高市政権の18.3兆円対策で円安・物価高懸念 国債増発に市場警戒、日銀の判断に焦点

高市早苗首相(AP通信)
高市早苗首相(AP通信)

高市早苗首相は景気テコ入れを狙い、総額18.3兆円規模の大型経済対策を打ち出し、その多くを国債増発で賄う方針を示した。ところが市場では「誰が国債を買うのか」という懸念が強まり、国債利回り上昇と円安圧力が一段と意識されている。政府は投資家に対し「英国の『トラス・ショック』のような事態にはならない」と火消しに動く一方、政策の視線は急速に日本銀行に集まっている。

日銀の植田和男総裁は12月初旬、利上げの可能性をこれまでより明確に示し、閣僚側も利上げに対して従来より開かれた姿勢を見せている。市場では12月18〜19日の金融政策決定会合で利上げに踏み切る確率が「9割」に達したとの見方も出ている。

18.3兆円の景気対策、約6割を国債で調達

11月28日、高市内閣は2025年度補正予算案を閣議決定した。総額18.3兆円のパッケージには、物価高への対応や成長促進策が盛り込まれているが、その歳入の約6割は追加の国債発行で賄う計画だ。増発規模は11兆6960億円にのぼり、12月中の国会成立を目指すとしている。

高市早苗氏は今回の方針を「責任ある積極財政」と説明するが、補正予算の規模は2024年度の13.9兆円を上回り、コロナ禍後では最大となる。

国際通貨基金(IMF)の試算では、日本の政府債務残高は国内総生産(GDP)の約230%に達し、主要国の中で最も高い水準にある。今後さらに国債を増発する中で、投資家がどこまで日本国債を買い支えるのかについて疑問が強まっている。

ロイター通信によると、高市内閣の会議では財務相の片山皐月氏が国債売りが進んだ局面のチャートを提示し、高市氏が円安と国債価格下落に懸念を示したという。

根據IMF統計,日本債務佔其GDP比率達229.6%。(截自IMF網頁)
IMFの統計によれば、日本の政府債務残高はGDP比229.6%に達している。(画像/IMFウェブサイトより)

こうした懸念に対し、高市氏は国会で「日本版トラスショックは起きない」と否定したうえで、追加的な国債発行は抑制しつつ、日本版「DOGE」と呼ばれる歳出見直しの枠組みを通じて支出を検証していく考えを強調した。

片山氏も「市場動向を注視し、財政の持続可能性を確保する」と述べたが、市場に広がった不安を完全に打ち消すには至っていない。 (関連記事: 単独インタビュー》台湾1.25兆台湾ドルの国防予算、米国はどう評価しているのか RAND専門家が解説 関連記事をもっと読む

「トラスショック」とは

英国のリズ・トラス氏が首相だった2022年9月、財源の裏付けが乏しい大規模減税案を打ち出したことで、市場の信認が急速に失われた出来事を指す。富裕層優遇と受け止められた減税策により、英国の財政規律への懸念が一気に高まり、ポンド相場は過去最安値圏まで急落。国債利回りも急騰し、英中銀が国債市場の安定化に乗り出す事態となった。
混乱の収束を図る中で、トラス氏は就任からわずか45日で辞任に追い込まれている。

国債利回りが急上昇 市場の不安は「誰が買い手になるのか」

債券市場で需要が伸び悩む中、日本の10年国債利回りは12月5日に1.95%まで上昇し、2007年以来の高水準を記録した。直近1カ月での上昇幅は27ベーシスポイントに達する。長期金利の上昇はさらに顕著で、20年債は2.936%、30年債は3.436%を突破した。

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