中国潜水艦「静音革命」で米国に迫る 太平洋で水中軍拡競争激化、焦点は台湾海峡

2025-09-09 18:10
中央テレビのドキュメンタリー予告で公開された解放軍の新型潜水艦。(写真/Bilibiliの動画より引用)
中央テレビのドキュメンタリー予告で公開された解放軍の新型潜水艦。(写真/Bilibiliの動画より引用)
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数十年先の国際秩序を左右しかねない水中軍拡競争が、太平洋の深海で激化している。米紙《ウォール・ストリート・ジャーナル》(WSJ)は9月8日、中国が急速に近代化を進める潜水艦艦隊によって、世界的な潜水艦大国となりつつあると報じた。静音性能、兵器システム、航続能力で飛躍的な進歩を遂げ、米海軍に迫る存在となっており、米国と同盟国が対応を急がざるを得ない状況だ。記事は、第二次世界大戦以来最も激しい海中軍拡競争が始まり、台湾を含む敏感な地政学的リスクを揺さぶっていると指摘している。

「水中トラクター」から「静かな殺し屋」へ

WSJによれば、中国潜水艦部隊の変貌は目覚ましい。かつては技術水準の低いディーゼル電気推進潜水艦を中心に、西太平洋近海に活動を限定してきた。1974年に初の原子力潜水艦を就役させたが、西側諸国からは「水中トラクター」と揶揄され、乗組員への放射線リスクの方が高いとまで批判された。

しかし半世紀の試行錯誤を経て状況は一変。米シンクタンク「ヘリテージ財団」の上級研究員で元海軍士官のブレント・サドラー氏は、「中国は潜水艦作戦技術の飛躍的進歩の瀬戸際にあり、騒音低減に成功すれば追跡は極めて困難になる」と警告する。象徴的存在が新型原子力攻撃型潜水艦「095型(Type 095)」だ。

時任美軍參謀聯席會議主席麥可馬倫上將(左)在舟山港登上元級潛艦。(圖片取自美國國防部)
当時のアメリカ軍参謀本部議長マイケル・マレン大将(左)が舟山港で元級潜水艦に乗艦する様子。(写真/アメリカ国防省提供)

軍事専門家は、095型が巡航ミサイル用の垂直発射管を備え、対地・対艦攻撃能力を大幅に高めるとみる。米海軍退役大佐で元国防総省の海軍システム技術者クリストファー・カールソン氏も「095型は極めて静音性の高い潜水艦となり、事態は複雑化する」と指摘した。

ディーゼル艦も進化 「AIP」で水中持続力を強化

中国が運用する「元級」ディーゼル電気推進潜水艦も、AIP(非大気依存推進)技術の導入により性能を強化。従来数日しか潜航できなかった非核潜水艦が、数週間にわたり水中に留まれるようになり、探知回避能力と作戦半径が大幅に拡大した。

ニュース補足:AIP技術とは

空気を取り込まずに電池を充電できる方式で、潜水艦の隠密性を飛躍的に高める。これにより非核潜水艦が原潜に迫る性能を発揮可能となる。

米国に迫る「造船能力格差」

昨年、中国の小型原潜試作艦が沈没する事故があったものの、WSJは「解放軍の水中戦力強化の趨勢は揺るがない」と分析。特に注目されるのが圧倒的な造船能力だ。中国は米国より短期間・低コストで潜水艦を建造しており、とりわけディーゼル艦の大量建造で数的優位を確立しつつある。 (関連記事: 風傳媒取材》横須賀に米空母と潜水艦集結 台湾有事で注目の「謎の島」も現地ルポ 関連記事をもっと読む

米国のジレンマ:技術優位と産業力不足の警鐘

中国の台頭に直面し、米国とその同盟国は手をこまねいているわけではない。米海軍は依然として潜水艦技術において優位を保ち、全艦が原子力推進の艦隊は静粛性と性能で中国を大きく上回っている。米太平洋艦隊潜水艦部隊の報道官リック・ムーア司令官は、「水中作戦能力に歴史的な投資を行っている」と強調。無人潜水機や固定式・可動式の海底センサー網を広範に配備し、潜水艦や無人プラットフォームにAIを統合する取り組みも進めている。

20250710-停在横浜港的親潮級潜艇。(楊舒媚撮影)
2025年7月10日、横須賀に停泊中の親潮級潜水艦。(写真/楊舒媚撮影)
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