舞台裏》台湾・台中市長の盧秀燕氏、党主席選で揺れる判断 国民党内に不満渦巻く

2025-09-08 13:21
台中市長の盧秀燕氏(左)は国民党主席選に出馬しない姿勢を崩さず、党内に不満の声が広がっている。この状況は、侯友宜氏(右)の2024年総統選と同様の混乱を招く可能性がある。(写真/劉偉宏撮影)
台中市長の盧秀燕氏(左)は国民党主席選に出馬しない姿勢を崩さず、党内に不満の声が広がっている。この状況は、侯友宜氏(右)の2024年総統選と同様の混乱を招く可能性がある。(写真/劉偉宏撮影)
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台湾・国民党の党主席選挙は混迷を深めている。注目を集めていた台中市長の盧秀燕氏が出馬を見送ったうえ、現職の朱立倫主席も再選を固辞したことで、党内は空白状態となった。名乗りを上げたのは、立法委員の羅智強氏、前立委の鄭麗文氏、孫文学校総校長の張亜中氏、中常委の孫健萍氏、元彰化県長の卓伯源氏、前秘書長の張雅屏氏らだが、いずれも「国民党を担える人材とは言い難い」との見方が広がっている。そのため、前中広董事長の趙少康氏や前台大校長の管中閔氏の名前まで取り沙汰される始末だ。党内ではまた、副主席の連勝文氏が「党主席選は知名度稼ぎや募金の場ではなく、私怨を晴らす場でもない。個人の目的のためなら“本当に私の時間を無駄にしないでほしい”」と発言したことに、多くが同調している。

さらに、傅崑萁系の中常委・陳俗蓉氏の働きかけで、常務委員会は「党主席選の立候補受付期間を2週間延長」と決定。当初9月4~5日だった受付は9月15~19日へとずれ込んだ。党内では「裏に思惑があるのでは」との憶測もあったが、実際の理由は大規模リコール運動への対応で地方党員が忙しく、党籍データの入力作業が間に合わなかったためとされる。とはいえ、主席選びが混迷する中で、盧秀燕氏やその陣営への不満の声が日増しに高まっている。

20250826-国民党主席朱立倫出席2025模擬立法院開幕式。(陳品佑撮影)
朱立倫氏(左端)は退任の決意を表明しているが、国民党主席選への立候補者は多いものの、その力量に疑問が呈されている。(写真/陳品佑撮影)

盧秀燕氏はなぜ党主席を引き受けないのか?「自分が総統候補になると確信しているのか」との疑念も

盧氏が正式に不出馬を表明すると、表向きは冷静を装っていた支持派からも「なぜ大局を担わないのか」という不満が噴出した。最大の懸念は「盧氏が党主席を務めなければ、2024年大統領選の二の舞になる」というものだ。本土派の重鎮は「結末は侯友宜氏と同じになる」と語り、実際に侯氏を支援した経験のある陣営関係者も「2023年と同じシナリオを繰り返している」と指摘するなど、不信感が隠せない。

《風傳媒》は地方で支持者や党員の反応を取材すると、「盧氏が党主席を辞退したのは残念だ」とする声は多いが、彼女を直接批判するのではなく「またしても国民党は大勝後に内輪揉めを始めた」と党内の「宮廷文化」を批判する声が目立った。

一方で若手世代の民代からは「理解できない」という率直な意見も少なくない。新北市のある議員は「盧氏のやり方は侯友宜氏と何が違うのか」と切り捨てた。また別の議員は「盧氏が主席を辞退したのは、2028年の総統候補は自分だと見込んでいるからだ」と指摘しつつも、「本当にそうなるのか?」と疑問を呈した。実際、2028年総統選では立法院長の韓国瑜氏が候補となる可能性もあるほか、台北市長の蔣萬安氏が市長を一期で退き、総統選に挑む選択肢も視野に入るとの見方もある。 (関連記事: 舞台裏》台湾・台中市長の盧秀燕氏、国民党主席選挙には不出馬 党内外の勧誘も一蹴 関連記事をもっと読む

20231028-侯友宜高雄造勢feat.盧秀燕、韓国瑜(図/李東陞撮影)
国民党内では盧秀燕氏への不満が高まり、今後の党運営への懸念が強まっている。(写真/李東陞撮影)

張亜中氏の存在感 盧秀燕氏は中堅・若手の擁立を模索?

北部の国民党系の強硬保守派(いわゆる「深藍」)の選挙区を地盤とするある民代は「支持者との交流の中で、張亜中氏への期待は依然として根強い」と指摘する。張氏は深藍層を確実に取り込むだろうし、今は大規模リコールの勝利で浮かれていても、党主席選が本格化すれば「盧秀燕氏は責任を回避している」と攻撃し、深藍支持を結集する可能性があるという。国民党のいびつな党員構造を踏まえると、張氏の影響力は軽視できないとの見方が出ている。

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