トランプ氏と電話会談後、日本の姿勢に変化は?高市首相「台湾有事」は撤回せず、「台湾の法的地位は認定せず」と強調

高市早苗首相。(AP通信)
高市早苗首相。(AP通信)

高市早苗首相は26日、就任後初となる「党首討論」に臨み、衆議院予算委員会で立憲民主党代表の野田佳彦氏からの質疑に応じ、「台湾有事」や「存立危機事態」といった敏感なテーマについて改めて論戦を交わした。高市首相は「自身はあくまで具体的な想定に受動的に答えたに過ぎない」と述べ、発言を撤回する意思がないことを示す一方で、「サンフランシスコ平和条約に基づき、日本は台湾に対するすべての権利を放棄しており、台湾の法的地位を認定する立場にない」と強調した。これが、トランプ米大統領との電話会談後に示された、高市首相の台湾問題に関する最新の立場である。

26日の党首討論の焦点は、高市首相が7日に衆議院予算委員会で行った答弁に集中した。当時、高市首相は、岡田克也衆議員から「中国が台湾海峡を封鎖した場合」について問われ、「軍艦の出動や武力行使を伴う事態であれば、いかなる場合でも『存立危機事態』に該当し得る」と述べた。これに対し、中国側は直ちに強く反発し、「内政への粗暴な干渉だ」と警告するとともに、中国国民に対して「日本への渡航を当面控えるよう」呼びかけた。『朝日新聞』は、この動きが日本の観光業にも影響を与えていると報じている。

26日の審議では、元首相である野田佳彦氏が高市首相に対し、「日中関係が悪化したことについて、どのような責任を感じているのか」と質した。

2025年11月21日、東京の抗議者が首相官邸外で高市早苗の「台湾有事」発言に反対する抗議を行った。しかし、台湾の主権と国際正義に声を上げるデモ参加者もいた。(AP)
   2025年11月21日、東京の首相官邸前では高市早苗氏の「台湾有事」発言に抗議する声が上がる一方、台湾の主権や国際的な正義を訴える参加者の姿も見られた。(写真/AP通信)

これに対し、高市首相は「責任」という言葉に直接言及する形での謝罪は行わなかった。そのうえで、「質問の中で『台湾有事』という枠組みが設定され、さらに『海上交通線の封鎖』という具体的な想定が示された。私としては、細部に踏み込む意図はなかったが、政府の従来答弁をそのまま繰り返すだけでは、予算委員会の審議そのものが成り立たなくなる。具体的な事例を問われた以上、誠実に答える必要があった」と説明した。

また高市首相は、「政府としての統一見解は25日に閣議で確認されており、今回の答弁は従来の政府見解を完全に踏襲したものである。見直しや修正の必要はないとの判断が示された」と強調した。加えて、台湾の法的地位については、外務省の従来方針に立ち返る形で、「日本政府は台湾と非政府間の実務関係を維持している。サンフランシスコ平和条約により、日本は台湾に対するすべての権利を放棄しており、台湾の法的地位を認定する立場にない」と改めて述べた。

​【ニュース補足】サンフランシスコ平和条約とは

正式名称は『日本国との平和条約Treaty of Peace with Japan)』で、第二次世界大戦で敗戦した日本と、当時の49か国の代表が1951年9月8日に米国サンフランシスコで署名し、1952年4月28日に発効した。条約の目的は、日本の戦後の国際的地位を確立し、戦争責任に関する法的問題を整理することにあった。条約では、日本が朝鮮の独立を承認し、台湾、澎湖諸島、千島列島、南樺太、南沙諸島および西沙諸島に対するすべての権利と請求権を放棄することが明記されている。

2025年11月21日、東京の抗議者が首相官邸外で高市早苗の「台湾有事」発言に反対する抗議を行った。(AP)
2025年11月21日、東京の首相官邸前で高市早苗氏の「台湾有事」発言に抗議する市民ら。(写真/AP通信)

一方、九州大学の憲法学者・南野森教授は『朝日新聞』に対し、本来であれば高市首相が、自身の発言について一定の反省や修正、あるいは撤回を行うことを期待していたが、結果として「大きく失望した」と語った。

南野氏によれば、7日の「台湾有事」を巡る高市首相の答弁は、字面通りに受け取れば「誤解を招きやすい表現」であり、説明が不十分であった部分や、表現が明確でない箇所が存在するという。全面的に答弁を撤回する必要まではないものの、少なくとも「誤解を与えかねない内容が含まれていたこと」を率直に認めることができていれば、それこそが日中関係の正常化を目指すうえで有効な一手になり得たと指摘する。

高市首相の26日の答弁について、南野氏は「日中関係を改善する好機を逃したように感じる」と述べた。

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編集:田中佳奈

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