トップ ニュース 香港・大埔の公営住宅で大火災、44人死亡 「竹製足場」が延焼要因の可能性、施工会社幹部3人を拘束
香港・大埔の公営住宅で大火災、44人死亡 「竹製足場」が延焼要因の可能性、施工会社幹部3人を拘束 香港新界大埔の宏福苑公営住宅で、26日午後に発生した重大な火災で少なくとも4人が死亡（写真/AP通信提供）
香港・新界大埔（Tai Po）地区で住宅火災が発生し、8棟の高層住宅からなる公営住宅団地「宏福苑（Wang Fuk Court）」で、26日午後に突如として大規模火災が通報された。27日正午の時点で、死者44人、負傷者66人に上っており、負傷者のうち約4分の1は生命の危険がある重体だという。死亡者の中には消火活動にあたっていた消防隊員の何偉豪さんが含まれているほか、別の消防隊員1人が重傷で入院し経過観察を受けている。香港消防当局は多数の人員と機材を投入し、分刻みの対応で団地内に取り残された住民の救出活動を続けた。
香港警察は27日未明から早朝にかけて、宏福苑の修繕工事を担当していた建設会社「宏業」に立ち入り、大量の書類や資料を押収するとともに、同社の取締役2人と工事顧問1人の計3人の男を拘束した。3人はいずれも「過失致死」の疑いがかけられている。
新界北総区の重大犯罪捜査班が調査を進めており、消火および救助活動の過程で、最前線に立った消防隊員が、建物の外壁に設置されていた保護ネット、防水シート、ビニールシートなどが防火基準を満たしていないように見受けられたと証言している。警察はその後、延焼を免れた別の棟にも立ち入り調査を行い、各階のエレベーターホール外の窓が発泡スチロールで覆われていたことを確認した。この素材は極めて可燃性が高く、火勢を「加速」させた可能性も否定できないとしており、発泡スチロールが急速な延焼の一因となった可能性があるとみている。
インターネット上に流出した現場映像や各メディアの生中継でも、団地内部の建物から大量の黒煙が立ち上り、炎が外へ噴き出す様子がはっきりと確認できる。現場の警察・消防による初動判断では、出火地点は建物の周囲に組まれていた竹製の足場である可能性が高いという。竹製足場は香港では一般的な建築工法で、海外メディアでも「香港の特色」の一つとして紹介されてきた。
香港メディアの報道を総合すると、消防当局は26日午後2時51分、宏福苑内の「宏昌閣」の住民から「工事用の竹製足場から火が出ている」との通報を受けて出動。通報からわずか11分後に「重大火災」として正式に発表し、炎は周囲の建物へと次々に延焼した。約30分後には警報レベルをさらに引き上げ、複数のはしご車を動員して消火活動にあたった。
避難した住民の証言によると、炎は棚架に沿って上方へ一気に燃え上がり、わずか数十秒のうちに竹製足場全体が火の海と化し、1階から最上階まで一気に燃え広がったという。さらに足場が燃えるにつれ、その上に積まれていた多くの建築資材が空中から落下し、中には火がついたまま風にあおられて隣接する建物へ飛び散ったものもあったという。
香港・新界大埔の公営住宅「宏福苑」で26日午後、大規模火災が発生し、少なくとも4人が死亡した。（写真/AP通信提供）
香港・新界大埔の公営住宅「宏福苑」で26日午後に大規模火災が発生し、少なくとも4人が死亡した。（写真/AP通信提供）
警察の発表によれば、宏福苑内の宏昌閣、宏泰閣、宏新閣の住民からは多数の救助要請電話が寄せられ、「自力では避難できない」と訴える住民も少なくなかったという。
公開資料によると、火災が発生した宏福苑は新界大埔地区に位置し、1983年に完成。「居者有其屋（持ち家購入制度）」の団地の一つで、広福邨に隣接し、同団地の第1期開発区にあたる。敷地内には31階建ての住宅棟が8棟あり、施工は德榮建築が担当した。
土地が狭く人口が密集する香港では、住宅事情は長年にわたり逼迫しており、政府主導の公営住宅は特に人口密度の高さで知られている。狭小な住宅に三世代同居といったケースも珍しくない。香港住宅委員会の統計によると、今回火災が起きた団地にはおよそ2000戸の住宅ユニットが入居している。
香港・新界大埔の公営住宅「宏福苑」で26日午後、大規模火災が発生し、少なくとも4人が死亡した。（写真/AP通信提供）
香港・新界大埔にある公営住宅「宏福苑」で26日午後、大規模火災が発生し、少なくとも4人が死亡した。（写真/AP通信提供）
香港・新界大埔の公営住宅「宏福苑」で26日午後、重大火災が発生し、少なくとも4人が死亡した。（写真/AP通提供）
現在までに把握されているところでは、この火災により4人が死亡、7人が負傷し、死亡者の1人は37歳の沙田隊所属の消防隊員で、消火活動中の殉職だった。香港政府は同日夜、今回の火災を香港における最高レベルの「第5級火災警報」に引き上げた。各棟が数時間にわたってくすぶり続け、27日現在も火勢と濃煙はなお激しいという。
関係者によると、 宏福苑では現在、外壁改修などの修繕工事が進められており、当局の資料によれば、工事は2024年7月に開始された。最初に出火した宏昌閣は第1期工事の対象で、8月末には外壁への吹付工事が行われていた。竹製足場は、最短でも来年3月に撤去される予定だったという。
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