台湾・新竹県長選の舞台裏 国民党実力者が鄭麗文主席に圧力

2025-11-25 12:50
鄭麗文氏(写真)は中国国民党の主席に就任したばかりで、2026年の台湾各地の県市長候補の指名問題に早くも直面している。(写真/劉偉宏撮影)
鄭麗文氏(写真)は中国国民党の主席に就任したばかりで、2026年の台湾各地の県市長候補の指名問題に早くも直面している。(写真/劉偉宏撮影)
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台湾・地方選挙において国民党は2018年から勢いを取り戻し、県市長ポストを6から15へと大幅に伸ばした。当時の党主席・吳敦義氏の選挙戦略が功を奏したとされる。台中市の盧秀燕氏、彰化県の王惠美氏、雲林県の張麗善氏、嘉義市の黄敏惠氏、宜蘭県の林姿妙氏、花蓮県の徐榛蔚氏、台東県の饒慶鈴氏の7人の女性首長が一斉に誕生し、地元では「七仙女(7人の有力女性首長)」と呼ばれた。また、新北市では侯友宜氏が朱立倫氏の後継として安定した行政運営を維持し、広い注目を集めた。そして象徴的存在となったのは、いわゆる“韓流”で国民党大勝の立役者となった高雄市長の韓國瑜氏である。
一方で報道の露出が最も少なかったのは新竹県長の楊文科氏だが、国民党にとって客家系住民が多い新竹県を守り切った功労者でもある。

2018年の国民党による新竹県長候補の指名プロセスは、まさに紆余曲折の連続だった。
当初、立委の林為洲氏、副県長の楊文科氏、県議会副議長の陳見賢氏、湖口郷長の林志華氏、竹東鎮長の徐兆璋氏の計5人が意欲を示していた。しかし、企業関係者の意見、地元政界の確執、世論調査など複数の要素を中央党部が総合判断し、途中で指名ルールを急きょ変更。最終的に楊文科氏を正式候補に決定した。楊氏はその後、韓國瑜氏の人気の波を追い風に選挙を制し、新竹県長に就任した。それから8年、楊氏の任期満了が迫る今年、国民党の新竹県長選びは再び混乱の兆しを見せている。これは、新任党主席・鄭麗文氏にとって、候補者調整という初めての大きな試練となる。

新竹縣長楊文科呼籲縣民、學校及企業,從源頭減少廚餘產生。(圖/新竹縣政府提供)
新竹県長の楊文科氏は今期で任期満了を迎える予定で、中国国民党による次期候補の指名をめぐり、再び混乱が生じるとの見方も出ている。(写真/新竹県政府提供)

客家の要衝・新竹県長 国民党は三つ巴の構図に

現在、国民党の新竹県長選びは三つ巴の様相を呈している。立法委員(国会議員)の林思銘氏と徐欣瑩氏の2人が意欲を示し、3人目の候補として浮上しているのは、現職の新竹県副県長で、国民党新竹県党部の主委を務める陳見賢氏だ。陳氏は、県議会の正副議長や竹北市民代表会主席など、地元の主要ポストを歴任してきた人物である。

三者のうち、地元関係者がまず名前を挙げるのは林思銘氏だ。ハイテク産業の集積地である新竹県の住民の趣向に合う学歴・経歴を持つとされる。東呉大学の法律学系を卒業後、明典法律事務所の主宰弁護士を務め、その専門性は広く知られている。政界入り後は地方議員として活動し、5期連続当選ののち、2020年に立法委員へ転身。2024年の選挙でも再選を果たし、国民党団書記長など党内の要職も務めてきた。

ただ、2025年に民進党が推し進めた大規模リコールでは、国民党の勢いが揺らぐ局面があった。林氏が2024年に当選した背景には、民進党系の票割れがあったからで、当時の候補者だった時代力量の王婉諭氏と民進党の曾聖凱氏の票を合算すれば、林氏の得票率(44.8%)を上回っていた。このため民進党陣営はリコール成立に大きな期待を寄せていた。

二段階の署名手続きが補完され、ようやく基準を満たしたものの、林氏は選挙区での活動を慎重に続け、強く支援してきた陳見賢氏に感謝を示し、「2026年の県長選は陳氏を支援する」と約束したとされる。こうした経緯から、林氏自身はリコールを乗り越えたとはいえ、県長選への態度は依然として不透明で、三者の中ではやや弱い立場にあるとみられている。

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