたのは、賴総統が24日、総統府で蔡英文前総統と会談した後にフェイスブックへ投稿した文章だ。本来は大事なメッセージとなるべき発言だが、そこに並ぶのは型通りの言い回しばかりだと陳氏は批判する。
その投稿には「リコールと国民投票は終了した。民主の価値は異なる声が聞かれ、より多くの共識が形成され、それが国の前進の原動力となるところにある」と記されていた。陳氏によれば、ここで重要なのは冒頭の「リコールと国民投票」だけで、その後の文章は置き換えても違和感がない。例えば「党政座談」「デモ行進」「立法院での採決」「与野党協議」などを当てはめても、文意は破綻しないという。つまり、何を語っても同じに見える「決まり文句」に終始しているというのだ。
陳氏は「このような痛みも喜びも伝わらない表現で、どうして人々の心を動かせるのか」と疑問を投げかける。そして「文字幕僚の責任はもちろんだが、賴総統自身がそうした言葉を使っても違和感を覚えないこと自体、言葉への感性が鈍い証拠だ」と指摘した。さらに「民進党は今、深刻な危機に直面している。だからこそ総統の言葉が人々を動かし、信頼を取り戻す必要がある。周囲も知恵を出し合い、賴清徳を真に強いリーダーに育てなければならない」と呼びかけた。
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