舞台裏》台湾・国民党が「親中路線」へ急旋回 鄭麗文新主席の下で支持率上昇、一方で盧秀燕市長は失速

2025-11-27 11:11
鄭麗文氏が当選した後、国民党主席選を静観してきた台中市長・盧秀燕氏。2028年総統選に向けた求心力は下り坂にある。(写真/陳品佑撮影)
鄭麗文氏が当選した後、国民党主席選を静観してきた台中市長・盧秀燕氏。2028年総統選に向けた求心力は下り坂にある。(写真/陳品佑撮影)
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台湾・国民党の新任党主席・鄭麗文氏は就任から1か月足らずだが、国共内戦期の共産党スパイとされる呉石への参拝など物議を醸す行動が続く一方、台湾民意基金会が最近発表した最新世論調査では、国民党の政党支持率は低下するどころか上昇し、10月比で3.9ポイント増となった。これは鄭氏にとって追い風であり、党内の調整期間を乗り切り党権を固めるうえで大きな助けとなっている。他方、台中市長の盧秀燕氏は、台中市で発生したアフリカ豚熱(ASF)問題への対応が問われ、市政の「ネジが緩んでいる」との批判も浮上。党内外で支持は明確に低下し、2028年総統選への道筋にも影が差し、対立する民進党側でさえ「盧氏はもう終わったのではないか」と見る声が出ている。

国民党の有力者は、鄭麗文氏の就任後、同党の対中路線や言説が、前任の江啟臣氏や朱立倫氏の時期の「親米寄り」から「親中寄り」へと大きく転換しただけでなく、党内の空気そのものが「180度変わった」と明かす。2025年10月18日の党主席選挙前、党内では事実上「一強状態」が成立しており、大多数が盧秀燕氏こそ国民党陣営の「共主」であり、2028年総統選の唯一の候補だと見なしていた。しかし党主席選後、盧氏の党内での信望は急落し、多くの同志から批判の標的となった。国民党陣営の「共主」としての地位は揺らぎ、2028年総統選でも独走を続けるはずだった構図に、突然潜在的な競争相手が現れ始めた。

20251112-国民党主席鄭麗文12日于中常会发表发言。(颜麟宇摄)
国民党主席・鄭麗文氏は当選直後の発言が波紋を広げた。(写真/顏麟宇撮影)

党主席選への「不関与」が転機に 鄭麗文氏の勝利で盧秀燕氏の勢いは急降下

国民党内の空気が一変した経緯には一定の筋道があるものの、その変化はあまりにも急で、盧秀燕氏には予想外であった。盧氏を支持してきた陣営にとっても理解しがたく、受け入れ難い状況だという。選挙戦を熟知する国民党の元党務幹部は、わずか1〜2か月の間で盧秀燕氏の党内評価が「天から地へ」と転落したと指摘し、これは過去30年の国民党ではほとんど例のない事態だと語る。7〜8月の大規模リコール投票では、盧氏は地元・台中市で圧勝しただけでなく、全台湾で高い動員力を見せ、国民党が立法院議席を失わずに済んだのも盧氏の力によるところが大きかった。あのときの盧氏の声望は党内で群を抜いており、比較できる人物はいなかった。

この元幹部によれば、表向き盧氏の「最大の誤り」とされるのは党主席選への不出馬で、これが党内の支持者に深い失望を与え、「肝心な局面で党を背負えない人物が、どうして2028年に党を率いて勝てるのか」という疑念を招いた。しかし実際には、盧氏が党主席選に出馬しなかったこと自体は致命傷とまでは言えず、「総統選に向け求心力を温存する」という盧氏の考えは党内でも一定の理解を得ていた。盧氏が明確に支持する代理人候補を立て、その理由を党員に説明していれば、多くの党員は2026年・2028年の勝利のためとして受け入れた可能性がある、と元幹部は述べている。

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