台湾問題を巡る日米中の緊張 高市首相とトランプ氏通話が示す2つのシナリオ

トランプ米大統領(左)と高市早苗首相(右)は25日、電話会談を行った。(写真/AP通信)
トランプ米大統領(左)と高市早苗首相(右)は25日、電話会談を行った。(写真/AP通信)

「台湾有事」をめぐり日中関係が急速に悪化する中、日本の高市早苗首相は25日、ドナルド・トランプ米大統領と電話会談を行い、習近平中国国家主席とのやり取りについても意見を交わした。

この電話会談が強い注目を集めているのは、そのタイミングが極めて微妙であったためだ。というのも、その直前、中国の習近平国家主席は異例とも言える形でトランプ大統領に直接電話をかけ、「台湾の中国への回帰は戦後国際秩序の一部である」と改めて強調していたからである。

これについて、米国在住の政治学者・翁履中氏は、自身のフェイスブック上で分析を行い、この電話会談は決して単なる「儀礼的な通話」ではなく、「補講的なコミュニケーション」に近い性格のものだと指摘した。もし習近平氏の一本の電話を受けて、トランプ氏が高市氏に「注意」を促すような行動に出たとすれば、そこには「表に見える対立関係」を超えた、米中首脳間の暗黙の了解や相互作用が存在する可能性を否定できないという。

最近、台湾問題をめぐって日中関係は急速に冷え込んでいる。高市首相は、中国が台湾に対して武力行使に踏み切った場合、日本が「存立危機事態」の枠組みのもとで集団的自衛権を行使する可能性があると公に発言し、これに北京は激しく反発した。中国政府は公式声明で日本を非難しただけでなく、外交官がSNS上で過激な表現を用いた発信を行うなど、対日世論戦を展開した。さらに、中国国民に対する訪日自粛を呼びかけるなど、事実上の「ソフト制裁」にも踏み切った。

こうした状況下で、トランプ氏が一方では習近平氏とウクライナ情勢および台湾問題について協議し、他方で高市首相に自ら電話をかけたことから、東京政界および国際社会では、「同盟国への支持の表明」なのか、それとも「日本への自制要請」なのか、さまざまな憶測が飛び交っている。ただし、現時点で日米双方とも通話の詳細については明らかにしておらず、公式な説明は極めて限定的である。

これについて翁履中氏は、外交のタイミングに着目すれば、トランプ氏が習近平氏との通話直後に高市氏へ連絡を取ったこと自体が、単なる形式的な挨拶電話である可能性は低いと分析する。すなわち、その目的は、「米国は日本の側に立つ」という明確なメッセージを伝えるためか、あるいは「これ以上踏み込み過ぎないように」という牽制の意図を含んでいたか、いずれかであると指摘した。

高市首相とトランプ氏の電話会談、2つのシナリオが示す異なる結末

翁履中氏によれば、もしこの電話が日本への全面的な支持表明であった場合、それは習近平氏が台湾問題を「戦後秩序」に結びつけて日本に事実上のレッドラインを引いた直後に、トランプ氏が日本側に「追い風」を送る構図となり、北京に対して強烈な挑戦状を突きつけることになる。 (関連記事: トランプ氏と電話会談後、日本の姿勢に変化は?高市首相「台湾有事」は撤回せず、「台湾の法的地位は認定せず」と強調 関連記事をもっと読む

しかし、トランプ氏は現在、4月の訪中を視野に入れ、習近平氏との「再会談」の雰囲気を慎重に醸成している段階にある。そのような状況下で、中国の面子を真正面から潰すような行動を取る可能性は、必ずしも高くないという。

最新ニュース
トランプ氏と電話会談後、日本の姿勢に変化は?高市首相「台湾有事」は撤回せず、「台湾の法的地位は認定せず」と強調
米中首脳が電話会談 台湾総統府「台湾は中華人民共和国に属さない」明言
第63回ミス・インターナショナル2025、11月27日開幕へ 世界80の代表が「真の美」競う
TSMC、元幹部を正式提訴 インテル転職で「営業秘密流出の恐れ」
頼清徳総統、トランプ氏に謝意 米紙で「史上最大の国防投資」宣言 GDP比5%へ、「台湾版アイアンドーム」も加速
論評:「台湾回帰」は戦後秩序の一部 中国が語り始めた新たな国際法戦
舞台裏》民進党が最も警戒する男・韓国瑜 2028年総統選出馬観測が国民党内で再燃
台湾野党・民衆党の黄国昌主席が訪日 自民・古屋圭司氏、高市首相と面会
舞台裏》台湾・2028年総統選を前に主役交代か 国民党・盧秀燕氏後退、韓国瑜氏が再浮上
TSMC米アリゾナ工場、利益99%減の衝撃 「ガス停止」事故が原因か
舞台裏》中国、台湾立法委員・沈伯洋氏を「国家分裂罪」で立件 インフルエンサー2人に懸賞通告、「一国一治」始動か
トランプ氏、NVIDIAの対中H200輸出解禁を検討 米商務長官が明言「決断は大統領の机上に」 米中「AI冷戦」に転機か
Nothing、Android 16対応「Nothing OS 4.0」正式配信 生成AI機能とGlyph強化で操作性を大幅刷新
大谷翔平選手がWBC出場を正式表明 「日本を代表して再びプレーできることを嬉しく思います」
ファミリーマート、「おいしさ、新次元へ。」キャンペーン好調 大谷翔平選手の活躍と連動し、おむすび売上が前年比140%に 新商品2種類も発売
小泉防衛相、与那国島視察 中国は日清戦争ゆかりの地で実弾演習
米中首脳電話会談で浮き彫りになった「温度差」 習近平は台湾を連呼、トランプは大豆とフェンタニのみ
習近平氏「台湾回帰は戦後秩序の一部」 台湾・卓栄泰行政院長「2300万人に『回帰』の選択肢はない」と反論
高市首相、トランプ大統領と電話会談 「台湾有事」は協議されたのか
米ウクライナ停戦協議が大きく前進 汚職疑惑と前線劣勢の狭間で、ゼレンスキー氏はどこまで拒めるのか
舞台裏》台湾・新竹県長選「三つ巴」に突入 国民党内で林思銘・徐欣瑩・陳見賢が激突、党主席・鄭麗文に初の大試練
シリコンバレーの巨人がついに覚醒 Gemini 3が競合を圧倒し、時価総額3.6兆ドルを回復 Googleの成功秘話
TSMC米国工場の利益暴落「台湾ドル42億から4,000万に」、米メディア「米国製造に冷水」と指摘
中国「第十五次五カ年計画」は経済再建と科技自立が核心 専門家「台湾の最大リスクは軍事より供給網再編」
東京駅でクリスマスイベント開幕 謎解き企画「東京駅サンタ謎」や111周年記念コンサートを開催
米中は「対等」の時代へ?トランプ関税戦争が招いた歴史的転換点を元国家安全保障会議幹部が分析
論評:ウクライナ和平案と台湾の「国民安全ガイド」 頼清徳氏の戦争認識を問う
李忠謙氏コラム:台湾有事の際、日本は自衛隊を投入するのか 専門家が見る現実的シナリオ
中国が日中間の12路線を全面運休 欠航率2割超えで、日本は再び「経済寒冬」に陥るのか?
高市首相の「台湾有事論」に反発 習近平氏がトランプ氏と電話会談「台湾の中国回帰は戦後秩序」と伝達
ウクライナ「領土割譲停戦」の次は台湾か 新党副主席が読む米中首脳会談と台湾分割シナリオ
張鈞凱コラム:高市首相の「台湾有事」発言は何を意味するのか 日中対立の陰で進む「日本政治の右傾化」
舞台裏》台湾・柯文哲前台北市長の2か月の沈黙 AIと何を探り、何を構想していたのか
舞台裏》台湾に浸透する中国スパイ網 大企業から国軍まで狙われた工作の実像
高市早苗氏の「台湾有事」発言に抗議 沖縄出身の女子学生が訴え「沖縄を再び戦場にしないで」
中国、「敵国条項」で日本を牽制 台湾有事発言に強硬反応、外務省は即座に反論
杜宗熹のコラム:米国は「台湾有事」に冷淡?トランプ政権、日中対立よりウクライナ停戦とベネズエラ出兵を優先
中国、日中韓首脳会談の調整を拒否 高市首相発言に反発し国連に書簡提出 緊張一段と高まる
「欧州は現在、台湾を歓迎している」林佳龍氏、台欧関係の進展における3つの鍵を分析「不敗のために必要な条件」
「PAPER THEATER」10周年記念、人気クリエイター・なつめさんちと初コラボ 150個限定モデルが先行発売へ
日中対立はいつ終息するのか 東大研究者が指摘「高市首相は撤回せず、薛剣総領事も追放されない」
高市首相の台湾有事発言に中国が「最強硬反応」 エコノミスト「日中は後退できないチキンゲームに」
中国、高市首相を名指し批判 「台湾に武力介入なら自衛権行使」と国連書簡で警告
サンリオキャラ冬の装いで勢ぞろい Happyくじ「ホリデーコレクション」12月6日発売
【護国神山は空洞化するのか(8)】TSMCは海外に出ても台湾を守れるのか 米65億ドル補助で資本参加を要求、台湾長年の優遇策は水の泡に?
【護国神山は空洞化するのか(7)】TSMCと正面勝負はしない 日本国家プロジェクトRapidusの「アップルもエヌビディアも狙わない」戦略
メモリ価格高騰の終焉か?Acer会長が「中国企業が動く」と発言、専門家は近日の価格逆転を警戒