台湾は現在、米国が発動した20%関税への対応を迫られ、ワシントンとの交渉を続けている。台湾側は、より多くの免除措置や税率引き下げを勝ち取り、自国経済と産業への打撃を最小限に抑えたい考えだ。すでに英フィナンシャル・タイムズが米台協議の一部内容を報じていたが、今回はロイター通信が複数の関係者の証言として、トランプ政権が台湾に巨額の対米投資を要求するだけでなく、半導体などの先端分野で「米国人技術者の育成支援」まで求めていると伝えた。
ロイターは関係者5人の話として、トランプ政権が台湾と交渉中の協議案には、台湾側による新たな投資コミットメントに加え、TSMC を含む主要企業に対し、米国での半導体製造や先端産業分野で「米国人労働者の訓練」を担わせる内容が盛り込まれていると報じた。協議が実現すれば、世界最大のファウンドリーであるTSMCをはじめ、台湾のキーテク企業は追加投資を行い、社員を派遣して米国内の事業規模を拡大しながら、ワシントンの要請に沿って本土労働者の育成にも関わることになる。
Exclusive: President Trump's administration is negotiating a deal that could commit Taiwan to fresh investment and training of US workers in semiconductor manufacturing and other advanced industrieshttps://t.co/7Cz6sfm34P
— Reuters (@Reuters)November 26, 2025
関係者によると、台湾の対米投資総額は、日本5,500億ドル(約85兆円)、韓国3,500億ドル(約54兆円)よりはやや少ない見込みだという。しかし台湾は投資とは別に、自国が培ってきた半導体産業集積のノウハウを活かし、「サイエンスパーク」型のインフラ整備モデルを米国に輸出し、構築を支援する方向で協力を拡大するとみられる。
行政院長・卓栄泰氏は、米台双方が現在「細部の確認段階」にあると述べたうえで、「科学園区をこの規模で整備・運営できる国は他にない。台湾には概念・実務・実績のすべてがある」と自信を示した。台湾は1980年代からサイエンスパークを整備し、シームレスな供給網を築いてきた歴史がある。台湾の貿易交渉オフィスも、今後も「台湾モデル」に基づき、米国と供給網協力の可能性を協議するとしている。

米国の人材不足
実際、この方向性はトランプ大統領の姿勢と一致する。大統領は先日のサウジ投資フォーラムで「台湾の友人たちと巨大工場を建てるとしても、米国人は教えられないとできないことばかりだ」と語っていた。
実態としても、TSMC の米国進出は「人手不足」に悩まされ続けてきた。TSMC の魏哲家会長によると、熟練工の不足とサプライチェーンの空白により、アリゾナ新工場の建設期間は台湾の「少なくとも2倍」に膨らんでいる。スケジュール遅延を避けるため、TSMC はテキサスから全作業員の半数をアリゾナに再配置せざるを得ず、その結果、建設コストは大幅に増えた。
TSMCに加え、フォックスコンの劉揚偉会長も米国での「サイエンスパーク型開発」に前向きで、米国および他国との協力を模索しているとし、これが米台交渉を進める「誘因」になる可能性があると述べた。

また、APEC代表として米国を訪れた林信義氏は、韓国での会議期間中にスコット・ベッセント米財務長官と供給網・半導体問題について協議し、「ベッセント長官は台湾が半導体クラスターを作り上げた経験に強い関心を示した」と語った。
一方、TSMC はアリゾナへの総投資額1650億ドル(約25兆6,000億円)を予定し、米政権が積極的に推進する「米国製造」政策の象徴にもなっている。こうした状況のなか台湾政府は、TSMC を含む主要企業が最先端技術と研究開発の中核を「台湾に残す」ことが極めて重要だと繰り返し強調している。
編集:田中佳奈 (関連記事: TSMC米アリゾナ工場、利益99%減の衝撃 「ガス停止」事故が原因か | 関連記事をもっと読む )
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