舞台裏》中国、台湾立法委員・沈伯洋氏を「国家分裂罪」で立件 インフルエンサー2人に懸賞通告、「一国一治」始動か

2025-11-26 11:30
中国大陸は、民進党所属の立法委員・沈伯洋氏に対し『国家分裂罪』で立件捜査を開始したと発表した。この動きは、台湾を中国の「法治」体制に組み込む意図を示すものとされ、「一国一治」が事実上始動したとの見方も出ている。写真は中国共産党第19期中央委員会第4回全体会議(四中全会)の模様。(写真/新華社提供)
中国大陸は、民進党所属の立法委員・沈伯洋氏に対し『国家分裂罪』で立件捜査を開始したと発表した。この動きは、台湾を中国の「法治」体制に組み込む意図を示すものとされ、「一国一治」が事実上始動したとの見方も出ている。写真は中国共産党第19期中央委員会第4回全体会議(四中全会)の模様。(写真/新華社提供)
目次

中国の公安当局が、民進党所属の立法委員・沈伯洋氏について「国家分裂罪」で立件・捜査を開始したと発表し、その後、台湾のネットインフルエンサーである「閩南狼(本名:陳柏源)」および「八炯(本名:温子渝)」に対して懸賞通告を出したことで、「赤い指名手配書」をめぐる波紋がさらに拡大している。

『風傳媒』の取材によると、北京が沈伯洋氏を標的にした背景には、「台湾独立分裂活動」に対する捜査のモデルケースを設ける意図があり、捜査機関として「重慶市公安局」を選定したことにも、特別な意味があるという。

さらに注目すべき点として、中国が自らの「法治」システムを台湾に適用し、「一国一治」の枠組みを強引に構築しようとしている点が挙げられる。台湾には、すでに「一国二制度」の余地すら残されていないのではないかという懸念も浮上している。

重慶市公安局は10月末に警情通報を発表し、沈伯洋氏が「台湾独立」分裂組織である「黒熊学院」を発起・設立するなどして国家分裂犯罪活動に従事しているとして、『中華人民共和国刑法』および「台湾独立頑固分子による国家分裂・扇動犯罪を法により取り締まることに関する意見(懲独22条)」などの関連規定に基づき、沈氏を国家分裂罪で立件・捜査し、刑事責任を追及すると発表した。

20251118-立委沈伯洋18 日出席民進黨立院黨團「藍白又爆衝修法程序正義全崩壊」記者会見。(柯承惠攝)
中国当局は、「中華人民共和国刑法」などの規定に基づき、重慶市公安局が沈伯洋氏に対する立件捜査を担当すると発表した。(写真/柯承惠撮影)

沈伯洋氏に続き、中国福建省泉州市公安局は11月中旬、台湾のインフルエンサーである「八炯(本名:温子渝)」および「閩南狼(本名:陳柏源)」に関する犯罪情報の提供を求める懸賞公告を発表した。公安当局に協力して容疑者の拘束に貢献した人物には、人民元5万元から25万元(約20万〜100万円)の報奨金が支払われるという。

沈氏に続き、北京は八炯氏、閩南狼氏に対しても矛先を向けた。北京の事情に詳しい関係者は『風傳媒』に対し、今回の動きの核心について次のように語った。

「重慶市公安局の警情通報には異例にも『中華人民共和国刑法』に基づいて捜査を行い、『刑事責任を追及する』と明記されている。これはすなわち、『中華人民共和国刑法』が台湾地域に直接適用されると、初めて公式に宣言されたことを意味する。これまで同法は、『一国二制度』下の香港やマカオに対してすら、直接適用されてこなかった。香港とマカオでは、それぞれ国家安全法によって国家分裂行為を規制してきた」

「いまや中華人民共和国刑法が台湾に適用されるということは、中国の『法治』が台湾にまで延伸されたことを意味しており、台湾は事実上『一国一治』の枠組みに組み込まれたのだ」

なぜ重慶市公安局が沈伯洋氏の調査を担当するのか

今回、沈伯洋氏の立件捜査を担当したのが重慶市公安局であることに、外部では疑問の声も上がっている。なぜ北京でもなく、台湾に近い福建でもなく、重慶なのかという点である。 (関連記事: 台湾・前民進党主席許信良氏が語る両岸の知られざる内幕 習近平氏は10年前に蔡英文氏との会談を希望、中国は民主化へ向かうか 関連記事をもっと読む

前出の関係者は、『風傳媒』に対し、中国の刑事訴訟法において、捜査機関は原則として被疑者の所在地、あるいは犯罪行為地を管轄すると説明した。しかし、沈氏が関与するとされる「国家分裂罪」は国家安全に関わる案件であり、越境的な管理が必要となる。

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