米トランプ大統領の象徴である「アメリカ・ファースト」経済政策が、より強硬で取引色の濃い形でワシントンに戻ってきた。26日、米商務長官ハワード・ルートニック氏がCNBCの経済番組《スクウォーク・ボックス》に出演し、衝撃的な証言を次々と明かした。
彼はインテルから110億ドル(約1兆6,000億円)の補助金を出す代わりに株式10%を政府が取得した交渉の内幕を語ったほか、台湾の半導体大手TSMC(台積電)に対しても直接電話をかけ、米国での投資を大幅に引き上げるよう圧力をかけたことを暴露。さらに国防総省がロッキード・マーチンのような軍需大手に出資する可能性に言及し、米国における「政府と企業の関係」を根底から覆す発想を示した。
ルートニック氏は番組で、まず前政権のバイデン氏による《CHIPS法》の補助金政策を「企業への施し(corporate welfare)」と断じた。
インテルの株式10%を「取った」
「バイデン政権はインテルに110億ドルを与えたが、何も見返りを得なかった」と述べた上で、「トランプ大統領と私は会議室でインテルのトップ(当時の会長リップブー・タン氏)にこう言った。『アメリカにとってもっと公平にしなければならない』」と交渉の経緯を語った。
そして結果は「我々はインテル株の10%を取得した。その価値はちょうど110億ドルに当たる」と説明。これにより、長年市場で囁かれていた「補助金と株式の抱き合わせ」が事実であることが確認された。米政府は単なる規制者から「株主」へと姿を変えつつある。
ロッキード・マーティンに政府出資?
この「政府株主」構想は半導体分野にとどまらない。国防産業について問われたルートニック氏は「ロッキード・マーティンの収益の97%は米政府から。彼らは事実上、政府の一部だ」と述べ、国防総省が株式取得を検討していることを示唆した。
「彼らは素晴らしい兵器を作っている。だが経済的な仕組みはどうなっているのか?」と問いかけたうえで、「この問題は国防長官と副長官が今検討している」と発言。米軍需複合体に巨大な衝撃をもたらす可能性をにおわせた。
TSMCへの「直接圧力」
ルートニック氏はインタビュー全体を通じて、トランプ政権の「強硬な取引型スタイル」とバイデン政権の「弱腰ぶり」を繰り返し対比した。彼は「真のビジネスマン大統領」であるトランプ氏と自分がいたからこそ、米国は最大の利益を勝ち取れたと強調する。
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その具体例として挙げたのが台湾の半導体大手TSMCだ。
「就任直後にTSMCの魏哲家CEOに電話をかけた。交渉の場で私はこう言った。『これは馬鹿げている。65億ドル(約9,500億円)の補助金は単なる企業への贈り物だ。もっとアメリカに見返りを出してもらわなければならない』」と証言。結果として、TSMCがホワイトハウスで発表した1,650億ドル(約24兆2,500億円)規模の米国投資は、自らの圧力による成果だと胸を張った。