論評:台中市長・盧秀燕がカギを握る 国民党リーダー争いの行方

2025-08-28 15:41
大規模リコールの後、盧秀燕台中市長は党主席選への出馬を明言せず、国民党の党首レースは依然として混迷が続いている。(資料写真/柯承惠撮影)
大規模リコールの後、盧秀燕台中市長は党主席選への出馬を明言せず、国民党の党首レースは依然として混迷が続いている。(資料写真/柯承惠撮影)
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台湾で行われた大規模リコール運動が連敗に終わり、民進党内部では「敗因探し」と「責任の押し付け合い」が続いている。まるで敗北は自分たちのせいではないと言わんばかりで、リコール主導派が使っていた自虐的な言葉「我々は負けたのではない、まだ勝っていないだけ」を体現するかのような状況だ。しかし、与党・民進党の総統である頼清徳氏は本当に安泰なのだろうか。8月23日の記者会見で見せた彼の表情は、その不安を物語っていた。

むしろ奇妙なのは、惨敗したはずの民進党よりも、野党・国民党の方が動揺を強めている点である。特に注目を浴びているのが、台中市長で「お母さん市長」と呼ばれる盧秀燕氏の一言だ。「最も苦しい時には母親は家に留まる」という発言が、国民党内の後継体制に大きな波紋を広げた。

「盧秀燕待望論」、かつての侯友宜の既視感

盧秀燕氏は、2028年総統選における国民党の最有力候補と目されている。党主席・朱立倫氏が続投を断念したことで、次期党首の本命とも見なされてきた。しかし盧氏は「党主席選には出ない」と表明。党内を驚かせただけでなく、党主席選の登記期限が迫るなか、有力議員たちが右往左往する事態となった。秘書長の黄健庭氏は最近のラジオ番組で「朱氏はいまも盧氏の出馬を説得している」と語ったが、これは国民党で繰り返されてきた「お決まりの茶番劇」とも言える。外部に「出馬か?」との期待を流すのは周囲ばかりで、本人が立候補を示唆したことは一度もなく、舞台に足を踏み入れる気配すら見せていないのだ。

この「盧秀燕待望論」は、多くの人に既視感を呼び起こす。かつて侯友宜氏(新北市長)が一気に党の救世主に押し上げられた時と同じ構図だからだ。韓国瑜氏(前高雄市長)がリコールで失脚した後、国民党は看板政治家を失い、求心力を欠いていた。ところが2022年末の統一地方選で、侯氏が新北市長選に圧勝。しかも得票差は2018年の対蘇貞昌戦よりもさらに広がり、党内で「次期総統候補」の最有力と目される存在に一気に浮上した。

国民党支持層はこの時、口々に「侯友宜なら必ず勝てる」と盛り上がった。侯氏のスローガン「好好做代誌」(台湾語で「しっかり仕事をする」の意)がそのまま「総統府への道」に通じると信じられ、当の本人も「総統夢」を現実視するようになった。 (関連記事: 台湾・盧秀燕台中市長「国民党主席選には不出馬」 関税ショックで地元経済守る姿勢強調 関連記事をもっと読む

しかしその前段階には、国民党の「漢子・燕子・禿子」連携という図式があった。「漢子」は侯友宜氏(男気の「漢」から)、 「燕子」は盧秀燕氏、「禿子」は韓国瑜氏を指す。だが侯氏は市長当選後市長当選後に「市政専念」を理由に政党対決の舞台から退き、まるで「何事にも巻き込まれない立場」を自ら選んだかのようだった。

特に象徴的だったのが2021年の「四大公投(4大国民投票)」である。当時、民進党が核四原発再稼働などを争点に「政党対決」の構図をつくり出したが、その原発が立地する新北市の市長である侯氏は沈黙を貫いた。投票直前には「平穏な日々を願う」と題した投稿をフェイスブックに書き込み、支持層の失望を招いたのである。

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