台湾では2028年の総統選が正式に動き出す前から、各陣営の候補が徐々に輪郭を見せ始めている。民進党はライバル陣営の動きを注視しており、国民党では当初有力視されていた盧秀燕・台中市長の勢いが鈍り、立法院長の韓国瑜氏が再び存在感を高めつつある。特徴的なのは、2028年の国民党陣営の布陣が予想以上に早く進んでいる点だ。しかも「藍白合(国民党と民衆党の連携)」が前提になる可能性が高いことから、民進党内では頼清徳総統の再選に悲観的な空気すら広がっている。
国民党主席・鄭麗文氏は11月20日、立法院長の韓国瑜氏を表敬訪問した。鄭氏は会談後、フェイスブックに「党務と情勢について深く意見交換した」と投稿。中央党部が韓氏の「最も強い後ろ盾になる」と強調し、共闘姿勢を示した。
投稿ではさらに、台北が冷たい雨に包まれる日だったにもかかわらず、「韓氏のユーモアと温かさは春風のようだった」と記し、励ましへの感謝とともに「共に努力し、遠くまで進もう」と呼びかけた。
韓国瑜氏は10月10日の国慶大会で歌手・費玉清氏が歌う「国恩家慶」を披露し、「台湾海峡で戦争を起こしてはならない」と強調。政党間の果てしない対立をやめるよう訴えた。また、台風被害後に復旧作業で活躍した「シャベルマン」ボランティアを例に挙げ、民間の団結力を称賛。さらに「三つの見えないせき止め湖」を引き合いに頼政権を批判し、民進党から「国慶大会を政治攻撃に利用した」と反発を受けた。

盧秀燕氏の評価が急落 「全国を率いる器ではない」との見方も
2028年総統選をめぐっては、国民党内部での力学や地方の行政成績が改めて検証され、盧秀燕氏の出馬の可能性は急速に低下している。民進党関係者の一人は、「盧氏が全国レベルの課題を主導する力に欠けること」が最大の弱点だと分析する。
中央・地方の軋轢、エネルギー政策、経済安全保障など国家レベルの課題に対し、盧氏は慎重姿勢を取り続け、距離を置く場面も多かった。その結果、全国区のリーダーというより「地元に根ざしたママ市長」の印象が強く残る形となった。
さらに、2025年の国民党主席選挙では立場を明確にせず「主導権を握れない政治家」と見なされたほか、台中市がアフリカ豚熱対策で中央から名指しされ苦境に立たされたことで、堅実な施政イメージにも傷がついた。こうした要因が重なり、盧氏の総統選出馬は厳しいとの見方が強まっている。ただし、国民党内で候補者選びが進む一方、民進党側は盧秀燕氏の潜在的な可能性を完全には排除していない。 (関連記事: 舞台裏》民進党が最も警戒する男・韓国瑜 2028年総統選出馬観測が国民党内で再燃 | 関連記事をもっと読む )

声望は国民党陣営で依然突出 民進党が最も警戒するのは韓国瑜氏
一方、韓国瑜氏の政治的エネルギーと動員力は時間が経っても衰えていない。立法院長として国会攻防のペースを掌握し、露出度も高いことから、その支持は国民党内部で安定的に維持されている。外部では「立法院長が総統選に出れば職務放棄ではないか」との懸念もあるが、民進党幹部によれば、比例代表で当選した立法委員と、かつて地方自治体を率いた高雄市長とでは求められる責任の性質が異なるため、同じ批判の力は働きにくいという。加えて、韓氏は言葉巧みで、ひとたび出馬の意向を示せば、国民党の地盤は他候補よりも早くまとまり始めるだろうとの見方が強い。




















































