米国のトランプ大統領は8月26日、ホワイトハウスで開かれた閣議において明確な姿勢を示し、ロシアのプーチン大統領がウクライナ問題で停戦合意を拒み続けるなら、米国は大規模な経済制裁を発動すると表明した。これは1月20日の大統領就任以来、トランプ氏がウクライナ戦争に関して示した最も強硬な公開発言である。
メディアからプーチン氏が具体的な結果に直面するかどうかを問われると、トランプ氏は「もしそうせざるを得ないなら、私が考えているのは極めて深刻なことだ。ただし、戦争が終わることを願っている」と答えた。さらに米国の戦略について「我々には経済制裁がある。私が言っているのは経済的な手段だ。我々は世界大戦に陥ることを望んでいない」と強調した。
トランプ氏、ゼレンスキー氏とプーチン氏の直接対話を推進するも難航
トランプ大統領は会議の中で「これは世界大戦にはならない。しかし経済戦争にはなる。経済戦はロシアにとって極めて厳しいものとなるだろうが、私はその状況を望んでいない」と強調した。この発言は、米国政府が軍事介入ではなく経済的手段を通じてウクライナ紛争の解決を模索していることを示している。
現在、トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領とプーチン大統領の二国間会談を積極的に後押ししている。伝えられるところによれば、ゼレンスキー氏は原則的に対話に応じる姿勢を示しているが、プーチン氏側はこれまで明確な立場を示していない。クレムリンは公式声明で「現時点でそのような首脳会談を計画していない」としている。
注目すべきは、トランプ氏がウクライナ側の責任にも言及した点である。「ゼレンスキーも完全に潔白ではない」と述べ、米国政府がウクライナにも一定の責任があるとみなしていることを示唆した。
さらにロシア経済への圧力の一環として、トランプ氏は8月27日、インドからの対米輸出品に25%の追加関税を課すと発表した。これはインドがロシア産原油の輸入を継続していることを直接的に標的とした措置である。国際エネルギー機関(IEA)のデータによれば、インドは現在ロシア産原油の最大輸入国の一つであり、2024年の輸入量は同国の原油輸入総量の35%以上を占めている。
外交の進展は遅いが、安全保障に関する議論は続く
トランプ大統領は26日、ロシアやウクライナに高い代償を強いる「強力な関税制度」を和平合意の手段として用いる可能性について、前向きな姿勢を示した。この方針は、米国がロシアとの経済関係を維持する国々に対し、通商を通じて圧力を加える姿勢を示すものである。
一方で、外交面での大きな進展は見られないものの、米欧当局者は仮想的な和平合意後の安全保障の枠組みについて協議を続けている。消息筋によれば、ワシントンがキーウに提供する可能性のある安全保障策には、領空防衛支援、情報共有、軍事顧問の派遣などが含まれているという。
2022年2月に始まったウクライナ戦争は、すでに3年以上にわたり続いている。トランプ政権は繰り返し調停の意向を示してきたが、戦闘は実質的に収束の兆しを見せていない。今回のトランプ氏による経済制裁の脅しが、プーチン大統領の立場を変える契機となるのか、国際社会の注目が集まっている。
国際制裁ネットワークの拡大
米国政府はロシアへの直接的な制裁措置に加え、ロシア経済を支える他国に対しても二次的制裁を科す可能性を検討している。これはロシアの国際的な資金流通経路を断ち切り、戦争継続の経済基盤を一層弱めることを狙った戦略である。
欧州連合(EU)の当局者は、米国が新たな対ロ制裁を実施した場合、欧州諸国もこれに歩調を合わせ、国際的な制裁体制の一貫性と実効性を確保する方針を検討すると表明している。
編集:柄澤南 (関連記事: 沈旭暉コラム:ロシア・ウクライナ和平会議の三つの構造的難題 | 関連記事をもっと読む )
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