中国は本当に台湾に侵攻するのか?米シンクタンク:台湾侵攻シナリオの実現性を覆す4つの理由とは

2025-09-09 17:05
九三軍事パレードに参加する中国の女性兵士。(写真/AP通信提供)
九三軍事パレードに参加する中国の女性兵士。(写真/AP通信提供)
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中国で行われた九三軍事パレードでは精鋭兵器が披露され、台湾への武力行使に関する臆測が一段と高まった。同日、米国のシンクタンク「スティムソン・センター(Stimson Center)」は公式サイト上で、8月に完成した報告書「脅威の再考:中国が台湾に侵攻する可能性は極めて低い(Rethinking the Threat: Why China is Unlikely to Invade Taiwan)」を公表し、近年広がる「中国が間もなく台湾に武力侵攻する」との前提に疑義を呈した。報告書は、北京に全面戦争を仕掛ける意思は存在するものの、実行可能性は多くの障害によって著しく低いと指摘し、ワシントンに対して防衛政策の基盤を再検討するよう呼びかけている。

この報告書「脅威の再考:中国が台湾に侵攻する可能性は極めて低い」は、元米海兵隊士官のダン・グレイザー(Dan Grazier)、戦略学者のジェームズ・シーベンス(James Siebens)、中国経済専門家のマッケナ・ローリンズ(MacKenna Rawlins)によって共同執筆され、防衛戦略・計画プロジェクトおよび国家安全保障改革プロジェクトに属する研究成果である。

9月3日、米国シンクタンクの史汀生センター(Stimson Center)の公式サイトにて報告書「脅威の再考:中国が台湾を侵略する可能性が極めて低い理由」が発表された。(史汀生センター公式サイトより)
9月3日、米国のシンクタンク「スティムソン・センター(Stimson Center)」の公式サイトにおいて、報告書「脅威の再考:中国が台湾に侵攻する可能性は極めて低い」が公開された。(画像/スティムソン・センター公式サイトより)

報告は、中国が台湾に軍事侵攻する際に直面する困難を四つの側面から分析している。

  1. 核戦争リスク:米中双方が核兵器を保有しており、台海衝突が核戦争に発展する可能性は、北京当局が決して軽視できないボトムラインである。
  2. 政治的代償:中国は人口高齢化と一人っ子政策により適齢兵力が減少しており、若年層には反戦感情が強い。高い死傷者数は中国共産党の正統性を揺るがしかねない。
  3. 経済的打撃:台湾海峡は世界の重要な海上輸送路であり、封鎖や制裁は中国の貿易の生命線を直撃し、敵国以上に中国自身を傷つける可能性が高い。
  4. 地形的障害:台湾は湿地、水田、山岳、都市が入り組んでおり、上陸作戦は極めて困難である。報告は米軍の俗語「Tanks don’t go where the cattails grow(戦車は蒲が生える場所には行けない)」を引用し、機甲部隊の行動制限を強調している。

報告は、これらの要因によって侵攻は「極めて不可能」に近いと結論づける。軍事的困難は克服可能であるものの、その代償はあまりに大きいと指摘する。また、2016年以降、米国が「中国の台湾侵攻」への懸念を理由に国防予算を急増させてきたことも批判。F-35戦闘機、B-21爆撃機、コロンビア級潜水艦やAI指揮システムなどの調達事業はすべて「台湾侵攻シナリオ」に正当性を見出しており、冷戦期の「フルダ・ギャップ(Fulda Gap)」モデルを引き継ぎ、台湾を新たな戦略的焦点として軍産複合体に奉仕していると論じた。 (関連記事: 米上院軍事委員長が訪台後に警告 「台湾陥落なら太平洋の米国防衛線は崩壊」 関連記事をもっと読む

ただし、報告は同時に、この議論が「合理的行為者モデル」に過度に依存しているのではないかと疑問を呈している。戦略的誤算、内部権力闘争、あるいは「限定戦争」のエスカレーションといった不確定要素を軽視している可能性があるとし、米国の政策コミュニティに対して、より現実的なリスク評価を行うよう呼びかけている。

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