『ウォール・ストリート・ジャーナル』は4日、衛星画像などの公開情報を基に、中国人民解放軍が台湾海峡を挟んだ対岸で進めている基地建設の現況を独自に報じた。記事は、中国が東部沿岸一帯で前例のない規模の戦備を整えており、台湾有事に備えて計画的かつ段階的に「最後の準備」を進めていると指摘。軍事専門家は、こうした建設はすべて台湾を標的とした複雑な渡海作戦のパズルを埋める役割を担っていると分析している。
上海に築かれる新たな侵攻拠点
わずか5年前、上海・浦東国際空港近くの長江河口は更地が広がるだけの地域だった。だが現在では、両用作戦を想定した本格的な軍事基地に変貌している。衛星画像には、大型艦艇の接岸が可能な長大な桟橋、ヘリコプター離着陸用の滑走路、兵舎や運動施設まで備えられており、大量の部隊が長期駐留できる体制が整えられていることが確認できる。
2025年5月時点の衛星写真では、十数隻の両用艦艇が停泊しており、その中には075型大型両用揚陸艦も含まれていた。こうした艦艇は兵士や装甲車両、上陸用舟艇、ヘリコプターを大量に搭載可能で、最大で約5,000人規模の兵員輸送力を持つと推定される。
防御面の強化も注目される点だ。米海軍の元情報将校で現在はミッチェル航空宇宙研究所の上級研究員を務めるマイケル・ダム氏は、燃料タンクがコンクリートで補強され、さらに厚い土で覆われていることを指摘。「この施設は爆撃を受けることを前提に設計されている」と分析する。先進的な貫通弾頭には耐えられないものの、巡航ミサイル級の攻撃であれば大きく生存性を高められるという。
China is undertaking a large-scale build-out of infrastructure along its eastern coast, including air and naval sites that show its growing readiness for a potential conflict over Taiwanhttps://t.co/WTlqmtmFSg
— The Wall Street Journal (@WSJ)September 5, 2025
さらに、基地は建設中の高速鉄道と接続される可能性が高い側線を備えており、戦車を含む重装備と兵員を鉄道で迅速に輸送し、そのまま両用艦艇に積み込むことができる体制が計画されている。ダム氏は「すべてが台湾への作戦計画を支援するためのもの」と強調した。
ダム氏は、この基地が台湾海峡の外側に位置していること自体が戦略上の優位性だと指摘する。紛争が勃発すれば台湾海峡は「自由開火区域」と化す恐れが高いため、複数の沿岸拠点から侵攻艦隊を分散出撃させれば、台湾やその同盟国は攻撃目標や時刻、地点の判断を著しく困難にされる。
また、シンガポールのラジャーラトナム国際関係学院の上級研究員コリン・コー氏も「この施設は戦時に規模を拡大して使うことを前提に設計されている」と分析。台北への侵攻部隊を送り出す「理想的な出発点」となる可能性が高いと述べている。 (関連記事: 中共「九三軍事パレード」で米日を挑発、台湾を威嚇?在日研究者「国際秩序への脅威」 | 関連記事をもっと読む )
大規模艦隊が集結可能な超大型桟橋
台湾により近い浙江省・楽清湾では、海軍施設が全長1.6キロメートル超の巨大桟橋を拡張し、多数の艦船が同時に作業できるようになった。最新の衛星写真には、戦車揚陸艦、沿岸揚陸艦、補給タンカー、さらに中国海警の巡視船を含む約20隻が停泊する様子が確認されている。これらはいずれも台湾有事の際に欠かせない戦力となる。2018年から2025年にかけて、桟橋は0.3マイルから1.25マイルへと延伸されており、その戦略的な意図は明らかだ。
Beijing’s new ships can land on beaches and link to form massive mobile piers. Analysts say they’re intended to rapidly offload military equipment, setting the stage for a D-Day-style invasion of Taiwan.
— The Wall Street Journal (@WSJ)June 4, 2025
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