英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は8月25日、東京の日本記者クラブで記者会見を開き、英国海軍の最新鋭空母「プリンス・オブ・ウェールズ」の日本寄港と今後の日英安全保障協力について説明した。
同艦は12日に横須賀へ入港し、29日から30日にかけて東京湾で「太平洋未来会議2025(Pacific Future Forum 2025)」を開催する予定で、約400人の専門家が登艦して議論を交わす見通しだ。
8カ月に及ぶ航海と日英の実務的連携
RUSI日本特別代表の秋元千明氏は、今回の航海が約8カ月に及び、40カ国以上に寄港し多国間演習を行う計画だと説明した。さらに、英空母搭載のF35B戦闘機が海上自衛隊護衛艦「かが」への初めての発着艦を実施したことに触れ、「象徴的な交流から実際の運用段階へ進んだことを示す」と強調した。
「日英は同盟に進むのか」RUSI研究者の指摘
RUSIインド太平洋プログラム主任研究員のフィリップ・シェトラー=ジョーンズ(Philip Shetler-Jones)氏は、「空母の展開は軍事行動にとどまらず外交的な意味を持つ。日英が平時の戦略的パートナーにとどまるのか、それとも有事に軍事行動を共にする同盟へ進むのかを決める必要がある」と述べた。
記者から台湾海峡での護衛活動について問われた際、同氏は「必ずしも声明で示す必要はなく、演習の種類で決意を示せる。多国間の合意があり法的に可能であれば、民間船舶の護衛演習も検討可能だ」と回答。秋元氏も「日本は多国間演習で経験を積んでおり、その枠組みの中で非戦闘的な護衛任務は可能だ」と述べつつ、最終的には政府判断に委ねられるとした。
「同盟」の概念を広く捉える必要性
秋元氏はまた、日本で「同盟=有事に共に戦う条約」と狭く理解されがちであることを指摘。その上で「米国とイスラエルのように条約がなくても同盟と見なされる例がある」と述べ、英国の公式文書ですでに日本を同盟国と位置づけている事実を紹介した。「日本社会は同盟の概念をより広く理解すべきだ」と強調した。
日英安保協力の課題
シェトラー=ジョーンズ氏は、日英協力の課題として以下を挙げた。
- 英国の軍事資源が欧州とインド太平洋で分散していること
- 中国をめぐる問題で過度な緊張を避ける必要があること
- 日本国内の憲法や政治的制約による限界
そのうえで「戦争を抑止するコストは、戦争が起きた後のコストより小さい」と指摘し、日英が外交面で一定のリスクを負うべきだと提言した。また、台湾周辺での英国のプレゼンスを「正常化」することが不可欠だと強調した。
編集:梅木奈実 (関連記事: 英最新鋭空母「プリンス・オブ・ウェールズ」、8月下旬に東京寄港へ 日英防衛連携の象徴に | 関連記事をもっと読む )
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